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夏彦ルート
第74.5話
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本来であれば、俺があの怪我を負うはずだった。
そう思うと、申し訳なさでいっぱいになる。
「部屋の掃除をさせてもらうから」
「ハル…」
ボタンを押すとすぐに冬真がやってきて、月見ちゃんを病室まで運んでくれた。
俺の体には、連れ帰るなら足なんてなくてもいいと思うような奴の血が流れている。
「…ちょっと自分を追い詰めすぎ。外の空気でも吸いに行く?」
「でも、仕事があるんでしょ?」
「仕事より友情優先」
言おうとした言葉は呑みこまれ、そのまま車椅子に乗せられる。
足元には心配そうに顔をあげる白猫がいて、できるだけ手を伸ばして撫でようとした。
「い…」
「それはそうなる。ほら、この子を撫でたかったんでしょ?」
膝の上に乗せてもらえて嬉しかったのか、ソルトは珍しく大人しく座っていた。
撫でていると、手をぺろぺろと優しくなめられる。
たったそれだけのことなはずなのに、心がどんどん温かくなっていった。
「…ごめんね」
「そんなに謝らなくていい。まともな大人って少ないんだ。俺たちは嫌というほどそれを知っている。
…だから、俺たちはあんなふうにはならない。流れている血なんて関係ないんだよ」
そういえば、春人は…。
そういった経験をした彼だからこそ言えることなのだろう。
境遇で言えばリーダー以外普通とは言えないものを背負っている。
ただ、あのことで秋久は心にずっと深い傷を負ってきたはずだ。
「…本当に大丈夫?」
「うん。少なくとも、怪我したての頃よりは落ち着いてる。みんなのおかげだよ」
あの日、俺はただ泣き叫んだ。
月見ちゃんの優しい言葉が心に注がれ、何もできなかった自らの非力さに押し潰されそうになったのは記憶に新しい。
だが、あのあとみんなと色々な話をして今は冷静に物事を捉えている。
「そういえば、あいつらの取り調べってどうなってるの?」
「…やっぱり情報を隠すのが上手くて少し苦戦してるらしい。あとは秋久に任せるしかないけど、ちょっと心配」
「…それ、俺も手伝っていい?」
あの家のネットワークなら誰よりも知っている。
春人は何か言いたげにしていたものの、そのまま俺の背後に回った。
「それじゃあ進めるから」
「進めるって…」
がらがらと大きな音を立て、勢いよく走り出す。
途中までで話を遮られてしまったが、この様子だと先程の言葉はきっと…。
「治療も仕事もちゃんとやるよ」
「本当に、なんで分かったんだか。…彼女の病室までこのまま突っ込む」
「待って、それはちょっと心の準備ができてない」
「一瞬でできるから平気」
「流石に無理だって!」
ハルが近くにいてくれてよかった。
親友に感謝しつつ、目の前の扉が勢いよく開かれる。
ベッドの上では月見ちゃんが休んでいて、その横顔には太陽の光がさしこんでいた。
そう思うと、申し訳なさでいっぱいになる。
「部屋の掃除をさせてもらうから」
「ハル…」
ボタンを押すとすぐに冬真がやってきて、月見ちゃんを病室まで運んでくれた。
俺の体には、連れ帰るなら足なんてなくてもいいと思うような奴の血が流れている。
「…ちょっと自分を追い詰めすぎ。外の空気でも吸いに行く?」
「でも、仕事があるんでしょ?」
「仕事より友情優先」
言おうとした言葉は呑みこまれ、そのまま車椅子に乗せられる。
足元には心配そうに顔をあげる白猫がいて、できるだけ手を伸ばして撫でようとした。
「い…」
「それはそうなる。ほら、この子を撫でたかったんでしょ?」
膝の上に乗せてもらえて嬉しかったのか、ソルトは珍しく大人しく座っていた。
撫でていると、手をぺろぺろと優しくなめられる。
たったそれだけのことなはずなのに、心がどんどん温かくなっていった。
「…ごめんね」
「そんなに謝らなくていい。まともな大人って少ないんだ。俺たちは嫌というほどそれを知っている。
…だから、俺たちはあんなふうにはならない。流れている血なんて関係ないんだよ」
そういえば、春人は…。
そういった経験をした彼だからこそ言えることなのだろう。
境遇で言えばリーダー以外普通とは言えないものを背負っている。
ただ、あのことで秋久は心にずっと深い傷を負ってきたはずだ。
「…本当に大丈夫?」
「うん。少なくとも、怪我したての頃よりは落ち着いてる。みんなのおかげだよ」
あの日、俺はただ泣き叫んだ。
月見ちゃんの優しい言葉が心に注がれ、何もできなかった自らの非力さに押し潰されそうになったのは記憶に新しい。
だが、あのあとみんなと色々な話をして今は冷静に物事を捉えている。
「そういえば、あいつらの取り調べってどうなってるの?」
「…やっぱり情報を隠すのが上手くて少し苦戦してるらしい。あとは秋久に任せるしかないけど、ちょっと心配」
「…それ、俺も手伝っていい?」
あの家のネットワークなら誰よりも知っている。
春人は何か言いたげにしていたものの、そのまま俺の背後に回った。
「それじゃあ進めるから」
「進めるって…」
がらがらと大きな音を立て、勢いよく走り出す。
途中までで話を遮られてしまったが、この様子だと先程の言葉はきっと…。
「治療も仕事もちゃんとやるよ」
「本当に、なんで分かったんだか。…彼女の病室までこのまま突っ込む」
「待って、それはちょっと心の準備ができてない」
「一瞬でできるから平気」
「流石に無理だって!」
ハルが近くにいてくれてよかった。
親友に感謝しつつ、目の前の扉が勢いよく開かれる。
ベッドの上では月見ちゃんが休んでいて、その横顔には太陽の光がさしこんでいた。
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