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終幕
ブレイクタイム★
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「...千夜」
「どうしたの?」
「これ、ありがとな」
言ってしまっていいものか分からなかったが、丁寧に包帯が巻かれた腕を見せる。
「私のせい、だから...」
気にするなと言っても、千夜はずっと落ちこんだままだろう。
幸い、もう貧血気味ではなさそうなので目の前の手をとる。
「真昼...?」
「行きたいところがある」
そうして辿り着いたのは、想い出の場所。
「...ここも、綺麗」
「そうだな」
先日の海とは違う場所。
...俺が告白した場所だ。
「こっちなら人がいないから」
「え、あ、うん...」
こうして連れ出したのは、ただ笑ってほしかったから。
周りはくだらないと嗤うかもしれないが、本当にそれだけだ。
「...水、冷たいね」
「そうだな」
そんな話をしながら、ただ海を見つめる。
「今日のシフト、何時から?」
「真昼と一緒だよ」
「何時だったか覚えてないな...」
「...あと二時間後」
本当に忘れていた俺は、千夜の方を見つめる。
「二時間後?」
「うん。...本当に覚えてなかったんだね」
千夜は少しだけ楽しそうに笑う。
そうだ、これだけあればいい。
(まずいな、そんなに時間がなかったとは...)
この後ももう少し振り回すつもりだったのに、それどころではない。
「真昼」
「どうした?」
「...ありがとう」
「別に特別なことは何もしてない」
しばらくそんな話をしていると、千夜が立ちあがる。
「折角だし、ちょっとだけ、その...」
言い終わる前にそっと手を差し出す。
「はぐれないように。...屋台、行きたいんだろ?」
「うん」
千夜は弱い力で握りかえしてくれる。
ずっとこんな時間が続けばいいのになんて考えしまう俺は、もしかしたら浮かれているのかもしれない。
「御舟、佐藤」
「おはようございます」
昼間のカフェは相変わらず混雑していて、俺も千夜もすぐに目の前の前の仕事に追われることになった。
そうこうしているうちに、もう一日が終わろうとしている。
「それじゃあ、お疲れ様!」
店長の元気な号令とともに解散する。
今日も鍵は閉めておくと話して最後まで二人で残る。
「...折角だし、たまにはどこかへ食べに行くか」
「うん」
その一言に、楽しみだという感覚が混ざっているのが分かる。
どの店にしようか話していると、扉の前にまたあの人物が立っていた。
「舞、花...」
「どうしたい?」
「私、私は...」
追い返そうとしたとき、震える手で引き留められる。
「千夜?」
「頑張る、から。だから、ここで待ってて」
誰にも見えないようにしながら、そっと口づける。
「...無理だと思ったらすぐ呼べ」
千夜は頷いて、一人店を出る。
(今日は一人できてる。...だったら、俺にできることはこれだけだ)
「どうしたの?」
「これ、ありがとな」
言ってしまっていいものか分からなかったが、丁寧に包帯が巻かれた腕を見せる。
「私のせい、だから...」
気にするなと言っても、千夜はずっと落ちこんだままだろう。
幸い、もう貧血気味ではなさそうなので目の前の手をとる。
「真昼...?」
「行きたいところがある」
そうして辿り着いたのは、想い出の場所。
「...ここも、綺麗」
「そうだな」
先日の海とは違う場所。
...俺が告白した場所だ。
「こっちなら人がいないから」
「え、あ、うん...」
こうして連れ出したのは、ただ笑ってほしかったから。
周りはくだらないと嗤うかもしれないが、本当にそれだけだ。
「...水、冷たいね」
「そうだな」
そんな話をしながら、ただ海を見つめる。
「今日のシフト、何時から?」
「真昼と一緒だよ」
「何時だったか覚えてないな...」
「...あと二時間後」
本当に忘れていた俺は、千夜の方を見つめる。
「二時間後?」
「うん。...本当に覚えてなかったんだね」
千夜は少しだけ楽しそうに笑う。
そうだ、これだけあればいい。
(まずいな、そんなに時間がなかったとは...)
この後ももう少し振り回すつもりだったのに、それどころではない。
「真昼」
「どうした?」
「...ありがとう」
「別に特別なことは何もしてない」
しばらくそんな話をしていると、千夜が立ちあがる。
「折角だし、ちょっとだけ、その...」
言い終わる前にそっと手を差し出す。
「はぐれないように。...屋台、行きたいんだろ?」
「うん」
千夜は弱い力で握りかえしてくれる。
ずっとこんな時間が続けばいいのになんて考えしまう俺は、もしかしたら浮かれているのかもしれない。
「御舟、佐藤」
「おはようございます」
昼間のカフェは相変わらず混雑していて、俺も千夜もすぐに目の前の前の仕事に追われることになった。
そうこうしているうちに、もう一日が終わろうとしている。
「それじゃあ、お疲れ様!」
店長の元気な号令とともに解散する。
今日も鍵は閉めておくと話して最後まで二人で残る。
「...折角だし、たまにはどこかへ食べに行くか」
「うん」
その一言に、楽しみだという感覚が混ざっているのが分かる。
どの店にしようか話していると、扉の前にまたあの人物が立っていた。
「舞、花...」
「どうしたい?」
「私、私は...」
追い返そうとしたとき、震える手で引き留められる。
「千夜?」
「頑張る、から。だから、ここで待ってて」
誰にも見えないようにしながら、そっと口づける。
「...無理だと思ったらすぐ呼べ」
千夜は頷いて、一人店を出る。
(今日は一人できてる。...だったら、俺にできることはこれだけだ)
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