24 / 385
春人ルート
第12話
しおりを挟む
「…包帯、巻き終わったよ」
「ごめんなさ…ありがとう、ございます」
「だいぶよくなってきたみたいでよかった。本当ならちゃんとした医者に診せた方がいいんだろうけど…」
「いえ、充分です。ありがとうございます」
いつも気遣ってもらってばかりになっているのが申し訳ない。
ただ自分にできることをやるしかなくて、それがあまりにも少ないような気がして自信がなくなっていく。
「何かやりたいことはない?」
「私が、考えてもいいんですか?」
「俺は君をここに縛りつけておきたい訳じゃない。
叶えられるかどうかは別として、君がどんなことを考えているのか知っておきたいんだ」
黒柿色の髪をかきあげながら、春人はじっとこちらを見つめる。
探るような嫌な感じでも、あの人たちのような蔑むようなものでもない。
だからこそ、今の私は落ち着いて過ごすことができているのだろう。
「あ、の…」
「どうかした?」
「もっと、お手伝いできることはありませんか?」
どんなことでもいいから、彼の力になれることを探したかった。
これだけでは不十分なような気がして、焦りばかりがつのっていく。
「今のままで充分だよ。充分、だけど…もし他に何かやりたいと思っているなら、これを手伝ってほしい」
春人が見せてくれた箱の中には、色々な部品がぎっしりと詰まっていた。
「歯車…?」
「そう、歯車。他のもいくつかあるけど、これを同じ大きさごとに分けてほしい。
その後の見分けは俺がやるから、お願いしてもいい?」
「…うん」
初めて修理に関係することを任せてもらえたのが嬉しくて、ただ無心で歯車を分けていく。
微妙に大きさが違っていたり色ごとにも分けたりしているうちに、気づいたときには昼食を作る時間になっていた。
「で、できました」
「ありがとう。ここからは俺がやるから、」
「あと、その…お昼ご飯も、できました」
春人は沢山持っていた道具を置いて、そのままキッチンの方へと向かう。
食事が楽しみだと思ってもらえているのなら嬉しいけれど、先程の作業がきちんとできているか不安で仕方がない。
「そこまで気にしなくても、君はちゃんとできてた」
「そう、でしょうか?」
「あれだけ真面目にやってくれてすごく助かった。ありがとう」
まさか感謝の言葉をもらえるとは思っていなかった。
ただ真っ直ぐ見つめると、春人はふっと微笑みながら冷蔵庫から何かを取り出す。
「それってなんですか?」
「ケーキ。食べたことない?」
私が頷くと、彼はそうなんだと呟いた。
「ご飯を食べてから、少し休憩を挟もう。…これを食べるのはそのときに」
春人の言葉にただ頷くことしかできなくて、少しずつ心に花が芽吹いていくのを感じた。
「ごめんなさ…ありがとう、ございます」
「だいぶよくなってきたみたいでよかった。本当ならちゃんとした医者に診せた方がいいんだろうけど…」
「いえ、充分です。ありがとうございます」
いつも気遣ってもらってばかりになっているのが申し訳ない。
ただ自分にできることをやるしかなくて、それがあまりにも少ないような気がして自信がなくなっていく。
「何かやりたいことはない?」
「私が、考えてもいいんですか?」
「俺は君をここに縛りつけておきたい訳じゃない。
叶えられるかどうかは別として、君がどんなことを考えているのか知っておきたいんだ」
黒柿色の髪をかきあげながら、春人はじっとこちらを見つめる。
探るような嫌な感じでも、あの人たちのような蔑むようなものでもない。
だからこそ、今の私は落ち着いて過ごすことができているのだろう。
「あ、の…」
「どうかした?」
「もっと、お手伝いできることはありませんか?」
どんなことでもいいから、彼の力になれることを探したかった。
これだけでは不十分なような気がして、焦りばかりがつのっていく。
「今のままで充分だよ。充分、だけど…もし他に何かやりたいと思っているなら、これを手伝ってほしい」
春人が見せてくれた箱の中には、色々な部品がぎっしりと詰まっていた。
「歯車…?」
「そう、歯車。他のもいくつかあるけど、これを同じ大きさごとに分けてほしい。
その後の見分けは俺がやるから、お願いしてもいい?」
「…うん」
初めて修理に関係することを任せてもらえたのが嬉しくて、ただ無心で歯車を分けていく。
微妙に大きさが違っていたり色ごとにも分けたりしているうちに、気づいたときには昼食を作る時間になっていた。
「で、できました」
「ありがとう。ここからは俺がやるから、」
「あと、その…お昼ご飯も、できました」
春人は沢山持っていた道具を置いて、そのままキッチンの方へと向かう。
食事が楽しみだと思ってもらえているのなら嬉しいけれど、先程の作業がきちんとできているか不安で仕方がない。
「そこまで気にしなくても、君はちゃんとできてた」
「そう、でしょうか?」
「あれだけ真面目にやってくれてすごく助かった。ありがとう」
まさか感謝の言葉をもらえるとは思っていなかった。
ただ真っ直ぐ見つめると、春人はふっと微笑みながら冷蔵庫から何かを取り出す。
「それってなんですか?」
「ケーキ。食べたことない?」
私が頷くと、彼はそうなんだと呟いた。
「ご飯を食べてから、少し休憩を挟もう。…これを食べるのはそのときに」
春人の言葉にただ頷くことしかできなくて、少しずつ心に花が芽吹いていくのを感じた。
0
お気に入りに追加
12
あなたにおすすめの小説
Tell me eMotion
黒蝶
キャラ文芸
突きつけられるのは、究極の選択。
「生き返るか、僕と一緒にくるか...」
全てに絶望した少女・雪芽は、ある存在と出会う。
そしてその存在は告げる。
「僕には感情がないんだ」
これは、そんな彼と過ごしていくうちにお互いの心を彩づけていく選択の物語。
※内容が内容なので、念のためレーティングをかけてあります。
泣けない、泣かない。
黒蝶
ライト文芸
毎日絶望に耐えている少女・詩音と、偶然教育実習生として彼女の高校に行くことになった恋人・優翔。
ある事情から不登校になった少女・久遠と、通信制高校に通う恋人・大翔。
兄である優翔に憧れる弟の大翔。
しかし、そんな兄は弟の言葉に何度も救われている。
これは、そんな4人から為る物語。
《主な登場人物》
如月 詩音(きらさぎ しおん):大人しめな少女。歌うことが大好きだが、人前ではなかなか歌わない。
小野 優翔(おの ゆうと):詩音の恋人。養護教諭になる為、教育実習に偶然詩音の学校にやってくる。
水無月 久遠(みなづき くおん):家からほとんど出ない少女。読書家で努力家。
小野 大翔(おの ひろと):久遠の恋人。優翔とは兄弟。天真爛漫な性格で、人に好かれやすい。
ハーフ&ハーフ
黒蝶
恋愛
ある雨の日、野崎七海が助けたのは中津木葉という男。
そんな木葉から告げられたのは、哀しい事実。
「僕には関わらない方がいいよ。...半分とはいえ、人間じゃないから」
...それから2ヶ月、ふたりは恋人として生きていく選択をしていた。
これは、極々普通?な少女と人間とヴァンパイアのハーフである少年の物語。
クラシオン
黒蝶
ライト文芸
「ねえ、知ってる?どこかにある、幸福を招くカフェの話...」
町で流行っているそんな噂を苦笑しながら受け流す男がいた。
「...残念ながら、君たちでは俺の店には来られないよ」
決して誰でも入れるわけではない場所に、今宵やってくるお客様はどんな方なのか。
「ようこそ、『クラシオン』へ」
これは、傷ついた心を優しく包みこむカフェと、謎だらけのマスターの話。
ママと中学生の僕
キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。
淫らな蜜に狂わされ
歌龍吟伶
恋愛
普段と変わらない日々は思わぬ形で終わりを迎える…突然の出会い、そして体も心も開かれた少女の人生録。
全体的に性的表現・性行為あり。
他所で知人限定公開していましたが、こちらに移しました。
全3話完結済みです。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
母になる、その途中で
ゆう
恋愛
『母になる、その途中で』
大学卒業を控えた21歳の如月あゆみは、かつての恩師・星宮すばると再会する。すばるがシングルファーザーで、二人の子ども(れん・りお)を育てていることを知ったあゆみは、家族としての役割に戸惑いながらも、次第に彼らとの絆を深めていく。しかし、子どもを愛せるのか、母親としての自分を受け入れられるのか、悩む日々が続く。
完璧な母親像に縛られることなく、ありのままの自分で家族と向き合うあゆみの成長と葛藤を描いた物語。家庭の温かさや絆、自己成長の大切さを通じて、家族の意味を見つけていく彼女の姿に共感すること間違いなしです。
不安と迷いを抱えながらも、自分を信じて前に進むあゆみの姿が描かれた、感動的で温かいストーリー。あなたもきっと、あゆみの成長に胸を打たれることでしょう。
【この物語の魅力】
成長する主人公が描く心温まる家族の物語
母親としての葛藤と自己矛盾を描いたリアルな感情
家族としての絆を深めながら進んでいく愛と挑戦
心温まるストーリーをぜひお楽しみください。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる