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夏彦ルート
第56話
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まさかそんなことになると思っていなかった私は、完全に予想外な展開に呆然とする。
「…ちゃんと説明してなかったでしょ」
「ごめんごめん、月見ちゃんにも手伝ってもらわないとちょっと人手が足りてないって言ってなかった」
「この人困ってるみたいなんだけど…」
人の服の手直しなんてしたことがない。
私ができるのはせいぜい修繕までで、サイズを合わせるなんてそんな難しいことは…
「俺がちゃんと指示を出すから、月見ちゃんにはそれどおりに縫ってほしいんだ。…駄目かな?」
急なことで人が足りていないのも、周りがどたばた動いているのも分かっている。
けれど、私には自信がない。
…それでも今は、やるしかないだろう。
「分かり、ました。全然上手くできる自信がないですけど、取り敢えずやってみます」
「ありがとう、すごく助かるよ!」
夏彦は衣装にどんどん線を入れていく。
それからばっさり切り落として、今度は縫う為の線を完成させた。
「こことここ、それからここをお願い。残りはミシンでやらないと針が通らないから、それ以外の部分を任せるね」
「は、はい…」
ズボンは生地が固いからか、私がやるのは真っ白いシャツだけだ。
「まー君、この辺切るよ」
「…ほんと、こういうときは真面目だよね」
「だけってつけないでくれてありがとう。まー君ってなんだかんだ優しいよね」
「……」
話ながらすぱすぱ鋏を入れていく音がする。
今までならそれが怖かったはずなのに、夏彦の音はとても優しい。
「で、できました」
「ありがとう!それじゃあ後はそのコサージュを上着の肩につけてもらえる?」
「わ、分かりました」
さっきできあがったばかりの秋桜を、生地が痛まないように気をつけながらつけていく。
夏彦はその間に別の人の衣装まで縫い終わっていた。
「完成しました」
「ありがとう。本当に早いね」
「そ、そんなことはないと思います」
頭を撫でられてくすぐったく思っていると、冬真さんの呟きが耳に届いた。
「…そういうのはふたりきりのときにしてよ」
「そういうのって、」
「いいじゃん、これが俺たちのスキンシップの取り方なんだから…。
まー君にもやってあげようか?」
「そういうのいらない。僕はただ頼まれたことをやるだけだから」
いつの間にか着替え終わっている冬真さんに上着を手渡すと、ありがとうと言ってもらえた。
「…こういうのいいと思う」
「あ、ありがとうございます」
「まー君が人を素直に褒めるなんて珍しい…」
「…今すぐ帰ってやろうか」
ふたりの間にはどんな信頼関係があるんだろう。
少し知りたいと思いつつ、彼らの背中を見送った。
「…よかった、ちゃんと血が止まってて」
ソルトを撫でながらそんな呟きが漏れてしまうほど、私はリラックスした状態だった。
「…ちゃんと説明してなかったでしょ」
「ごめんごめん、月見ちゃんにも手伝ってもらわないとちょっと人手が足りてないって言ってなかった」
「この人困ってるみたいなんだけど…」
人の服の手直しなんてしたことがない。
私ができるのはせいぜい修繕までで、サイズを合わせるなんてそんな難しいことは…
「俺がちゃんと指示を出すから、月見ちゃんにはそれどおりに縫ってほしいんだ。…駄目かな?」
急なことで人が足りていないのも、周りがどたばた動いているのも分かっている。
けれど、私には自信がない。
…それでも今は、やるしかないだろう。
「分かり、ました。全然上手くできる自信がないですけど、取り敢えずやってみます」
「ありがとう、すごく助かるよ!」
夏彦は衣装にどんどん線を入れていく。
それからばっさり切り落として、今度は縫う為の線を完成させた。
「こことここ、それからここをお願い。残りはミシンでやらないと針が通らないから、それ以外の部分を任せるね」
「は、はい…」
ズボンは生地が固いからか、私がやるのは真っ白いシャツだけだ。
「まー君、この辺切るよ」
「…ほんと、こういうときは真面目だよね」
「だけってつけないでくれてありがとう。まー君ってなんだかんだ優しいよね」
「……」
話ながらすぱすぱ鋏を入れていく音がする。
今までならそれが怖かったはずなのに、夏彦の音はとても優しい。
「で、できました」
「ありがとう!それじゃあ後はそのコサージュを上着の肩につけてもらえる?」
「わ、分かりました」
さっきできあがったばかりの秋桜を、生地が痛まないように気をつけながらつけていく。
夏彦はその間に別の人の衣装まで縫い終わっていた。
「完成しました」
「ありがとう。本当に早いね」
「そ、そんなことはないと思います」
頭を撫でられてくすぐったく思っていると、冬真さんの呟きが耳に届いた。
「…そういうのはふたりきりのときにしてよ」
「そういうのって、」
「いいじゃん、これが俺たちのスキンシップの取り方なんだから…。
まー君にもやってあげようか?」
「そういうのいらない。僕はただ頼まれたことをやるだけだから」
いつの間にか着替え終わっている冬真さんに上着を手渡すと、ありがとうと言ってもらえた。
「…こういうのいいと思う」
「あ、ありがとうございます」
「まー君が人を素直に褒めるなんて珍しい…」
「…今すぐ帰ってやろうか」
ふたりの間にはどんな信頼関係があるんだろう。
少し知りたいと思いつつ、彼らの背中を見送った。
「…よかった、ちゃんと血が止まってて」
ソルトを撫でながらそんな呟きが漏れてしまうほど、私はリラックスした状態だった。
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