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終幕
招きたかった客★
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「千夜、大丈夫か?」
「う、うん...」
休憩が終わった後も合間合間にそんな話をしながら、できることを淡々とこなす。
「...っ」
耐えていることは見ていれば分かる。
何もできないのが本当に歯痒い。
(...もうすぐ時間か)
そうこうしているうちに、いつの間にか空は茜色に染まっていた。
千夜は疲れているように見えるが、なんとか持ちこたえたようだった。
「今日はこれで閉店、なんだけど...御舟、佐藤、お客様だ」
二人共通の相手なんて、一人しかいない。
「染さん...?」
「まあ、そうだろうな。店長、少しだけここかりても...」
「ああ、勿論。ただ、戸締まりだけはしっかりするように」
店長には頭があがらない...そう思いつつ、エプロンを脱いでいつもの部屋へと向かう。
「待たせたな」
「おう、佐藤ちゃんも御舟も元気そうでよかった」
「染さん、この間は、その...」
「具合悪いときは、誰かに頼っていいもんだと俺は思うよ」
謝られる前に、染谷はすぐ手を打った。
千夜は何が起きたのか分からない様子だったが、その後は温かい笑顔を染谷に向けていた。
(...染谷相手に嫉妬しそうだ)
そう思うほど、このときの笑顔は輝いていた。
「...二人とも、本当に仲いいよな」
「え、あ、その...」
少し気を抜いていると、染谷は恥ずかしがる千夜をからかいはじめた。
「佐藤ちゃんは、御舟が側にいるといつだって楽しそうに笑ってるし...御舟も、いい顔で佐藤ちゃんのこと話してくれるし」
「そうなんですか?」
にやにやしている染谷と、千夜の目がきらきらと輝くのが見える。
...こうなってしまっては、もう千夜を止めることはできない。
「たとえば、」
「染谷、それ以上喋ったら...きゅうり山盛り持ってきてやる」
「悪かったって、それだけは勘弁...!」
「...染さん、きゅうりが苦手なの?」
一瞬、沈黙が流れる。
「そうだ、そいつはきゅうりだけは食べられないんだ」
「好き嫌いはない方がいいけど、食べられないものの一つや二つ誰にでもあるよね」
「佐藤ちゃん、天使...!」
こうしてわいわい話すひとときが、堪らなく楽しい。
...ずっと続けばいいなんて、らしくないことを考えることもある。
それでもいいと思うのは、こいつらがいるからだろうか。
「...ほら、そろそろ暗くなるから行くぞ」
「そうだな」
「うん。今日も話せて楽しかった」
そんな話をしながら、戸締まりの確認をしっかりとして...入り口へ向かおうとする。
そのとき、複数人の影が見えた。
(あいつらは...!)
「う、うん...」
休憩が終わった後も合間合間にそんな話をしながら、できることを淡々とこなす。
「...っ」
耐えていることは見ていれば分かる。
何もできないのが本当に歯痒い。
(...もうすぐ時間か)
そうこうしているうちに、いつの間にか空は茜色に染まっていた。
千夜は疲れているように見えるが、なんとか持ちこたえたようだった。
「今日はこれで閉店、なんだけど...御舟、佐藤、お客様だ」
二人共通の相手なんて、一人しかいない。
「染さん...?」
「まあ、そうだろうな。店長、少しだけここかりても...」
「ああ、勿論。ただ、戸締まりだけはしっかりするように」
店長には頭があがらない...そう思いつつ、エプロンを脱いでいつもの部屋へと向かう。
「待たせたな」
「おう、佐藤ちゃんも御舟も元気そうでよかった」
「染さん、この間は、その...」
「具合悪いときは、誰かに頼っていいもんだと俺は思うよ」
謝られる前に、染谷はすぐ手を打った。
千夜は何が起きたのか分からない様子だったが、その後は温かい笑顔を染谷に向けていた。
(...染谷相手に嫉妬しそうだ)
そう思うほど、このときの笑顔は輝いていた。
「...二人とも、本当に仲いいよな」
「え、あ、その...」
少し気を抜いていると、染谷は恥ずかしがる千夜をからかいはじめた。
「佐藤ちゃんは、御舟が側にいるといつだって楽しそうに笑ってるし...御舟も、いい顔で佐藤ちゃんのこと話してくれるし」
「そうなんですか?」
にやにやしている染谷と、千夜の目がきらきらと輝くのが見える。
...こうなってしまっては、もう千夜を止めることはできない。
「たとえば、」
「染谷、それ以上喋ったら...きゅうり山盛り持ってきてやる」
「悪かったって、それだけは勘弁...!」
「...染さん、きゅうりが苦手なの?」
一瞬、沈黙が流れる。
「そうだ、そいつはきゅうりだけは食べられないんだ」
「好き嫌いはない方がいいけど、食べられないものの一つや二つ誰にでもあるよね」
「佐藤ちゃん、天使...!」
こうしてわいわい話すひとときが、堪らなく楽しい。
...ずっと続けばいいなんて、らしくないことを考えることもある。
それでもいいと思うのは、こいつらがいるからだろうか。
「...ほら、そろそろ暗くなるから行くぞ」
「そうだな」
「うん。今日も話せて楽しかった」
そんな話をしながら、戸締まりの確認をしっかりとして...入り口へ向かおうとする。
そのとき、複数人の影が見えた。
(あいつらは...!)
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