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Until the day when I get married.-Light of a new request-
第132話
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「これ、何?」
「ポリッジだ。食べたことはあるか?」
私は首を横にふった。
「...そうか。口開けろ」
「もぐもぐ...美味しい」
「そうか」
どうして私が食べているところを見て、この人は笑顔になるんだろう。
とても不思議だ。
「カムイから連絡があった。...明後日出掛けるから、準備をしておくようにと」
「お出掛け?どこに?」
「ついてからのお楽しみらしい」
「分かった」
「具合が悪かったらすぐに言え」
「分かった」
私は怖くなった。
また捨てられるかもしれない。
なのに、どうしてこのぬくもりを突き放せないの?
...自分で自分が分からない。
ー**ー
「メル、おはよう」
「おはようございます...」
二日後、予定通り出掛けることになった俺たちは、昼食の準備をしている。
『ピクニックがしたい』...メルの意見だが、俺は賛成だ。
いきなり遠出するのはよくない。
それに、アイリスが出掛けるのを拒否すれば意味がない。
メルにも負担がかからないようにと考えた結果、行くのはアーケードに近い場所にある、ごく普通の公園へ行くことになった。
「カムイ、中身はこれでいいでしょうか...?」
「うん、それくらい冷めていれば、パンが腐ることもないと思う。ありがとう」
俺が頭を撫でると、メルはくすぐったそうにしていた。
ー*ー
カムイが褒めてくれるのはとても嬉しい。
(でも、もっとお役にたちたいです)
私は紅茶を淹れようとした。
しかしそれに気づいたカムイが止めにきた。
「腕の怪我に響いちゃうでしょ?だから座ってて?」
「でも私は、カムイのお役にたちたいんです。私には、これくらいしかできませんから」
「俺はメルが側にいてくれるだけでいいんだけどな...」
「...っ」
私は恥ずかしくなってしまい、思わず視線をテーブルに落とした。
「メルは照れ屋さんだね」
「あ、あんまり意地悪言わないでください」
「ごめんごめん。さあ、お姫様。迎えの馬車がきたみたいだよ」
「は、はい!」
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
「お二人とも、おはようございます」
「ああ」
「おはよう」
「アイリスさん、元気になられたんですね!よかったです!」
「...ありがとう」
アイリスさんはやっぱり緊張ぎみだったが、それでも、前よりは話せている気がする。
出会って数日しか経っていないはずなのに、なんだか親近感がわいた。
「馬車でお迎えとは、珍しいな」
「メルにもアイリスにも、負担をかけられないからね」
そんなふうに考えてくれていたなんて、私は知らなかった。
(結局カムイにはお世話になりっぱなしです...)
ー**ー
「アイリス」
「...」
「寝ているみたいですね」
しばらく馬車に揺られて辿り着いたのは、ごく普通の公園だ。
「馬車に乗るのがはじめてだったみたいだね」
「そうですね」
メルが小さい声で話しているのを見て、やはり可愛いと思った。
「起こさないでおきたいが...アイリス」
「...?ここどこ?」
アイリスは首を傾げている。
「公園です」
「きたのははじめて?」
アイリスはこくりと頷く。
「ここって...夏はどうやって遊ぶんですか?」
(そうか、メルも夏にきたのははじめてか)
「あれはやったことある?」
俺が指差したのは、ブランコだ。
案外頑丈にできているらしく、ベンと俺が二人乗りしても壊れなかった。
「やってみる?」
「はい!」
「じゃあ、エリックはアイリスと乗ってね」
「ああ」
エリックがアイリスに手を差し伸べる。
アイリスは戸惑いながら、エリックの手をとっていた。
(もう少し仲良くなってくれればいいけど...)
ー*ー
「いくよ」
「は、はい」
体が密着した状態で前後に揺れる初めての乗り物は、なんだか緊張した。
(心臓のばくばくがカムイにも伝わってしまいそうです!)
「酔ったりしてない?」
「平気です」
「腕は、痛まない?」
カムイが申し訳なさそうに私に聞いた。
「カムイのお陰で全然痛くないです」
「それはよかった」
カムイの安心したような声が後ろから聞こえて、私もほっとした。
だが、耳の後ろで話されるのは、なんだか落ち着かない。
「メル、帰ったらいっぱい抱きしめてもいい?」
低い声で耳元で囁かれると、私は断れない。
「分かり、ました...」
「ありがとう」
私は緊張のせいか、そう答えるのがやっとだった。
「そろそろ止めて、お昼にしようか」
「はい!」
カムイがブランコを上手に止めてくれる。
「...少し、二人で待っていようか」
カムイの視線の先を見ると、エリックさんとアイリスさんが緊張した様子で話しながらブランコをこいでいた。
「お二人は、すごくいい雰囲気ですね」
「そうだね。俺たちはランチの準備をしようか」
「はい!」
私たちは日陰で二人を見ながら、すぐにランチが食べられるように準備した。
(エリックさんとアイリスさんは、喜んでくださるでしょうか...?)
「ポリッジだ。食べたことはあるか?」
私は首を横にふった。
「...そうか。口開けろ」
「もぐもぐ...美味しい」
「そうか」
どうして私が食べているところを見て、この人は笑顔になるんだろう。
とても不思議だ。
「カムイから連絡があった。...明後日出掛けるから、準備をしておくようにと」
「お出掛け?どこに?」
「ついてからのお楽しみらしい」
「分かった」
「具合が悪かったらすぐに言え」
「分かった」
私は怖くなった。
また捨てられるかもしれない。
なのに、どうしてこのぬくもりを突き放せないの?
...自分で自分が分からない。
ー**ー
「メル、おはよう」
「おはようございます...」
二日後、予定通り出掛けることになった俺たちは、昼食の準備をしている。
『ピクニックがしたい』...メルの意見だが、俺は賛成だ。
いきなり遠出するのはよくない。
それに、アイリスが出掛けるのを拒否すれば意味がない。
メルにも負担がかからないようにと考えた結果、行くのはアーケードに近い場所にある、ごく普通の公園へ行くことになった。
「カムイ、中身はこれでいいでしょうか...?」
「うん、それくらい冷めていれば、パンが腐ることもないと思う。ありがとう」
俺が頭を撫でると、メルはくすぐったそうにしていた。
ー*ー
カムイが褒めてくれるのはとても嬉しい。
(でも、もっとお役にたちたいです)
私は紅茶を淹れようとした。
しかしそれに気づいたカムイが止めにきた。
「腕の怪我に響いちゃうでしょ?だから座ってて?」
「でも私は、カムイのお役にたちたいんです。私には、これくらいしかできませんから」
「俺はメルが側にいてくれるだけでいいんだけどな...」
「...っ」
私は恥ずかしくなってしまい、思わず視線をテーブルに落とした。
「メルは照れ屋さんだね」
「あ、あんまり意地悪言わないでください」
「ごめんごめん。さあ、お姫様。迎えの馬車がきたみたいだよ」
「は、はい!」
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「お二人とも、おはようございます」
「ああ」
「おはよう」
「アイリスさん、元気になられたんですね!よかったです!」
「...ありがとう」
アイリスさんはやっぱり緊張ぎみだったが、それでも、前よりは話せている気がする。
出会って数日しか経っていないはずなのに、なんだか親近感がわいた。
「馬車でお迎えとは、珍しいな」
「メルにもアイリスにも、負担をかけられないからね」
そんなふうに考えてくれていたなんて、私は知らなかった。
(結局カムイにはお世話になりっぱなしです...)
ー**ー
「アイリス」
「...」
「寝ているみたいですね」
しばらく馬車に揺られて辿り着いたのは、ごく普通の公園だ。
「馬車に乗るのがはじめてだったみたいだね」
「そうですね」
メルが小さい声で話しているのを見て、やはり可愛いと思った。
「起こさないでおきたいが...アイリス」
「...?ここどこ?」
アイリスは首を傾げている。
「公園です」
「きたのははじめて?」
アイリスはこくりと頷く。
「ここって...夏はどうやって遊ぶんですか?」
(そうか、メルも夏にきたのははじめてか)
「あれはやったことある?」
俺が指差したのは、ブランコだ。
案外頑丈にできているらしく、ベンと俺が二人乗りしても壊れなかった。
「やってみる?」
「はい!」
「じゃあ、エリックはアイリスと乗ってね」
「ああ」
エリックがアイリスに手を差し伸べる。
アイリスは戸惑いながら、エリックの手をとっていた。
(もう少し仲良くなってくれればいいけど...)
ー*ー
「いくよ」
「は、はい」
体が密着した状態で前後に揺れる初めての乗り物は、なんだか緊張した。
(心臓のばくばくがカムイにも伝わってしまいそうです!)
「酔ったりしてない?」
「平気です」
「腕は、痛まない?」
カムイが申し訳なさそうに私に聞いた。
「カムイのお陰で全然痛くないです」
「それはよかった」
カムイの安心したような声が後ろから聞こえて、私もほっとした。
だが、耳の後ろで話されるのは、なんだか落ち着かない。
「メル、帰ったらいっぱい抱きしめてもいい?」
低い声で耳元で囁かれると、私は断れない。
「分かり、ました...」
「ありがとう」
私は緊張のせいか、そう答えるのがやっとだった。
「そろそろ止めて、お昼にしようか」
「はい!」
カムイがブランコを上手に止めてくれる。
「...少し、二人で待っていようか」
カムイの視線の先を見ると、エリックさんとアイリスさんが緊張した様子で話しながらブランコをこいでいた。
「お二人は、すごくいい雰囲気ですね」
「そうだね。俺たちはランチの準備をしようか」
「はい!」
私たちは日陰で二人を見ながら、すぐにランチが食べられるように準備した。
(エリックさんとアイリスさんは、喜んでくださるでしょうか...?)
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