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泣けないver.
秘密の話
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「僕はきっと、素直に伝えます。一緒に過ごしたい、会って話がしたい...。
相手がどんなに忙しくても、きっとその想いを聞きたがっているはずだから」
「それは、先生も含めてですか?」
「勿論」
聞いてはいけない話を思いっきり聞いてしまった。
優翔はきっと私が今ここにいることを忘れてしまっている。
だからこそ、あれだけすらすらと話しているのだろう。
...もしかすると、大翔さんともこんなふうに話をするのかもしれない。
「先生の彼女さんってどんな人なんですか?」
「そうだな...優しくて可愛い、歌が上手な年下の子だよ。
人の為にっていつも行動しているところは尊敬できるけど、少し心配な面もあるんだ」
「それ、すごく分かります。私の彼氏もそういうところがあって、優しいところも好きだけど頑張りすぎてるのが心配というか...」
そんなふうに思っていてくれたのは知らなかった。
いつも無理しないでと言ってくれるのは、頑張りすぎだと思われていたということらしい。
(優翔にもそういうところがあると思うけど...)
「でも、相手は無自覚なんだよね。君の彼氏さんには、気を抜ける時間をプレゼントするのもいいかもしれない。
君と過ごせたら、きっといい息抜きになると思うよ」
「ありがとうございます...!」
「また何か悩んだらおいで。...まあ、2学期の最後までしかいないんだけどね」
鍵を閉めている音がしてぱたぱたと遠ざかっていく足音を聞きながら、そっとカーテンを開ける。
「...先生、さっきの話は本当ですか?」
「え、もしかして全部聞こえてた?」
私が小さく頷くと、優翔の顔は一気に赤く染まった。
やっぱり無意識のうちに漏れ出た本音だったのだ。
「嬉しかったです。...ありがとう、先生」
「お願い、忘れて...。流石にさっきのは恥ずかしいというか、聞かれてたと思うと仕事にならなくなるというか」
「そんなふうに思ってもらえてるなんて知らなかった、です」
「からかってるでしょ?」
「...少しだけ」
こうしてふたりで話せるだけで、私は幸せだと感じる。
向き合ってくれて、
支えてくれて、
助けてくれてありがとう。
もしあのとき死んでいたら、こんな景色は見られなかった。
きっと何も感じずに終わっていただろう。
今でも辛くなってやっぱり実行するべきだったかと悩むこともあるけれど、こうしてふたりでいられるならそれだけでいい。
「先生」
「な、何...?」
「好きだよ、優翔」
「...僕も愛してる」
笑顔でそう伝えられて、頬に熱が集まっていくのを感じる。
保健室登校は楽しい。
こうして大切な人といられるから。
それに...私というものが否定されないからだ。
けれど、これから先独りで戦うことになる。
だから今は思いきり笑った。
...そんな不安を押し殺すように。
相手がどんなに忙しくても、きっとその想いを聞きたがっているはずだから」
「それは、先生も含めてですか?」
「勿論」
聞いてはいけない話を思いっきり聞いてしまった。
優翔はきっと私が今ここにいることを忘れてしまっている。
だからこそ、あれだけすらすらと話しているのだろう。
...もしかすると、大翔さんともこんなふうに話をするのかもしれない。
「先生の彼女さんってどんな人なんですか?」
「そうだな...優しくて可愛い、歌が上手な年下の子だよ。
人の為にっていつも行動しているところは尊敬できるけど、少し心配な面もあるんだ」
「それ、すごく分かります。私の彼氏もそういうところがあって、優しいところも好きだけど頑張りすぎてるのが心配というか...」
そんなふうに思っていてくれたのは知らなかった。
いつも無理しないでと言ってくれるのは、頑張りすぎだと思われていたということらしい。
(優翔にもそういうところがあると思うけど...)
「でも、相手は無自覚なんだよね。君の彼氏さんには、気を抜ける時間をプレゼントするのもいいかもしれない。
君と過ごせたら、きっといい息抜きになると思うよ」
「ありがとうございます...!」
「また何か悩んだらおいで。...まあ、2学期の最後までしかいないんだけどね」
鍵を閉めている音がしてぱたぱたと遠ざかっていく足音を聞きながら、そっとカーテンを開ける。
「...先生、さっきの話は本当ですか?」
「え、もしかして全部聞こえてた?」
私が小さく頷くと、優翔の顔は一気に赤く染まった。
やっぱり無意識のうちに漏れ出た本音だったのだ。
「嬉しかったです。...ありがとう、先生」
「お願い、忘れて...。流石にさっきのは恥ずかしいというか、聞かれてたと思うと仕事にならなくなるというか」
「そんなふうに思ってもらえてるなんて知らなかった、です」
「からかってるでしょ?」
「...少しだけ」
こうしてふたりで話せるだけで、私は幸せだと感じる。
向き合ってくれて、
支えてくれて、
助けてくれてありがとう。
もしあのとき死んでいたら、こんな景色は見られなかった。
きっと何も感じずに終わっていただろう。
今でも辛くなってやっぱり実行するべきだったかと悩むこともあるけれど、こうしてふたりでいられるならそれだけでいい。
「先生」
「な、何...?」
「好きだよ、優翔」
「...僕も愛してる」
笑顔でそう伝えられて、頬に熱が集まっていくのを感じる。
保健室登校は楽しい。
こうして大切な人といられるから。
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