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第2幕
恋人の異変★
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『近づかないで』...一瞬千夜に拒絶されたのかと思ったが、きっとそういうわけではなさそうだ。
(今はって言ってたし、もしかして血が欲しかったのか?)
あいつが脱ぎ捨てた靴を揃えて、キッチンへと向かう。
冷蔵庫を開けると、俺の心のように中には所々足りないものがあった。
一緒に作ると約束したのだ、勝手に作るわけにはいかない。
(足りなさそうなもの、買ってくるか)
コンビニへ行くと、千夜と仲がいいらしい店員が話しかけてくる。
「今日はあの方は...」
「少し、体調が悪そうで」
「そうですか。心配ですね」
「...はい」
今一人にしていることも、自分を責めているんじゃないかということも...一人で泣いているんじゃないかということも。
(ああ、駄目だ。早く帰ろう)
ついでにと千夜が好きな飴を買い、そのまま千夜の家まで戻る。
...そろそろ入っても大丈夫だろうか。
「千夜、入ってもいいか?」
「...うん」
俺は弱々しい声がした扉を開ける。
千夜の瞳は、なんだかいつもと違って見えた。
...何か不安にさせるようなことをしてしまったのだろうか。
「もう大丈夫なのか?」
「...うん」
やっぱり目の前の瞳は何かに絶望したような色を含んでいて、俺にはその原因が分からなかった。
...ただ、腕から滲んでいる血液がいつもより多いような気がした。
「何か食べるか?」
「ご飯、待っててくれたの?」
「...一緒に作ろうって話しただろ?」
その瞬間、千夜が腕のなかに飛びこんできた。
「待たなくてもよかったのに」
「俺が待ちたかったんだよ」
「...やっぱり優しいね、真昼は。ありがとう」
段々いつもの調子に戻ってきたなと思いながらも、先程の違和感を拭えない。
「なあ、千夜」
「どうかした?」
「...いや、なんでもない。そういえば、なくなりそうだったもの揃えておいたから。これはついで」
「飴...ごめんなさい、じゃなくて、ありがとう」
「...ん。ところで、なんでそれが一番好きなんだ?」
「小さい頃から食べてたからかな...」
話題を変えて、そのまま二人で調理場に立つ。
もしかすると聞かれたくないことなのかもしれない...。
一度そう考えると、踏みこむのが怖くなった。
踏みこんだ先に待っているのが、闇しかないような気がして。
だが、ここで踏みこむ勇気を持てばよかったんだ。
...そうすれば、あいつを一人で苦しめることもなかったのに。
(今はって言ってたし、もしかして血が欲しかったのか?)
あいつが脱ぎ捨てた靴を揃えて、キッチンへと向かう。
冷蔵庫を開けると、俺の心のように中には所々足りないものがあった。
一緒に作ると約束したのだ、勝手に作るわけにはいかない。
(足りなさそうなもの、買ってくるか)
コンビニへ行くと、千夜と仲がいいらしい店員が話しかけてくる。
「今日はあの方は...」
「少し、体調が悪そうで」
「そうですか。心配ですね」
「...はい」
今一人にしていることも、自分を責めているんじゃないかということも...一人で泣いているんじゃないかということも。
(ああ、駄目だ。早く帰ろう)
ついでにと千夜が好きな飴を買い、そのまま千夜の家まで戻る。
...そろそろ入っても大丈夫だろうか。
「千夜、入ってもいいか?」
「...うん」
俺は弱々しい声がした扉を開ける。
千夜の瞳は、なんだかいつもと違って見えた。
...何か不安にさせるようなことをしてしまったのだろうか。
「もう大丈夫なのか?」
「...うん」
やっぱり目の前の瞳は何かに絶望したような色を含んでいて、俺にはその原因が分からなかった。
...ただ、腕から滲んでいる血液がいつもより多いような気がした。
「何か食べるか?」
「ご飯、待っててくれたの?」
「...一緒に作ろうって話しただろ?」
その瞬間、千夜が腕のなかに飛びこんできた。
「待たなくてもよかったのに」
「俺が待ちたかったんだよ」
「...やっぱり優しいね、真昼は。ありがとう」
段々いつもの調子に戻ってきたなと思いながらも、先程の違和感を拭えない。
「なあ、千夜」
「どうかした?」
「...いや、なんでもない。そういえば、なくなりそうだったもの揃えておいたから。これはついで」
「飴...ごめんなさい、じゃなくて、ありがとう」
「...ん。ところで、なんでそれが一番好きなんだ?」
「小さい頃から食べてたからかな...」
話題を変えて、そのまま二人で調理場に立つ。
もしかすると聞かれたくないことなのかもしれない...。
一度そう考えると、踏みこむのが怖くなった。
踏みこんだ先に待っているのが、闇しかないような気がして。
だが、ここで踏みこむ勇気を持てばよかったんだ。
...そうすれば、あいつを一人で苦しめることもなかったのに。
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