未熟な蕾ですが

黒蝶

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「ごめんなさい。まさか二度寝しちゃうなんて…」
《気にする必要はない》
お姉ちゃんを見送って、部屋に戻ったところまでは記憶がある。
だけど、その後ベッドに身を投げたまま寝ちゃってたみたいだ。
時間は午前9時前…寝すぎた。
それでも白露は怒らないで一緒に来てくれる。
…よかった。今日は白露の買い物がしたかったから。
「この服着てみて」
《洋装はよく分からない》
「うーん…それなら、あんまりじろじろ見ないようにするからじっとしてて」
小さい子の相手をするつもりで着替えさせればいいと思ったけど、背中の大きな傷を見てそう思えなくなった。
《戸惑っているのか?》
「ううん。ただ、思ったよりほっそりしてるなって…」
《ほっそり?》
「細マッチョ…すごい鍛えられてるけど手足が細いってこと」
《弱そうということか?》
「ううん。もっとご飯いっぱい食べてもらおうって思っただけだよ」
首を傾げている白露にスーツっぽいコーデをしてみた。
《…何をそんなに見ている?》
「あ、えっと…思っていた以上にかっこよくて吃驚してたんだ。すごく似合ってる」
《そうか》
嫌がっている様子はないのでそのままお会計をすませる。
他の人には視えない白露のものを買うのはちょっと大変な部分もあるけど、やっぱり買い物は楽しい。
「ついでに簪を見てもいい?」
《自分用か?》
「ううん。桜良先輩に似合いそうなものを探したいんだ」
《…それならこちらにある鞠の模様のものと小さめの蝶が舞っているものがいいだろう。
大きめの飾りより小さめの飾りのものの方が色々と小回りがきくはずだ》
白露がこんなに詳しいなんて知らなかった。
最初から飾りが小さいものにしようとは思っていたけど、自分ひとりだとずっと迷って買えなかったかもしれない。
《…すまない。出過ぎた真似をした》
「ううん。沢山アドバイスをもらったおかげで決められたよ。ありがとう」
《…ならいい》
「そうだ、そろそろこれが必要になるから使って」
《手にはめるのか》
「うん。とってもあったかいんだよ」
いつも手が寒そうだったから、冬のお出かけに使えそうな手袋を渡した。
シンプルなデザインのものにしたけど、白露にとってはそれがよかったみたいだ。
買い物しているうちに時間はあっという間に過ぎて、旧校舎へ行く時間になる。
「ありがとう。気分転換できたよ」
《そうか》
「そろそろ学校に行こう」
《了解した》
お姉ちゃんに教えてもらった裏技を使って、白露が着ても不自然に洋服だけが浮いているように見えないようにする。
それにしても、あんな大きな傷を負うなんて何と戦ってきたんだろう。
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