43 / 71
追憶のシグナル
9件目
しおりを挟む
目の前に無数にいたはずの小さい奴らは1割以下まで減っていた。
「真ん中に道を作るから走れ。いいな?」
「が、頑張ります」
この先輩、どれだけ力が強いんだ。
そんな事を考えながらひた走る。
突っ切っていった先に本体がいる…と思っていたのに、また大量の小さい奴らが現れた。
《ゲア!》
「嘘だろ…」
仕方がないので目の前に来たやつから順番に倒していく。
正直腕に感覚がない。
それくらい拳をおみまいしているはずなのに、数が減っている気がしないのは何故だろう。
「詩乃先輩、聞こえますか!?」
「聞こえてる。どうした?」
「すみません、この奥にもまだ色々いるみたいで…」
噂に興味を持った妖なのか、融合されかけている怪異の一部なのか。
見た目だけで判断できるほど、俺は経験を積んでいない。
「数が多いな。似たような噂の怪異たちが集まってるのと、理性を失いかけた妖ががむしゃらに来ているように見える」
「え、そういうのってどうやったら分かるようになるんですか?」
「慣れかな。あと、ちょっとした音の違い。これは人によって違うみたいで、視え方が違う場合もあるらしい」
「そうなんですね」
音の違いなんてものは分からないので、よく目を凝らして観察してみる。
すると、邪気の出方が少し違うのが少し交ざっていることに気づいた。
「どっちがどっちか分かりませんけど、邪気や妖力の漏れ方が違うんですね」
相手はどんどん集まって巨大化していっている。
このままだと確実にやられてしまう。
「陽向は目がいいんだな。ここを突破できたら本人に会えると信じよう」
「そうですね」
かなり強くなったであろうそれに向かって、勢いよく拳をぶつける。
やっぱりこういう相手の方が俺は得意みたいだ。
相手の体は岩のように砕けていき、さらさらと砂粒くらいの大きさになる。
「すごいな。私じゃきっと倒せなかった」
「俺はパンチっていう単純攻撃しか出せませんから…。詩乃先輩は弓も使えますよね?」
「一応。こういうときに困らなくていいんだ」
奥の方にちらっと視えたのは、間違いなく人間ではない何か。
先輩は矢を用意して、札をくくりつける。
「こうすれば多少道も開けるはずだ」
矢は真っ直ぐ飛んでいき、被弾した何かは悲鳴をあげている。
退魔の炎なんてそう簡単に使える人間がいるはずがない。
…頭ではそう思っていても、今目の前で使われているのは間違いなくそれに該当する。
「詩乃先輩って何者なんですか?」
「何者、か…自分でもよく分かってない。どう名乗ればいいんだろうな」
先輩にも複雑な事情があるのか、苦笑しながらそう答えた。
それ以上何も言えなくて困っていると、今度は俺が尋ねられる。
「陽向は何者なんだ?」
「真ん中に道を作るから走れ。いいな?」
「が、頑張ります」
この先輩、どれだけ力が強いんだ。
そんな事を考えながらひた走る。
突っ切っていった先に本体がいる…と思っていたのに、また大量の小さい奴らが現れた。
《ゲア!》
「嘘だろ…」
仕方がないので目の前に来たやつから順番に倒していく。
正直腕に感覚がない。
それくらい拳をおみまいしているはずなのに、数が減っている気がしないのは何故だろう。
「詩乃先輩、聞こえますか!?」
「聞こえてる。どうした?」
「すみません、この奥にもまだ色々いるみたいで…」
噂に興味を持った妖なのか、融合されかけている怪異の一部なのか。
見た目だけで判断できるほど、俺は経験を積んでいない。
「数が多いな。似たような噂の怪異たちが集まってるのと、理性を失いかけた妖ががむしゃらに来ているように見える」
「え、そういうのってどうやったら分かるようになるんですか?」
「慣れかな。あと、ちょっとした音の違い。これは人によって違うみたいで、視え方が違う場合もあるらしい」
「そうなんですね」
音の違いなんてものは分からないので、よく目を凝らして観察してみる。
すると、邪気の出方が少し違うのが少し交ざっていることに気づいた。
「どっちがどっちか分かりませんけど、邪気や妖力の漏れ方が違うんですね」
相手はどんどん集まって巨大化していっている。
このままだと確実にやられてしまう。
「陽向は目がいいんだな。ここを突破できたら本人に会えると信じよう」
「そうですね」
かなり強くなったであろうそれに向かって、勢いよく拳をぶつける。
やっぱりこういう相手の方が俺は得意みたいだ。
相手の体は岩のように砕けていき、さらさらと砂粒くらいの大きさになる。
「すごいな。私じゃきっと倒せなかった」
「俺はパンチっていう単純攻撃しか出せませんから…。詩乃先輩は弓も使えますよね?」
「一応。こういうときに困らなくていいんだ」
奥の方にちらっと視えたのは、間違いなく人間ではない何か。
先輩は矢を用意して、札をくくりつける。
「こうすれば多少道も開けるはずだ」
矢は真っ直ぐ飛んでいき、被弾した何かは悲鳴をあげている。
退魔の炎なんてそう簡単に使える人間がいるはずがない。
…頭ではそう思っていても、今目の前で使われているのは間違いなくそれに該当する。
「詩乃先輩って何者なんですか?」
「何者、か…自分でもよく分かってない。どう名乗ればいいんだろうな」
先輩にも複雑な事情があるのか、苦笑しながらそう答えた。
それ以上何も言えなくて困っていると、今度は俺が尋ねられる。
「陽向は何者なんだ?」
0
お気に入りに追加
3
あなたにおすすめの小説
令嬢の名門女学校で、パンツを初めて履くことになりました
フルーツパフェ
大衆娯楽
とある事件を受けて、財閥のご令嬢が数多く通う女学校で校則が改訂された。
曰く、全校生徒はパンツを履くこと。
生徒の安全を確保するための善意で制定されたこの校則だが、学校側の意図に反して事態は思わぬ方向に?
史実上の事件を元に描かれた近代歴史小説。
女子高生は卒業間近の先輩に告白する。全裸で。
矢木羽研
恋愛
図書委員の女子高生(小柄ちっぱい眼鏡)が、卒業間近の先輩男子に告白します。全裸で。
女の子が裸になるだけの話。それ以上の行為はありません。
取って付けたようなバレンタインネタあり。
カクヨムでも同内容で公開しています。
夜紅前日譚
黒蝶
キャラ文芸
母親が亡くなってからというもの、ひたすら鍛錬に精を出してきた折原詩乃。
師匠である神宮寺義政(じんぐうじ よしまさ)から様々な知識を得て、我流で技を編み出していく。
そんなある日、神宮寺本家に見つかってしまい…?
夜紅誕生秘話、前日譚ここにあり。
※この作品は『夜紅の憲兵姫』の過去篇です。
本作品からでも楽しめる内容になっています。
ママと中学生の僕
キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。
社長の奴隷
星野しずく
恋愛
セクシー系の商品を販売するネットショップを経営する若手イケメン社長、茂手木寛成のもとで、大のイケメン好き藤巻美緒は仕事と称して、毎日エッチな人体実験をされていた。そんな二人だけの空間にある日、こちらもイケメン大学生である信楽誠之助がアルバイトとして入社する。ただでさえ異常な空間だった社内は、信楽が入ったことでさらに混乱を極めていくことに・・・。(途中、ごくごく軽いBL要素が入ります。念のため)
校外学習の帰りに渋滞に巻き込まれた女子高生たちが小さな公園のトイレをみんなで使う話
赤髪命
大衆娯楽
少し田舎の土地にある女子校、華水黄杏女学園の1年生のあるクラスの乗ったバスが校外学習の帰りに渋滞に巻き込まれてしまい、急遽トイレ休憩のために立ち寄った小さな公園のトイレでクラスの女子がトイレを済ませる話です(分かりにくくてすみません。詳しくは本文を読んで下さい)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる