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第24話
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さばとから数日。
「危ないことがあったらすぐ逃げろ。いいな?」
「分かってる。いってらっしゃい。お姉ちゃんも気をつけてね」
夜紅は別の学校とやらの調査に向かうことになったらしい。
いつも以上に警戒してほしいと頼まれ、離れた場所から主の動きを探っていた。
「おい、ちょっと金出せよ」
「なんで僕が…」
「いいから出せって。友だちだろ?」
「友だちならなんでもできるわけじゃ…」
「またぼっち生活に戻してやろうか?」
くだらない会話ならば聞き流そうと思ったが、そういうわけではなさそうだ。
…というのも、脅している側にちょっとした問題が見られる。
「いつもはそんなこと言わないじゃないか。やっぱり変だよ」
「うるさい!」
勢いよく振り上げられた手を押さえ、少年の背後にくっついていたものを引き剥がす。
「…あれ?俺、今何してた?」
「大丈夫?具合悪いの?やっぱり変だよ」
「いや、大丈夫。なんか体軽くなったし…」
ふたりから離れ、掴まえた妖を見つめる。
《あの人間の体は便利だったのに…くそ!》
《大人しくしておけ。さもなくば斬る》
《はっ、やってみろ、よ…》
そんな言葉を耳に入れず、いつものように刀をふる。
相手の体から体液が飛び散り、悲鳴をあげながら暴れはじめた。
《わ、悪かったよ。もう悪さしないから見逃してくれ。頼む》
《……今回だけだ。次はない》
相手は小さくひっと漏らし、そのまま走り去っていく。
戦う意志がないのならこれ以上追うつもりはない。
毎日刀をふり続けていたはずなのに、少し重く感じる。
「刀、傷んでない?」
《…そう見えるか?》
「うん。少なくとも僕はそう思う」
死霊の少年が少し気落ちしているように見えるのは、糸使いがいないからだろうか。
《暇か?》
「直球…。時間ならほぼ無限に余ってるけど、何かやるの?」
《線を塗ってます目をとっていく遊びを教えてもらった。相手してくれ》
「ああ、紙とペンさえあればできるやつ?いいよ」
死霊少年は小さな四角が縦横4ずつ、計16になるよう土に書いていく。
「白露はこっちの白い石を先に置いて。僕はこっちの黒っぽいやつにするから。
取れた四角の中には僕はばつ印をつけるから、白露は丸印をつけて」
《了解した》
少しすると、だんだん丸印で埋まっていく。
「え、なんかすごく強くない?」
《…別に》
これでもよく練習したのだ。
主はともかく、未だ夜紅に1度も勝てていない。
「そっか、周りが強い人だらけだもんね」
《…そうかもしれない》
「ねえ、もう1回やろう」
《了解した》
主の気配を探りつつ、死霊少年と遊びを楽しむ。
──楽しむ、という表現でいいのかは分からないが、案外悪くなかった。
「危ないことがあったらすぐ逃げろ。いいな?」
「分かってる。いってらっしゃい。お姉ちゃんも気をつけてね」
夜紅は別の学校とやらの調査に向かうことになったらしい。
いつも以上に警戒してほしいと頼まれ、離れた場所から主の動きを探っていた。
「おい、ちょっと金出せよ」
「なんで僕が…」
「いいから出せって。友だちだろ?」
「友だちならなんでもできるわけじゃ…」
「またぼっち生活に戻してやろうか?」
くだらない会話ならば聞き流そうと思ったが、そういうわけではなさそうだ。
…というのも、脅している側にちょっとした問題が見られる。
「いつもはそんなこと言わないじゃないか。やっぱり変だよ」
「うるさい!」
勢いよく振り上げられた手を押さえ、少年の背後にくっついていたものを引き剥がす。
「…あれ?俺、今何してた?」
「大丈夫?具合悪いの?やっぱり変だよ」
「いや、大丈夫。なんか体軽くなったし…」
ふたりから離れ、掴まえた妖を見つめる。
《あの人間の体は便利だったのに…くそ!》
《大人しくしておけ。さもなくば斬る》
《はっ、やってみろ、よ…》
そんな言葉を耳に入れず、いつものように刀をふる。
相手の体から体液が飛び散り、悲鳴をあげながら暴れはじめた。
《わ、悪かったよ。もう悪さしないから見逃してくれ。頼む》
《……今回だけだ。次はない》
相手は小さくひっと漏らし、そのまま走り去っていく。
戦う意志がないのならこれ以上追うつもりはない。
毎日刀をふり続けていたはずなのに、少し重く感じる。
「刀、傷んでない?」
《…そう見えるか?》
「うん。少なくとも僕はそう思う」
死霊の少年が少し気落ちしているように見えるのは、糸使いがいないからだろうか。
《暇か?》
「直球…。時間ならほぼ無限に余ってるけど、何かやるの?」
《線を塗ってます目をとっていく遊びを教えてもらった。相手してくれ》
「ああ、紙とペンさえあればできるやつ?いいよ」
死霊少年は小さな四角が縦横4ずつ、計16になるよう土に書いていく。
「白露はこっちの白い石を先に置いて。僕はこっちの黒っぽいやつにするから。
取れた四角の中には僕はばつ印をつけるから、白露は丸印をつけて」
《了解した》
少しすると、だんだん丸印で埋まっていく。
「え、なんかすごく強くない?」
《…別に》
これでもよく練習したのだ。
主はともかく、未だ夜紅に1度も勝てていない。
「そっか、周りが強い人だらけだもんね」
《…そうかもしれない》
「ねえ、もう1回やろう」
《了解した》
主の気配を探りつつ、死霊少年と遊びを楽しむ。
──楽しむ、という表現でいいのかは分からないが、案外悪くなかった。
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