未熟な蕾ですが

黒蝶

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「…成程。それで私に聞こうと思ったのか」
「うん。迷惑じゃなかったら教えてほしいんだ」
「迷惑だとは思わないけど、こればかりは感覚で掴んでもらうしかないからな…」
お姉ちゃんは少し考えた後、水が入ったコップを持ってきた。
「並の人間が使う力がこのコップで穂乃の霊力が蛇口だとすると、コップにおさまりきらない。つまり、それだけ大量の霊力が流れ出してるってことだ」
「どうすればいいの?」
「まず、水をゆっくり流すイメージで引き金を引いてみてくれ」
言われたとおり水鉄砲を撃つと、ちょっとだけ威力が弱まった。
「これなら、相手を無闇矢鱈に傷つけたりしない?」
「ああ。結界の規模については私じゃよく分からないけど、多分イメージしながら色々調節してみるといけるんじゃないかな」
「ありがとう。ちょっとやってみる」
外に出て水鉄砲の引き金をひいて試してみたけど、時々ものすごい水の勢いになってしまった。
「お、やってるね」
「陽向君…おはよう」
陽向君はじっと私を見て、満面の笑みで水鉄砲を渡してきた。
「まずはこっちで練習してみよう。それで窓に当たるようになったら、次はそっちの霊水入りの鉄砲使ったらいいから」
「…うん」
お手製らしい木の的は、多分陽向君が作ってくれたんだろう。
白露はまたどこかへ行っちゃったし、今のうちに上手になって吃驚させたい。
「お、上手上手!」
「…本当?」
「本当。上達するの早いね」
陽向君はにっこり笑って散らばった的をまとめてくれた。
「ちょっと待ってて。何か飲み物持ってくるから」
「あ…」
私も行くって言おうとしたけど、陽向君の速さに追いつけなかった。
そのまま待っていたら、小さなうさぎさんがこっちに駆け寄ってくる。
「怪我してるの?」
持っていた救急箱からガーゼと包帯を取り出して、お姉ちゃんに教わったとおりのやり方でなんとか手当てする。
「できたよ」
《ありがとうございます》
「…え?」
《今は急いでおりまして…お礼はいつか必ずしますので》
うさぎさんは妖か何かだったみたい。
ただのうさぎさんだと思っていたから、声がしてすごく吃驚した。
「ラムネもらってきたけど飲める?」
「あ、うん。ありがとう」
瓶を傾けていたら、すぐなくなってしまった。
「穂乃ちゃん」
「どうしたの?」
「あのさ、強くなりたいならひとつアドバイス。焦らないこと」
「焦らないこと?」
陽向君の言葉の意味を汲み取れなくて首を傾げると、苦笑いしながら小さく呟いた。
「焦れば焦るほど空振りするもんだからさ、もうちょっとゆっくりでいいと思う。
…多分だけど、先輩がちょっとずつしか教えないのは穂乃ちゃんに焦ってほしくないからだろうから」
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