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春人ルート
第71話
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名前をこんなふうに優しく呼ばれる日がくるなんて思っていなかった。
優しくて温かい、今まで知らなかった景色。
「春人」
「どうしたの?」
「…生きていてくれて、本当によかったです」
「腕が落ちかけたんだから、そこだけは気をつけて。
…なんて、俺が言っても説得力がないんだけどね」
本当に痛々しい傷を負っている春人に、どんな言葉をかけるのがいいか分からない。
ただ、生きていてくれて本当によかった。
「…腕、こっちに出してくれる?」
「は、はい」
春人よりは少し薄い包帯で覆われている腕を上にあげてみる。
ただ、やっぱり指先に力が入らない。
「指、どんな感じがする?」
「なんだか変な感じがします。春人はいつも温かいのに、今は何も感じないんです」
「…だから不安だった?」
その言葉にただ驚いてしまう。
どうして彼にはいつも分かってしまうのだろうか。
「誰だってそこまでの怪我をしたら不安になる。本当に指が動くようになるのか、誰かの体温を感じられるか…そういうことを考えずにはいられない」
まるで心の中が全部見えているみたいに、思っていることを全部言い当てられてしまう。
「しばらく不自由な生活になると思うけど、俺が側で支えるよ。だからそんなに心配しなくてもいい」
また優しく頭を撫でられてすごく緊張してしまう。
このどきどきがどうにかおさまってくれないかと考えるけれど、意識すればするほど駄目だったらしい。
「きちんとリハビリすれば絶対大丈夫。俺もできることはやる」
「あ、ありがとうございます」
春人が側にいてくれるだけで、なんだか早く動かせるようになるような気がする。
彼の言葉はいつも心に響いて本当に不思議だ。
「…ごめん、そろそろ春人さんの点滴を換える時間なんだ」
「すみませんでした。私もお部屋に戻ります」
ふたりに一礼して、そのまま部屋へ戻ることにする。
時間をかけて戻らないと転んでしまいそうで、体のバランスがなかなか上手くとれない。
5分くらいかけて部屋まで戻ると、そこにはお客様が来ていた。
「…よかった、ちゃんと会えた」
「雪乃…」
名前を呼ぶと、彼女に頭を下げられる。
「ごめんなさい。何か不穏なことがおこると分かっていたのに止められなかった。
もっと早く占っていれば、誰も怪我をしなかったかもしれないのに…」
たしかに雪乃の占いはよく当たる。
初めて占ってもらったときからずっとそうだ。
まるで、何かの能力みたいに…能力?
「月見、本当に、」
「私の怪我は誰のせいでもありません。それに、自分の心に素直に行動したおかげで春人の役に立てました。
だから…背中を押してくれてありがとうございます」
もしかすると、彼女も私と同じようなものなのだろうか。
そんなこととても訊けないけれど、もしそうなら自分を責めないでほしい。
「…よかった、私でもできることがあったなら。ふたりとも無事でいてくれてありがとう」
それから雪乃は料理を持ってきてくれた。
彼女も優しいいい人で、話しているとすごく楽しくなる。
そんな楽しい時間はあっという間に過ぎていった。
優しくて温かい、今まで知らなかった景色。
「春人」
「どうしたの?」
「…生きていてくれて、本当によかったです」
「腕が落ちかけたんだから、そこだけは気をつけて。
…なんて、俺が言っても説得力がないんだけどね」
本当に痛々しい傷を負っている春人に、どんな言葉をかけるのがいいか分からない。
ただ、生きていてくれて本当によかった。
「…腕、こっちに出してくれる?」
「は、はい」
春人よりは少し薄い包帯で覆われている腕を上にあげてみる。
ただ、やっぱり指先に力が入らない。
「指、どんな感じがする?」
「なんだか変な感じがします。春人はいつも温かいのに、今は何も感じないんです」
「…だから不安だった?」
その言葉にただ驚いてしまう。
どうして彼にはいつも分かってしまうのだろうか。
「誰だってそこまでの怪我をしたら不安になる。本当に指が動くようになるのか、誰かの体温を感じられるか…そういうことを考えずにはいられない」
まるで心の中が全部見えているみたいに、思っていることを全部言い当てられてしまう。
「しばらく不自由な生活になると思うけど、俺が側で支えるよ。だからそんなに心配しなくてもいい」
また優しく頭を撫でられてすごく緊張してしまう。
このどきどきがどうにかおさまってくれないかと考えるけれど、意識すればするほど駄目だったらしい。
「きちんとリハビリすれば絶対大丈夫。俺もできることはやる」
「あ、ありがとうございます」
春人が側にいてくれるだけで、なんだか早く動かせるようになるような気がする。
彼の言葉はいつも心に響いて本当に不思議だ。
「…ごめん、そろそろ春人さんの点滴を換える時間なんだ」
「すみませんでした。私もお部屋に戻ります」
ふたりに一礼して、そのまま部屋へ戻ることにする。
時間をかけて戻らないと転んでしまいそうで、体のバランスがなかなか上手くとれない。
5分くらいかけて部屋まで戻ると、そこにはお客様が来ていた。
「…よかった、ちゃんと会えた」
「雪乃…」
名前を呼ぶと、彼女に頭を下げられる。
「ごめんなさい。何か不穏なことがおこると分かっていたのに止められなかった。
もっと早く占っていれば、誰も怪我をしなかったかもしれないのに…」
たしかに雪乃の占いはよく当たる。
初めて占ってもらったときからずっとそうだ。
まるで、何かの能力みたいに…能力?
「月見、本当に、」
「私の怪我は誰のせいでもありません。それに、自分の心に素直に行動したおかげで春人の役に立てました。
だから…背中を押してくれてありがとうございます」
もしかすると、彼女も私と同じようなものなのだろうか。
そんなこととても訊けないけれど、もしそうなら自分を責めないでほしい。
「…よかった、私でもできることがあったなら。ふたりとも無事でいてくれてありがとう」
それから雪乃は料理を持ってきてくれた。
彼女も優しいいい人で、話しているとすごく楽しくなる。
そんな楽しい時間はあっという間に過ぎていった。
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