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泣かないver.
その後の話
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9月、大翔の生徒会長生活は終わった。
次は卒業していく番だと話したのは、つい最近のことだ。
「寂しくないの?」
「若干寂しいものなんだな...」
いつものクレープ屋さんで、そんな話をしながら少しずつ食べ進めていく。
ただ、大翔は楽しそうに笑った。
「まあ、大丈夫だと思う。時期会長は生徒会役員をこなしてるわけだし...先生たちもいるしな」
「確かに...」
先生たちがいるからという言葉に、こんな説得力を感じる日がくるとは思わなかった。
大人たちなんて信じられないと思っていたのに、今ではこんなふうにのんびりと身構えられている。
「そういえば、紅茶検定の結果は?」
「...ぎりぎり受かってた」
「そうなんだ、おめでとう」
「なんか妙に照れくさいな...」
あれから大翔は上級に合格した。
あれだけ必死に勉強していたのだから、やっぱりという思いが強い。
(そういえば、私もちゃんと報告しないと)
「あのね、私...この前初級を受けてみたんだ」
「そうなのか?」
「うん。なんとか合格したけど、すごく難しいね...」
呆然と立ち尽くす大翔に、更に話をする。
私が見せたスマートフォンの画面は、ある応募サイトからのメールだった。
「それから...私、最終候補に残ったよ」
「知ってた」
「え?」
大翔が見せてくれたスマートフォンの画面には、『▼▲大賞最終候補』の文字。
(そういえば、今回は応募したって話をしたんだっけ)
ほんの少し話したくらいのことを、彼はいつも覚えてくれている。
それをこうして調べてくれていることはすごくありがたかったし、感謝してもし足りないほどだ。
「大翔」
「どうした?」
「ありがとう」
「お礼を言われるようなことなんて何もしてないと思うけど...」
今は少しずつしかできないとしても、いつか大翔に追いつきたい。
「最終選考、自信あるか?」
「ううん。寧ろここまで残ったのが奇跡だって思ってる」
すごい物語を紡ぐ人なんて沢山いる。
その人たちにだって無限の可能性があって、きっと私の刃では太刀打ちできないこともあるだろう。
それでも私は、簡単に諦めたくない。
「ありきたりなことしか言えなくて悪いけど...きっと大丈夫だ。だから、あんまり思い詰めなくていい」
「...うん。ありがとう」
言葉を選びながら励ましてくれていることはすぐに理解した。
こんなにも優しい彼に、少しずつ何かを返していければいい。
夕陽が沈む頃、小さな決意を胸にそっと手を繋ぐ。
これからも一緒に歩いていけるように...後ろではなく隣を歩けるように、私は戦い続ける。
次は卒業していく番だと話したのは、つい最近のことだ。
「寂しくないの?」
「若干寂しいものなんだな...」
いつものクレープ屋さんで、そんな話をしながら少しずつ食べ進めていく。
ただ、大翔は楽しそうに笑った。
「まあ、大丈夫だと思う。時期会長は生徒会役員をこなしてるわけだし...先生たちもいるしな」
「確かに...」
先生たちがいるからという言葉に、こんな説得力を感じる日がくるとは思わなかった。
大人たちなんて信じられないと思っていたのに、今ではこんなふうにのんびりと身構えられている。
「そういえば、紅茶検定の結果は?」
「...ぎりぎり受かってた」
「そうなんだ、おめでとう」
「なんか妙に照れくさいな...」
あれから大翔は上級に合格した。
あれだけ必死に勉強していたのだから、やっぱりという思いが強い。
(そういえば、私もちゃんと報告しないと)
「あのね、私...この前初級を受けてみたんだ」
「そうなのか?」
「うん。なんとか合格したけど、すごく難しいね...」
呆然と立ち尽くす大翔に、更に話をする。
私が見せたスマートフォンの画面は、ある応募サイトからのメールだった。
「それから...私、最終候補に残ったよ」
「知ってた」
「え?」
大翔が見せてくれたスマートフォンの画面には、『▼▲大賞最終候補』の文字。
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ほんの少し話したくらいのことを、彼はいつも覚えてくれている。
それをこうして調べてくれていることはすごくありがたかったし、感謝してもし足りないほどだ。
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「ありがとう」
「お礼を言われるようなことなんて何もしてないと思うけど...」
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「...うん。ありがとう」
言葉を選びながら励ましてくれていることはすぐに理解した。
こんなにも優しい彼に、少しずつ何かを返していければいい。
夕陽が沈む頃、小さな決意を胸にそっと手を繋ぐ。
これからも一緒に歩いていけるように...後ろではなく隣を歩けるように、私は戦い続ける。
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