峽(はざま)

黒蝶

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終幕

久しぶりの休日☆

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この日はたまたま二人の休みが重なって、出掛けようという話になった。
「どこか行きたいところはあるか?」
「どこだっていい。...真昼と一緒なら、きっとどこでも楽しいから」
「そう言われてもな...」
真昼を困らせてしまったのではないかと思っていると、頭をぽんぽんと撫でられた。
「そんな顔しなくても大丈夫だ。...折角だし、また海にでも行くか」
頷こうとして、動きを止める。
前に行ったときは、水が冷たくて人もきていなかった。
...遊泳禁止期間だった。
けれど、今は違う。
人が多いと、きっと真昼に迷惑をかけてしまう。
それに何より、もしも舞花たちに会ってしまったら...。
「人がこない場所に行けばいい。穴場を知ってるから、そこに行こう」
「ごめんなさい...」
いつも気を遣わせてしまう。
...真昼を疲れさせてしまってはいないだろうか。
「俺がそうしたかっただけだから、うだうだ考えるなよ?」
「...うん。ありがとう」
「それじゃあ、水着持ってここに集合な」
「う、うん」
人前で水着を着るのはいつ以来だろう。
とはいっても、本格的なビキニではなく、上にパーカーを羽織るつもりだ。
海は好きだ。
...昔から好きだった。
だからよく行ったし、それなりに泳げる。
けれどそれは、人が泳いでいない夜の話で...昼間に行くのは中学校のプールの授業以来なかったかもしれない。
「それじゃあ、行くか」
「そうだね」
真昼が連れてきてくれた場所は、本当に誰もいなかった。
「どうして真昼はこんな綺麗な場所を沢山知ってるの?」
「なんでって言われてもな...。この場所を知ってたのは、ここでよく監視員のバイトしてたから」
「そうなんだ...」
真昼についてまだまだ知らないことがあるんだと、痛感した。
(もっと教えてほしいなんて言ったら、欲張りかな...)
「どうした?」
「ううん、なんでもない。私、ちょっと着替えてくる」
そんな思いを知られたくなくて...真昼に心配をかけたくなくて、私はその場を後にする。
「...っ、はあ」
家で一応吸血してきたのに、もう吸いたくて仕方がなくなっている。
こんなところで欲求が抑えられなくなったら、全部を台無しにしてしまう。
(飴、沢山持ってきておいてよかった)
水着に着替えて、一気に噛み砕いて気を紛らわせる。
今日が終わるまでなんとか持たせられるように、祈ることしかできない。
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