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クロス×ストーリー(通常運転のイベントもの多め)
クリスマス-泣けない、泣かない。ver.-
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「...もしもし」
『よかった。詩音、まだ寝てなかったんだね』
誰からのビデオ通話か全く見ずに出てしまった夜、私は手櫛で髪を整える。
向こう側からは、優翔の笑い声が聞こえた。
『寝癖があっても可愛いよ』
「それはやっぱり恥ずかしいよ...」
『僕はそれでもいいと思うんだけど、駄目なの?』
「優翔がよくても私がよくないの。...優翔の前では少しでも綺麗でいたいから」
『詩音はいい子だね』
優翔は画面越しに手で頭を撫でるような仕草を見せた後、その手を寂しそうに見つめていた。
『やっぱり直接触れられないのはもどかしいね』
「優翔...」
本当は明日だって会いたい。
私はプレゼントをもらったけれど、私からはまだ渡せていないから。
「あのね、優翔」
『どうかしたの?』
「...ううん、なんでもない」
勇気がない私には、行ってもいいか訊くことさえハードルが高い。
(もう今年は会えないのかな...)
少し寂しく思いながら、おやすみと電話を切った。
──そして迎えた、クリスマス当日。
会えないのは寂しいけれど仕方ないと自分に言い聞かせていると、スマートフォンが鳴きはじめた。
『ねえ、詩音。もし今日予定が空いているようなら...一緒にプチパーティーしない?』
はじまりは久遠のそんな一言だった。
てっきりどこかお店に行こうという意味だと思っていたけれど、歩いていく方角で分かる。
(優翔と大翔君の家に向かってる...?)
その時点で、なんだかわくわくしてしまった。
ポケットの中を探ってみると、渡せなかったものがそこにあるのを確認する。
もしも...もしもそこに彼がいたら。
そんな思いでいっぱいになりながら、1歩1歩進んでいくのだった。
「おかえり、久遠。詩音さんも...こんにちは」
「こ、こんにちは」
「もうちょっと中で待っててな」
「...うん」
実は密かに持ってきていた料理を並べながら、久遠とゆっくり話をする。
「騙すみたいになってごめんね。大翔とふたりで考えた、ベストな作戦だったんだ」
「私がいても邪魔じゃない?」
「そんなこと思わないよ」
「大翔、なかなか帰ってこないみたいだし...プチ女子会みたいだね」
「そうだね。あの...これ、よかったら」
何を渡すのが正解か分からなくて、ウィンドウショッピング中に見つけた小柄なぬいぐるみを手渡す。
「うさちゃん可愛い...!これ、本当にもらっていいの?」
「勿論」
「私からもプレゼント。詩音のものには及ばないけど...」
それは、小さな花がついているヘアピンだった。
(...大切にしよう)
「ありがとう、すごく嬉しい」
大翔さんがなかなか帰ってこないのは、私がいると久遠とあまり話せないからではないか。
...ふたりに料理だけ渡して帰った方がよかったのかもしれない。
そう思いはじめていた頃、出掛けていた大翔君が帰ってきた。
「おかえり、大翔」
「おう。ただいま」
大翔君と一緒に現れたのは、ずっと会いたくて仕方がなかった人だった。
「...大翔、これは一体どういうこと?」
『よかった。詩音、まだ寝てなかったんだね』
誰からのビデオ通話か全く見ずに出てしまった夜、私は手櫛で髪を整える。
向こう側からは、優翔の笑い声が聞こえた。
『寝癖があっても可愛いよ』
「それはやっぱり恥ずかしいよ...」
『僕はそれでもいいと思うんだけど、駄目なの?』
「優翔がよくても私がよくないの。...優翔の前では少しでも綺麗でいたいから」
『詩音はいい子だね』
優翔は画面越しに手で頭を撫でるような仕草を見せた後、その手を寂しそうに見つめていた。
『やっぱり直接触れられないのはもどかしいね』
「優翔...」
本当は明日だって会いたい。
私はプレゼントをもらったけれど、私からはまだ渡せていないから。
「あのね、優翔」
『どうかしたの?』
「...ううん、なんでもない」
勇気がない私には、行ってもいいか訊くことさえハードルが高い。
(もう今年は会えないのかな...)
少し寂しく思いながら、おやすみと電話を切った。
──そして迎えた、クリスマス当日。
会えないのは寂しいけれど仕方ないと自分に言い聞かせていると、スマートフォンが鳴きはじめた。
『ねえ、詩音。もし今日予定が空いているようなら...一緒にプチパーティーしない?』
はじまりは久遠のそんな一言だった。
てっきりどこかお店に行こうという意味だと思っていたけれど、歩いていく方角で分かる。
(優翔と大翔君の家に向かってる...?)
その時点で、なんだかわくわくしてしまった。
ポケットの中を探ってみると、渡せなかったものがそこにあるのを確認する。
もしも...もしもそこに彼がいたら。
そんな思いでいっぱいになりながら、1歩1歩進んでいくのだった。
「おかえり、久遠。詩音さんも...こんにちは」
「こ、こんにちは」
「もうちょっと中で待っててな」
「...うん」
実は密かに持ってきていた料理を並べながら、久遠とゆっくり話をする。
「騙すみたいになってごめんね。大翔とふたりで考えた、ベストな作戦だったんだ」
「私がいても邪魔じゃない?」
「そんなこと思わないよ」
「大翔、なかなか帰ってこないみたいだし...プチ女子会みたいだね」
「そうだね。あの...これ、よかったら」
何を渡すのが正解か分からなくて、ウィンドウショッピング中に見つけた小柄なぬいぐるみを手渡す。
「うさちゃん可愛い...!これ、本当にもらっていいの?」
「勿論」
「私からもプレゼント。詩音のものには及ばないけど...」
それは、小さな花がついているヘアピンだった。
(...大切にしよう)
「ありがとう、すごく嬉しい」
大翔さんがなかなか帰ってこないのは、私がいると久遠とあまり話せないからではないか。
...ふたりに料理だけ渡して帰った方がよかったのかもしれない。
そう思いはじめていた頃、出掛けていた大翔君が帰ってきた。
「おかえり、大翔」
「おう。ただいま」
大翔君と一緒に現れたのは、ずっと会いたくて仕方がなかった人だった。
「...大翔、これは一体どういうこと?」
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