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Until the day when I get engaged.-The light which comes over darkness-
閑話『Story of a Herculean strength girl』Ⅰ
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「どうしてっ!」
あたしは叫ぶ。
「落ち着くだよ!今あそこに行ったら、折角逃がしてくれたご家族のためにならないだよ」
必死にあたしを押さえる『天性の運び屋』。
これは、あたしの物語...。
《ナタリー目線》
「ナタリー!また壁に穴を開けおって!」
「ごめんなさい!」
あたしは小さい頃からずっと怪力というものらしく、インク瓶を軽く持ったつもりが入れ物を破壊してインクまみれにしてしまったり、今日のように壁や像を破壊してしまったりしている。
「まったく、これから商談だというのに...」
「本当にごめんなさい、お父様」
「ナタリー、一応私たちは上層階級の人間なんだからね」
「はい、お母様...」
あたしは学校に遅刻しそうになっていたことを思い出す。
「お姉様、行ってきます」
「いってらっしゃい...」
姉のルナシーは身体が弱く、あまり学校に行けていなかった。
あたしは上層階級の人たちが通う学校へは行かず、普通の学校に行っていた。
(お金持ちの人たちよりもそっちの方が話が合うもの)
あたしは学校へと急ぐ...。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
「おはよう、エリック!」
「...おう」
「数学教えてよ」
「おう」
エリックはそっけないけれど、一緒にいることが多かった。
あたしが学校の天使像を破壊してしまった時、エリックはあたしを男だと思っていたらしい。
「ナタリー、俺の腕を折るつもりか?」
あたしはつい、エリックの腕を強く握りすぎていた。
「ごめん!」
「...で?どこの問題だ」
「こことここと...」
「多いな、始業のベルまでに終わるといいが」
エリックに苦笑されてしまった。
その時、エリックが耳につけているものから音声が聞こえてくる。
『エリック、今学校?』
「ああ。何かあったのか?」
『麻薬の密売ルートを見つけた。今、俺が囮で犯人に近づいてる』
「カムイ、早まるな」
『こいつらは両親の件と関係があるのかな...ふふっ』
「すぐにそこに行くから場所を教えろ。お前にやらせたら何人殺ってしまうか分からない」
『酷いな、まだ誰も殺してないよ?』
「では訂正しよう。...何百人と怪我人が出るか分からないから動くな。それと...念のため、『天性の運び屋』にも連絡をいれておけ」
『もう来てるよ。証拠の麻薬を運び出すんだってはりきってる』
「...場所は?...了解した」
(『カムイ』『天性の運び屋』...誰なんだろう?)
「エリック、もしかして」
「悪い、仕事だ」
エリックはあたしと同い年だが、もうすでに立派な刑事だ。
中学の頃からもうすでに仕事をしていたらしい。
普通はそういうものなのだろうか?
「先生に言っておいてくれ」
エリックは行ってしまった。
...エリックがいない日はつまらない。
あたしも帰ろうと思い、立ちあがる。
「体調が悪いので帰ります。それとエリックは用事でお休みみたいです」
あたしは先生にそう告げて帰った。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
家に入ると、怒号が聞こえた。
「おまえは今日でクビだ!」
使用人の、ジェイソンだった。
「待ってくださいお父様。ジェイソンは毎日必死に」
「五億の絵画を壊したのだぞ⁉許せるはずがない!」
「そんな...」
あたしは父の考えが理解できないことが多い。
お金より大切なものがあるはずなのに...。
ジェイソンは出ていってしまった。
あたしの話を、たくさん聞いてくれる人だったのに。
「おまえ、学校はどうした」
「単位制だからもう今日はお仕舞いだよ」
本当は数学の授業があったけれど、あたしは嘘をついた。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
それから数日...。
あたしは突然父から聞かされた。
「ナタリー、この屋敷から逃げるぞ。勿論他の者たちもだがまずはおまえからだ。おまえならきっと、一人でも逃げられるからな」
「どうして逃げるの?」
「どうやらこの屋敷の近くに、工場ができるらしい。そんなことになれば、ルナシーの体によくない。おまえは先に、ある者に運ばせる手はずになっている」
「分かったわ」
父と母と姉...。あたしはいなくてもいいんじゃないかと思えるような状況だった。
あたしはお姫様らしくないから要らないのだと、そう思っていた。
ルナシーの体が弱いから仕方ないとは分かっていたけれど、どうしても無理だった。
「あたしを除け者にしたいならそう言えばいいのに」
あたしはそう呟いて、出ていく準備をした。
《ベン目線》
おいらはとあるお屋敷のご令嬢を『運ぶ』依頼を受けた。
「ベン、その仕事は早く終わらせた方がいい」
「どういうことだあ?」
「なんだか嫌な予感がするんだ。とてつもなく、嫌な予感が...」
カムイの勘はとてもよく当たる。
「分かっただよ。その代わり...カムイも次の仕事での無理は禁物だよ?いくらエリックがいるからと言って、安全とは言い切れないだよ」
「そうだね。ベンのお仕事場所の近くだから、俺とエリックを『運んで』くれないか?」
カムイは真面目すぎると正直おいらは思っていた。
「分かっただよ」
おいらはこの時知らなかった。
...この日から運命の歯車が狂いだすことを。
あたしは叫ぶ。
「落ち着くだよ!今あそこに行ったら、折角逃がしてくれたご家族のためにならないだよ」
必死にあたしを押さえる『天性の運び屋』。
これは、あたしの物語...。
《ナタリー目線》
「ナタリー!また壁に穴を開けおって!」
「ごめんなさい!」
あたしは小さい頃からずっと怪力というものらしく、インク瓶を軽く持ったつもりが入れ物を破壊してインクまみれにしてしまったり、今日のように壁や像を破壊してしまったりしている。
「まったく、これから商談だというのに...」
「本当にごめんなさい、お父様」
「ナタリー、一応私たちは上層階級の人間なんだからね」
「はい、お母様...」
あたしは学校に遅刻しそうになっていたことを思い出す。
「お姉様、行ってきます」
「いってらっしゃい...」
姉のルナシーは身体が弱く、あまり学校に行けていなかった。
あたしは上層階級の人たちが通う学校へは行かず、普通の学校に行っていた。
(お金持ちの人たちよりもそっちの方が話が合うもの)
あたしは学校へと急ぐ...。
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「おはよう、エリック!」
「...おう」
「数学教えてよ」
「おう」
エリックはそっけないけれど、一緒にいることが多かった。
あたしが学校の天使像を破壊してしまった時、エリックはあたしを男だと思っていたらしい。
「ナタリー、俺の腕を折るつもりか?」
あたしはつい、エリックの腕を強く握りすぎていた。
「ごめん!」
「...で?どこの問題だ」
「こことここと...」
「多いな、始業のベルまでに終わるといいが」
エリックに苦笑されてしまった。
その時、エリックが耳につけているものから音声が聞こえてくる。
『エリック、今学校?』
「ああ。何かあったのか?」
『麻薬の密売ルートを見つけた。今、俺が囮で犯人に近づいてる』
「カムイ、早まるな」
『こいつらは両親の件と関係があるのかな...ふふっ』
「すぐにそこに行くから場所を教えろ。お前にやらせたら何人殺ってしまうか分からない」
『酷いな、まだ誰も殺してないよ?』
「では訂正しよう。...何百人と怪我人が出るか分からないから動くな。それと...念のため、『天性の運び屋』にも連絡をいれておけ」
『もう来てるよ。証拠の麻薬を運び出すんだってはりきってる』
「...場所は?...了解した」
(『カムイ』『天性の運び屋』...誰なんだろう?)
「エリック、もしかして」
「悪い、仕事だ」
エリックはあたしと同い年だが、もうすでに立派な刑事だ。
中学の頃からもうすでに仕事をしていたらしい。
普通はそういうものなのだろうか?
「先生に言っておいてくれ」
エリックは行ってしまった。
...エリックがいない日はつまらない。
あたしも帰ろうと思い、立ちあがる。
「体調が悪いので帰ります。それとエリックは用事でお休みみたいです」
あたしは先生にそう告げて帰った。
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家に入ると、怒号が聞こえた。
「おまえは今日でクビだ!」
使用人の、ジェイソンだった。
「待ってくださいお父様。ジェイソンは毎日必死に」
「五億の絵画を壊したのだぞ⁉許せるはずがない!」
「そんな...」
あたしは父の考えが理解できないことが多い。
お金より大切なものがあるはずなのに...。
ジェイソンは出ていってしまった。
あたしの話を、たくさん聞いてくれる人だったのに。
「おまえ、学校はどうした」
「単位制だからもう今日はお仕舞いだよ」
本当は数学の授業があったけれど、あたしは嘘をついた。
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それから数日...。
あたしは突然父から聞かされた。
「ナタリー、この屋敷から逃げるぞ。勿論他の者たちもだがまずはおまえからだ。おまえならきっと、一人でも逃げられるからな」
「どうして逃げるの?」
「どうやらこの屋敷の近くに、工場ができるらしい。そんなことになれば、ルナシーの体によくない。おまえは先に、ある者に運ばせる手はずになっている」
「分かったわ」
父と母と姉...。あたしはいなくてもいいんじゃないかと思えるような状況だった。
あたしはお姫様らしくないから要らないのだと、そう思っていた。
ルナシーの体が弱いから仕方ないとは分かっていたけれど、どうしても無理だった。
「あたしを除け者にしたいならそう言えばいいのに」
あたしはそう呟いて、出ていく準備をした。
《ベン目線》
おいらはとあるお屋敷のご令嬢を『運ぶ』依頼を受けた。
「ベン、その仕事は早く終わらせた方がいい」
「どういうことだあ?」
「なんだか嫌な予感がするんだ。とてつもなく、嫌な予感が...」
カムイの勘はとてもよく当たる。
「分かっただよ。その代わり...カムイも次の仕事での無理は禁物だよ?いくらエリックがいるからと言って、安全とは言い切れないだよ」
「そうだね。ベンのお仕事場所の近くだから、俺とエリックを『運んで』くれないか?」
カムイは真面目すぎると正直おいらは思っていた。
「分かっただよ」
おいらはこの時知らなかった。
...この日から運命の歯車が狂いだすことを。
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