155 / 156
クロス×ストーリー(通常運転のイベントもの多め)
ホワイトデー大決戦...?-優翔×大翔-
しおりを挟む
「大翔、いる?」
兄貴がこんなに朝早くからここにやってくるのは珍しい。
いつもなら昼すぎにやってくるはずなのだが、何か緊急の用事だろうか。
「おはよう」
「はい、これどうぞ」
そう言って差し出されたのは、巨大な箱だった。
「...本当に俺宛なのか?」
「そうだよ。駄目だった?」
「いや、別にいいけど...ありがとう。時間があるならあがって」
「それじゃあお邪魔します」
兄貴はいつもどおりあがってくると、何故か楽しそうに笑いながらソファーに腰掛けた。
「なんでそんなに楽しそうなんだ?」
「さっきの呆然としてる大翔が可愛かったから、かな」
「男に可愛いは褒め言葉なのか...?」
そんな話をしている間にポットのお湯が沸く。
それをそのまま使って紅茶を淹れると、何故か感心されてしまった。
「大翔はやっぱりすごいね...」
「別に普通なんだけどな。ちょっと熱いかもしれないけどどうぞ」
然り気無く用意しておいたものと一緒に差し出すと、兄貴はいつもの優しい笑顔を向けてきた。
「大翔も用意してくれてたんだね。ありがとう」
「大したものじゃないけどな」
兄貴のはどう見ても手作りのものに有名どころの菓子がセットになっている。
それに対して俺は手作り菓子とブレンドティーくらいだ。
これだけでよかったのかと不安になっていると、兄貴は全てを見透かしたように微笑みかけた。
「誰かへのプレゼントなら、相手への気持ちが1番なんじゃないかな?」
「兄貴...これ」
「え、僕にくれるの?...開けてみてもいい?」
頷いてはみるものの自信がなくて、俯きそうになりながら呟く。
「...兄貴のに比べたら全然大したものじゃないけど、それでよければ」
「え、ブレンドティー!?」
そんなにがっかりするようなものだったのだろうか。
黙っていると、がしっと腕が掴まれる。
「いつの間にこんな技術を身につけたの!?」
「え?」
「知らないうちにどんどん上手くなって...成長を感じて感激しちゃった。
世界でふたつとないものをありがとう」
その表情は満面の笑みで、胸が熱くなってくる。
兄貴は嘘を吐くようなタイプではない。
...本当にそう思ってもらえたのなら、作った甲斐があったというものだ。
「お菓子も大事に食べるね」
「賞味期限切らさないようにな。...ブレンドティーはアイスにしても美味しいと思う」
「ありがとう」
俺がいても仕方ない、要らないんだからとずっと思っていた。
そんななかでも生きてこられたのは、目の前にいるたったひとりの家族と呼べる存在がいるからだ。
──これからも感謝を忘れずに、ゆっくり恩をかえしていこう。
兄貴がこんなに朝早くからここにやってくるのは珍しい。
いつもなら昼すぎにやってくるはずなのだが、何か緊急の用事だろうか。
「おはよう」
「はい、これどうぞ」
そう言って差し出されたのは、巨大な箱だった。
「...本当に俺宛なのか?」
「そうだよ。駄目だった?」
「いや、別にいいけど...ありがとう。時間があるならあがって」
「それじゃあお邪魔します」
兄貴はいつもどおりあがってくると、何故か楽しそうに笑いながらソファーに腰掛けた。
「なんでそんなに楽しそうなんだ?」
「さっきの呆然としてる大翔が可愛かったから、かな」
「男に可愛いは褒め言葉なのか...?」
そんな話をしている間にポットのお湯が沸く。
それをそのまま使って紅茶を淹れると、何故か感心されてしまった。
「大翔はやっぱりすごいね...」
「別に普通なんだけどな。ちょっと熱いかもしれないけどどうぞ」
然り気無く用意しておいたものと一緒に差し出すと、兄貴はいつもの優しい笑顔を向けてきた。
「大翔も用意してくれてたんだね。ありがとう」
「大したものじゃないけどな」
兄貴のはどう見ても手作りのものに有名どころの菓子がセットになっている。
それに対して俺は手作り菓子とブレンドティーくらいだ。
これだけでよかったのかと不安になっていると、兄貴は全てを見透かしたように微笑みかけた。
「誰かへのプレゼントなら、相手への気持ちが1番なんじゃないかな?」
「兄貴...これ」
「え、僕にくれるの?...開けてみてもいい?」
頷いてはみるものの自信がなくて、俯きそうになりながら呟く。
「...兄貴のに比べたら全然大したものじゃないけど、それでよければ」
「え、ブレンドティー!?」
そんなにがっかりするようなものだったのだろうか。
黙っていると、がしっと腕が掴まれる。
「いつの間にこんな技術を身につけたの!?」
「え?」
「知らないうちにどんどん上手くなって...成長を感じて感激しちゃった。
世界でふたつとないものをありがとう」
その表情は満面の笑みで、胸が熱くなってくる。
兄貴は嘘を吐くようなタイプではない。
...本当にそう思ってもらえたのなら、作った甲斐があったというものだ。
「お菓子も大事に食べるね」
「賞味期限切らさないようにな。...ブレンドティーはアイスにしても美味しいと思う」
「ありがとう」
俺がいても仕方ない、要らないんだからとずっと思っていた。
そんななかでも生きてこられたのは、目の前にいるたったひとりの家族と呼べる存在がいるからだ。
──これからも感謝を忘れずに、ゆっくり恩をかえしていこう。
0
お気に入りに追加
1
あなたにおすすめの小説
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。
東京カルテル
wakaba1890
ライト文芸
2036年。BBCジャーナリスト・綾賢一は、独立系のネット掲示板に投稿された、とある動画が発端になり東京出張を言い渡される。
東京に到着して、待っていたのはなんでもない幼い頃の記憶から、より洗練されたクールジャパン日本だった。
だが、東京都を含めた首都圏は、大幅な規制緩和と経済、金融、観光特区を設けた結果、世界中から企業と優秀な人材、莫大な投機が集まり、東京都の税収は年16兆円を超え、名実ともに世界一となった都市は更なる独自の進化を進めていた。
その掴みきれない光の裏に、綾賢一は知らず知らずの内に飲み込まれていく。
東京カルテル 第一巻 BookWalkerにて配信中。
https://bookwalker.jp/de6fe08a9e-8b2d-4941-a92d-94aea5419af7/
Tell me eMotion
黒蝶
キャラ文芸
突きつけられるのは、究極の選択。
「生き返るか、僕と一緒にくるか...」
全てに絶望した少女・雪芽は、ある存在と出会う。
そしてその存在は告げる。
「僕には感情がないんだ」
これは、そんな彼と過ごしていくうちにお互いの心を彩づけていく選択の物語。
※内容が内容なので、念のためレーティングをかけてあります。
いくら政略結婚だからって、そこまで嫌わなくてもいいんじゃないですか?いい加減、腹が立ってきたんですけど!
夢呼
恋愛
伯爵令嬢のローゼは大好きな婚約者アーサー・レイモンド侯爵令息との結婚式を今か今かと待ち望んでいた。
しかし、結婚式の僅か10日前、その大好きなアーサーから「私から愛されたいという思いがあったら捨ててくれ。それに応えることは出来ない」と告げられる。
ローゼはその言葉にショックを受け、熱を出し寝込んでしまう。数日間うなされ続け、やっと目を覚ました。前世の記憶と共に・・・。
愛されることは無いと分かっていても、覆すことが出来ないのが貴族間の政略結婚。日本で生きたアラサー女子の「私」が八割心を占めているローゼが、この政略結婚に臨むことになる。
いくら政略結婚といえども、親に孫を見せてあげて親孝行をしたいという願いを持つローゼは、何とかアーサーに振り向いてもらおうと頑張るが、鉄壁のアーサーには敵わず。それどころか益々嫌われる始末。
一体私の何が気に入らないんだか。そこまで嫌わなくてもいいんじゃないんですかね!いい加減腹立つわっ!
世界観はゆるいです!
カクヨム様にも投稿しております。
※10万文字を超えたので長編に変更しました。
ヒロイン失格 初恋が実らないのは知っていた。でもこんな振られ方ってないよ……
ななし乃和歌
ライト文芸
天賦の美貌を持って生まれたヒロイン、蓮華。1分あれば男を落とし、2分あれば理性を壊し、3分あれば同性をも落とす。ところが、このヒロイン……
主人公(ヒーロー役、京一)を馬鹿にするわ、プライドを傷つけるわ、主人公より脚が速くて運動神経も良くて、クラスで大モテの人気ナンバー1で、おもっきし主人公に嫉妬させるわ、さらに尿漏れオプション持ってるし、ゲロまみれの少女にキスするし、同級生のムカつく少女を奈落の底に突き落とすし……、最後に死んでしまう。
理由は、神様との契約を破ったことによる罰。
とまあ、相手役の主人公にとっては最悪のヒロイン。
さらに死んでしまうという、特殊ステータス付き。
このどん底から、主人公は地獄のヒロインを救い出すことになります。
主人公の義務として。
きみがわるい【声劇台本】【一人用】
マグカップと鋏は使いやすい
ライト文芸
ホラー風です。
こちらのジャンルが苦手な方はご遠慮ください。
最後の…………には好きな言葉を入れていただいてもかまいません。
性別不問、一人称変更okです。
言いやすいように語尾など変更してください。
動画・音声投稿サイトに使用する場合は、使用許可は不要ですが一言いただけると嬉しいです。
非常に喜びます。
自作発言、転載はご遠慮ください。
著作権は放棄しておりません。
使用の際は作者名を記載してください。
内容や世界観が変わらない程度の変更や語尾、性別の変更、方言は構いません。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる