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夏彦ルート
第41.5話
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…そう、あの家に家族なんて呼べる人間はもういない。
話しながら少しうんざりしてくる。
「それは、どういうことですか?」
月見ちゃんが不思議がるのも無理はないだろう。
今の発言だけでは、あまりにも言葉が足りなさすぎる。
「俺には、夏樹っていう名前の兄貴がいたんだ。俺があの家にいたのは兄貴がいたからで、あいつらの為じゃない」
話せば話すほど腹が立ってくる。
あの頃はまだ非力で何もできなかった。
俺のせいで兄は殺されてしまったようなものだ。
「それでは、その…お相手のことを人殺しと言っていたのは、お兄さんを殺した方だからなんですね」
「うん。俺は兄貴がいてくれれば、それだけで充分幸せだったよ」
…そう、ずっと幸せだった。
カルテットのなかには不遇だったメンバーが多い。
それもあって、あのなかではましな方だったと思う。
「だけど、その幸せは長くは続かなかった。…兄貴が仕事でいない日が増えて、ある日突然死んだって知らされたんだ」
「…それなら、どうやって殺されてしまったことを調べたんですか?」
月見ちゃんはぼんやりしているようで人のことをよく見ている。
今回もこちらの反応を時折確認するように窺っているが、そう簡単に表情を崩したりはしない。
…とはいえ、彼女は意識的に人の顔色を気にしているわけではないだろうが。
「兄が請け負っていた任務は、国家機密に関わるようなことだったらしい。
だから、詳細データは確認できなかったんだけど…本当は俺がやらないといけない仕事だったんだって」
「え…?」
「未熟者だし、失敗しても簡単に切り捨てられるからだったんだろうね。
だけど、俺はその事を知らなかった。…兄が俺に知らせるのを止めたから」
あの依頼を兄が受けたなんて、未だに信じられない。
だが、それはきっと……
「お兄さんの、優しさだったんですね」
「…俺もそう思ってる。あの頃は、あの家がそんな犯罪紛いのことをしているなんて思ってなかった。ただの情報収集が仕事だと思ってたんだ。
だから、その事実に嫌気がさして家を出た。…それで、あの人たちが沢山の人たちを傷つけてきた分、誰かの助けになろうと思って、今の状態を選んだんだ」
月見ちゃんは黙ったまま最後まで聞いてくれた。
俺は絶対に赦せない。
俺の幸せを奪ったあいつらも、欲望だらけのこの世界も…あまりに非力だった自分自身も。
だから、もしまたあいつがきたそのときは──
「あの…お兄さんの話を、もう少し聞いてもいいですか?」
「いいよ、自慢の兄貴だから!」
危うく無垢な彼女には聞かせられないような言葉が口から出てしまうところだった。
仕草に気をつけながら、兄について話してみることにする。
彼女は一体、どんな気持ちで聞いているのだろうか。
話しながら少しうんざりしてくる。
「それは、どういうことですか?」
月見ちゃんが不思議がるのも無理はないだろう。
今の発言だけでは、あまりにも言葉が足りなさすぎる。
「俺には、夏樹っていう名前の兄貴がいたんだ。俺があの家にいたのは兄貴がいたからで、あいつらの為じゃない」
話せば話すほど腹が立ってくる。
あの頃はまだ非力で何もできなかった。
俺のせいで兄は殺されてしまったようなものだ。
「それでは、その…お相手のことを人殺しと言っていたのは、お兄さんを殺した方だからなんですね」
「うん。俺は兄貴がいてくれれば、それだけで充分幸せだったよ」
…そう、ずっと幸せだった。
カルテットのなかには不遇だったメンバーが多い。
それもあって、あのなかではましな方だったと思う。
「だけど、その幸せは長くは続かなかった。…兄貴が仕事でいない日が増えて、ある日突然死んだって知らされたんだ」
「…それなら、どうやって殺されてしまったことを調べたんですか?」
月見ちゃんはぼんやりしているようで人のことをよく見ている。
今回もこちらの反応を時折確認するように窺っているが、そう簡単に表情を崩したりはしない。
…とはいえ、彼女は意識的に人の顔色を気にしているわけではないだろうが。
「兄が請け負っていた任務は、国家機密に関わるようなことだったらしい。
だから、詳細データは確認できなかったんだけど…本当は俺がやらないといけない仕事だったんだって」
「え…?」
「未熟者だし、失敗しても簡単に切り捨てられるからだったんだろうね。
だけど、俺はその事を知らなかった。…兄が俺に知らせるのを止めたから」
あの依頼を兄が受けたなんて、未だに信じられない。
だが、それはきっと……
「お兄さんの、優しさだったんですね」
「…俺もそう思ってる。あの頃は、あの家がそんな犯罪紛いのことをしているなんて思ってなかった。ただの情報収集が仕事だと思ってたんだ。
だから、その事実に嫌気がさして家を出た。…それで、あの人たちが沢山の人たちを傷つけてきた分、誰かの助けになろうと思って、今の状態を選んだんだ」
月見ちゃんは黙ったまま最後まで聞いてくれた。
俺は絶対に赦せない。
俺の幸せを奪ったあいつらも、欲望だらけのこの世界も…あまりに非力だった自分自身も。
だから、もしまたあいつがきたそのときは──
「あの…お兄さんの話を、もう少し聞いてもいいですか?」
「いいよ、自慢の兄貴だから!」
危うく無垢な彼女には聞かせられないような言葉が口から出てしまうところだった。
仕草に気をつけながら、兄について話してみることにする。
彼女は一体、どんな気持ちで聞いているのだろうか。
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