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第3幕
色違いのキーケース☆
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「次はどこをまわりたい?」
こんなときも真昼はとても優しくて、ついじっと見つめてしまう。
「どうかしたのか?」
「ううん、なんでもない。次は向こうにあるテントに入ってみたい」
「なら、そうしよう」
結局、さっきのお店ではいいものを見つけることができなかった。
(今度こそ見つけたいな...)
「まさか写真撮影できるスペースだったとはな」
「...そうだね」
お店ではなく、ショーの為のものだったらしい。
しばらく歩いていると、なんだかいい香りがしてきた。
「真昼、私アップルパイ買いたい」
「なら俺も何か買うかな」
少しの間並んで、目当てのものを手にする。
(相変わらず温かいことしか分からないな...)
そう思っているうちに、短いアップルパイを完食してしまっていた。
「...ん、美味いな」
チュロスを片手に真昼が楽しそうに笑っている。
こんなにも穏やかな時間は、もしかすると久しぶりかもしれない。
「おまえも食べる?」
「え...っ!」
次の瞬間、口のなかにさくさくとした食感が広がる。
「真昼、これは、その...」
「どうしたんだそんなに焦っ、て...」
私が言いたいことを察知したのか、真昼はみるみる顔を赤く染めた。
「ごめん、完全無自覚...」
「嫌だったわけじゃないから、その...気にしないで」
二人で顔を赤くしていると、目の前によさそうなお店があることに気づく。
「真昼が食べ終わったら、あそこにも行きたい」
「おまえは本当に雑貨屋が好きだな。...もうちょっとで終わるから待っててくれ」
「うん」
その後、約束どおり真昼はつきあってくれた。
そのなかで、ようやくいいものを見つけられた。
「...これなら大丈夫かも」
それは、見た目は普通のキーケース。
けれどよく見ると、そこには小さくテディベアが刺繍されている。
(...私も買おうかな)
真昼にはこげ茶色の、私はクリーム系の色のものをレジに持っていく。
近くのレジで真昼が何かを買っているのが見えたけれど、私の方が早くお会計が終わったらしかった。
「真昼」
「悪い、待たせた」
二人で並んでお店を出る。
空は紺碧色に染まっていて、渡すなら今しかないと思った。
「真昼、よかったら受け取ってほしい」
「これって、キーケースか。...ありがとな」
頭をぽんぽんと撫でられて、どきどきが止まらなくなる。
「わ、私も色違いを買ったから」
鍵につけたものを見せると、真昼はふっと笑ってポケットから鍵を取り出した。
「俺も今すぐつける」
気に入ってもらえたようで本当によかったと思っていると、遠くで花火が打ちあがる音がした。
「...もう少しデートを続けたい。俺はそうしたいけど、おまえはどう思う?」
こんなときも真昼はとても優しくて、ついじっと見つめてしまう。
「どうかしたのか?」
「ううん、なんでもない。次は向こうにあるテントに入ってみたい」
「なら、そうしよう」
結局、さっきのお店ではいいものを見つけることができなかった。
(今度こそ見つけたいな...)
「まさか写真撮影できるスペースだったとはな」
「...そうだね」
お店ではなく、ショーの為のものだったらしい。
しばらく歩いていると、なんだかいい香りがしてきた。
「真昼、私アップルパイ買いたい」
「なら俺も何か買うかな」
少しの間並んで、目当てのものを手にする。
(相変わらず温かいことしか分からないな...)
そう思っているうちに、短いアップルパイを完食してしまっていた。
「...ん、美味いな」
チュロスを片手に真昼が楽しそうに笑っている。
こんなにも穏やかな時間は、もしかすると久しぶりかもしれない。
「おまえも食べる?」
「え...っ!」
次の瞬間、口のなかにさくさくとした食感が広がる。
「真昼、これは、その...」
「どうしたんだそんなに焦っ、て...」
私が言いたいことを察知したのか、真昼はみるみる顔を赤く染めた。
「ごめん、完全無自覚...」
「嫌だったわけじゃないから、その...気にしないで」
二人で顔を赤くしていると、目の前によさそうなお店があることに気づく。
「真昼が食べ終わったら、あそこにも行きたい」
「おまえは本当に雑貨屋が好きだな。...もうちょっとで終わるから待っててくれ」
「うん」
その後、約束どおり真昼はつきあってくれた。
そのなかで、ようやくいいものを見つけられた。
「...これなら大丈夫かも」
それは、見た目は普通のキーケース。
けれどよく見ると、そこには小さくテディベアが刺繍されている。
(...私も買おうかな)
真昼にはこげ茶色の、私はクリーム系の色のものをレジに持っていく。
近くのレジで真昼が何かを買っているのが見えたけれど、私の方が早くお会計が終わったらしかった。
「真昼」
「悪い、待たせた」
二人で並んでお店を出る。
空は紺碧色に染まっていて、渡すなら今しかないと思った。
「真昼、よかったら受け取ってほしい」
「これって、キーケースか。...ありがとな」
頭をぽんぽんと撫でられて、どきどきが止まらなくなる。
「わ、私も色違いを買ったから」
鍵につけたものを見せると、真昼はふっと笑ってポケットから鍵を取り出した。
「俺も今すぐつける」
気に入ってもらえたようで本当によかったと思っていると、遠くで花火が打ちあがる音がした。
「...もう少しデートを続けたい。俺はそうしたいけど、おまえはどう思う?」
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