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夏彦ルート
第35話
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「月見、ちょっとだけ話を聞いてもいい?」
手の甲の手当てが終わった瞬間、タイミングよく花菜が入ってくる。
「待ち構えてたでしょ?」
「そんなことしてないよ…!なっちゃんはここで待ってて。先輩が怒るって言ってたから」
「え、アッキー来てるの?嫌だな…」
夏彦がアッキーと呼ぶ相手は恐らくひとりだけ。
怒ると怖い人、なのだろうか。
「月見はこっちね」
「あんまり月見ちゃんに乱暴なことしないでね」
「しないよ!」
まだこの状況についていけていないのは私だけなのかもしれない。
よく分からない人たちに襲われて、その人たちが何を考えているのか分からないままで…多分、みんなはお仕事で慣れているんだ。
「月見、あんまり思い出したくないと思うけど答えられる範囲で答えてくれないかな?」
「が、頑張ります…」
花菜の勘が恐ろしく鋭いことは、先日会ったときから知っている。
蕀さんたちのことはできるだけ知られたくないけれど、話さないままでいられるだろうか。
「そうだな、まずは…犯人がいつ入ってきたかは分かる?」
「それは分かりません。ただ、部屋のドアをたたかれたときに会話する声が聞こえたので…知らない人がいることは分かりました」
それからも、犯人の顔は見たのかとかどこで過ごしていたのかとか、至って普通の質問をされる。
「ありがとう。これで情報はばっちりだと思う」
「えっと…お役にたてたならよかったです」
なんとか分からないようにできたと安心していると、花菜はにやりと笑ってこんな話をした。
「まさか蔦が犯人に巻きついていくとは思わなかった…。もしかして、あれって月見がやったの?」
油断しきっていた私にとってそれはあまりに不意打ちで、呆然とすることしかできない。
どう答えたら怪しくないだろう。
「そ、そんなことがあったんですね。ロッカーの外で何がおこっていたのか、全然知らなくて…」
「そうなんだ!てっきり隙間から覗いてたのかと思ってた」
花菜は笑っているけれど、半信半疑といった表情を向けてくる。
もう話すしかないのかもしれない…そう思ったときだった。
「月見ちゃんを困らせるなんて、本当にいけない部下みたいだよ…アッキー」
「あ、先輩!」
「あ、じゃねえ。まったく…すまないな、お嬢ちゃん。こいつにも悪気があった訳じゃねえんだ」
「い、いえ…」
秋久さんがこちらを向いてそう告げると、夏彦がとんでもないことを言い出した。
「それに、この部屋には雑草の蔦がちょこちょこ入りこんでくるんだ。
だから、偶然絡まっても不思議じゃない」
「え、そうなの!?知らなかった…」
この部屋にそんなものがないことは彼が1番知っているはずだ。
それなのにどうして…。
夏彦と目が合ったけれど、いつもどおり笑っている姿しかとらえることができなかった。
手の甲の手当てが終わった瞬間、タイミングよく花菜が入ってくる。
「待ち構えてたでしょ?」
「そんなことしてないよ…!なっちゃんはここで待ってて。先輩が怒るって言ってたから」
「え、アッキー来てるの?嫌だな…」
夏彦がアッキーと呼ぶ相手は恐らくひとりだけ。
怒ると怖い人、なのだろうか。
「月見はこっちね」
「あんまり月見ちゃんに乱暴なことしないでね」
「しないよ!」
まだこの状況についていけていないのは私だけなのかもしれない。
よく分からない人たちに襲われて、その人たちが何を考えているのか分からないままで…多分、みんなはお仕事で慣れているんだ。
「月見、あんまり思い出したくないと思うけど答えられる範囲で答えてくれないかな?」
「が、頑張ります…」
花菜の勘が恐ろしく鋭いことは、先日会ったときから知っている。
蕀さんたちのことはできるだけ知られたくないけれど、話さないままでいられるだろうか。
「そうだな、まずは…犯人がいつ入ってきたかは分かる?」
「それは分かりません。ただ、部屋のドアをたたかれたときに会話する声が聞こえたので…知らない人がいることは分かりました」
それからも、犯人の顔は見たのかとかどこで過ごしていたのかとか、至って普通の質問をされる。
「ありがとう。これで情報はばっちりだと思う」
「えっと…お役にたてたならよかったです」
なんとか分からないようにできたと安心していると、花菜はにやりと笑ってこんな話をした。
「まさか蔦が犯人に巻きついていくとは思わなかった…。もしかして、あれって月見がやったの?」
油断しきっていた私にとってそれはあまりに不意打ちで、呆然とすることしかできない。
どう答えたら怪しくないだろう。
「そ、そんなことがあったんですね。ロッカーの外で何がおこっていたのか、全然知らなくて…」
「そうなんだ!てっきり隙間から覗いてたのかと思ってた」
花菜は笑っているけれど、半信半疑といった表情を向けてくる。
もう話すしかないのかもしれない…そう思ったときだった。
「月見ちゃんを困らせるなんて、本当にいけない部下みたいだよ…アッキー」
「あ、先輩!」
「あ、じゃねえ。まったく…すまないな、お嬢ちゃん。こいつにも悪気があった訳じゃねえんだ」
「い、いえ…」
秋久さんがこちらを向いてそう告げると、夏彦がとんでもないことを言い出した。
「それに、この部屋には雑草の蔦がちょこちょこ入りこんでくるんだ。
だから、偶然絡まっても不思議じゃない」
「え、そうなの!?知らなかった…」
この部屋にそんなものがないことは彼が1番知っているはずだ。
それなのにどうして…。
夏彦と目が合ったけれど、いつもどおり笑っている姿しかとらえることができなかった。
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