187 / 385
夏彦ルート
第59話
しおりを挟む
珍しく夏彦が焦っていて、その姿に少しだけ驚いた。
「…冬真のところに届け物を渡してたら、ショーの手伝いを頼まれたって話してた。
ショーには間に合わなかったみたいだけど、まさかこんな事態になってるなんて思わなかった」
「ハル、」
「冬真たちがいるなら、彼女と一緒にいてもらえばいい。秋久にだけは手伝ってもらった方がいいかもしれないけどね」
春人さんは間髪入れずに話し続けて、夏彦を独りで行かさせないようにしている。
「大丈夫、手負いひとりで無理でも俺たちは強いから」
「…お願いします。独りで行かないでください」
頭を下げると、夏彦は困ったような表情を向けた。
「分かった、俺の負け。…だけどもし、まずい状況になったら、」
「おまえも連れて逃げる」
春人さんにはなんでもお見通しみたいで、夏彦がふっと息を吐く。
「本当に敵わない」
そうして元の部屋に戻ると、秋久さんたちがソルト相手に苦戦していた。
「やっぱりなかなか人にはなつかないのか」
「秋久さん、もう少し前に…春人、来てたの?」
「ついさっき来ましたので、ショーには間に合いませんでした。
…すみません、時間がないので手短に話しますね」
春人さんが事情を大まかに話すと、秋久さんがため息を吐いた。
「…成程な、状況は理解した。それなら俺も行かないと…冬真、ここを頼む」
「え、うん…分かった」
話はあっという間にまとまって、3人が裏口に向かって歩いていく。
その途中で夏彦がふり返ってこちらに駆け寄ってくる。
そして優しく頭を撫でてくれた。
「それじゃあいってきます。…月見ちゃん、すぐ戻ってくるからそんなに心配しないで」
「すみません。私が強かったら一緒に行って役に立てたのに…」
「充分だよ。ありがとう」
心配で仕方ないけれど、他のふたりが一緒なら多分大丈夫だろう。
「…もどかしい?」
「え、あ、はい。何かできればと思うのですが、私は弱いので…」
「そう。それならそれなりの戦い方があるけど」
「え…?」
冬真さんはそう話すと、何か小さな機械みたいなものを取り出した。
「…多分これであの人たちを追える」
「そんな方法、思いつきませんでした…」
「まあ、一般の人にはできないだろうけど。これで見られるはず」
それを大きなモニターに繋ぐと、すぐに映像が写し出される。
「…まだ来てないみたい」
「そう、なんですね」
ソルトが悪戯しないように気をつけながら、画面の様子を見守る。
そうしてしばらく見ていると、夏彦に危険が迫っているのを感じた。
「あ、あの…」
「何?」
「これって、向こうの人たちとお話できますか?」
「一応これを使えばできるけど、」
「お借りします」
走っても間に合わないと判断した私は、画面に少ししか写っていない夏彦に声をかけた。
「…夏彦、気をつけてください。近くにちょっと怖い雰囲気の人たちがいます」
「…冬真のところに届け物を渡してたら、ショーの手伝いを頼まれたって話してた。
ショーには間に合わなかったみたいだけど、まさかこんな事態になってるなんて思わなかった」
「ハル、」
「冬真たちがいるなら、彼女と一緒にいてもらえばいい。秋久にだけは手伝ってもらった方がいいかもしれないけどね」
春人さんは間髪入れずに話し続けて、夏彦を独りで行かさせないようにしている。
「大丈夫、手負いひとりで無理でも俺たちは強いから」
「…お願いします。独りで行かないでください」
頭を下げると、夏彦は困ったような表情を向けた。
「分かった、俺の負け。…だけどもし、まずい状況になったら、」
「おまえも連れて逃げる」
春人さんにはなんでもお見通しみたいで、夏彦がふっと息を吐く。
「本当に敵わない」
そうして元の部屋に戻ると、秋久さんたちがソルト相手に苦戦していた。
「やっぱりなかなか人にはなつかないのか」
「秋久さん、もう少し前に…春人、来てたの?」
「ついさっき来ましたので、ショーには間に合いませんでした。
…すみません、時間がないので手短に話しますね」
春人さんが事情を大まかに話すと、秋久さんがため息を吐いた。
「…成程な、状況は理解した。それなら俺も行かないと…冬真、ここを頼む」
「え、うん…分かった」
話はあっという間にまとまって、3人が裏口に向かって歩いていく。
その途中で夏彦がふり返ってこちらに駆け寄ってくる。
そして優しく頭を撫でてくれた。
「それじゃあいってきます。…月見ちゃん、すぐ戻ってくるからそんなに心配しないで」
「すみません。私が強かったら一緒に行って役に立てたのに…」
「充分だよ。ありがとう」
心配で仕方ないけれど、他のふたりが一緒なら多分大丈夫だろう。
「…もどかしい?」
「え、あ、はい。何かできればと思うのですが、私は弱いので…」
「そう。それならそれなりの戦い方があるけど」
「え…?」
冬真さんはそう話すと、何か小さな機械みたいなものを取り出した。
「…多分これであの人たちを追える」
「そんな方法、思いつきませんでした…」
「まあ、一般の人にはできないだろうけど。これで見られるはず」
それを大きなモニターに繋ぐと、すぐに映像が写し出される。
「…まだ来てないみたい」
「そう、なんですね」
ソルトが悪戯しないように気をつけながら、画面の様子を見守る。
そうしてしばらく見ていると、夏彦に危険が迫っているのを感じた。
「あ、あの…」
「何?」
「これって、向こうの人たちとお話できますか?」
「一応これを使えばできるけど、」
「お借りします」
走っても間に合わないと判断した私は、画面に少ししか写っていない夏彦に声をかけた。
「…夏彦、気をつけてください。近くにちょっと怖い雰囲気の人たちがいます」
0
お気に入りに追加
12
あなたにおすすめの小説
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
寝室から喘ぎ声が聞こえてきて震える私・・・ベッドの上で激しく絡む浮気女に復讐したい
白崎アイド
大衆娯楽
カチャッ。
私は静かに玄関のドアを開けて、足音を立てずに夫が寝ている寝室に向かって入っていく。
「あの人、私が
きみの愛なら疑わない
秋葉なな
恋愛
花嫁が消えたバージンロードで虚ろな顔したあなたに私はどう償えばいいのでしょう
花嫁の共犯者 × 結婚式で花嫁に逃げられた男
「僕を愛さない女に興味はないよ」
「私はあなたの前から消えたりしない」
マイナー18禁乙女ゲームのヒロインになりました
東 万里央(あずま まりお)
恋愛
十六歳になったその日の朝、私は鏡の前で思い出した。この世界はなんちゃってルネサンス時代を舞台とした、18禁乙女ゲーム「愛欲のボルジア」だと言うことに……。私はそのヒロイン・ルクレツィアに転生していたのだ。
攻略対象のイケメンは五人。ヤンデレ鬼畜兄貴のチェーザレに男の娘のジョバンニ。フェロモン侍従のペドロに影の薄いアルフォンソ。大穴の変人両刀のレオナルド……。ハハッ、ロクなヤツがいやしねえ! こうなれば修道女ルートを目指してやる!
そんな感じで涙目で爆走するルクレツィアたんのお話し。
王太子の子を孕まされてました
杏仁豆腐
恋愛
遊び人の王太子に無理やり犯され『私の子を孕んでくれ』と言われ……。しかし王太子には既に婚約者が……侍女だった私がその後執拗な虐めを受けるので、仕返しをしたいと思っています。
※不定期更新予定です。一話完結型です。苛め、暴力表現、性描写の表現がありますのでR指定しました。宜しくお願い致します。ノリノリの場合は大量更新したいなと思っております。
最愛の側妃だけを愛する旦那様、あなたの愛は要りません
abang
恋愛
私の旦那様は七人の側妃を持つ、巷でも噂の好色王。
後宮はいつでも女の戦いが絶えない。
安心して眠ることもできない後宮に、他の妃の所にばかり通う皇帝である夫。
「どうして、この人を愛していたのかしら?」
ずっと静観していた皇后の心は冷めてしまいう。
それなのに皇帝は急に皇后に興味を向けて……!?
「あの人に興味はありません。勝手になさい!」
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる