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怪獣の死体がばらばらになっていくのを確認してから、白露は刀を鞘に収める。
《怪我はないか?》
「ありがとう。大丈夫だよ」
《そうか》
私たちの会話を聞いていた先生が、困った顔で声をかけてきた。
「あれだけの技なら霊力を相当持っていかれるはずだが、やっぱり平気なのか」
「…?」
「霊力の調整について、おそらく俺より折原の方がよく知っているはずだ。
今回はよかったが、強い霊気にあてられるとそのまま消滅してしまう場合もある」
「そうなんですか?」
だからお姉ちゃんは調整できるようにって言ってたんだ。
「無意識に力を放出しすぎているうえ、範囲を絞りこめていない。
攻撃範囲はイメージして撃つなり札を使うなりすればどうにかなるが、俺の場合妖力の制御しかしていないからな…」
先生は思案しているみたいだったけど、白露がぼそっと呟いた。
《夜紅から学べばいいのではないか?》
「折原とも若干力のベクトルが違う気がするが」
《妖力よりは似たものなはずだ》
ふたりの会話についていけないままぼんやり立っていると、また別の気配が近づいてくるのを感じて水鉄砲を撃つ。
「うわ!?」
その声はとても聞き覚えがあるもので、おもいきり頭を下げた。
「ごめんなさい瞬君。さっきのやり損じかと思って…」
「大丈夫だよ。満月なら危なかったかもしれないけどね」
霊力も妖力も月の満ち欠けに左右されやすくて、満月はフルパワーに、新月は1番力がなくなってしまうらしい。
だけど、お姉ちゃんは例外だ。
半月…特に下弦の月にフルパワーになって、満月の日に力が弱まるらしい。
どうしてなのか自分でも分からないって説明してくれたお姉ちゃんの力は不思議で、上手く言葉にできないけどみんなとちょっと違う気がする。
「お姉ちゃんに訊く…」
「何の話?」
「霊力の制御」
「ああ…。力をコントロールするのって難しいよね。僕もしょっちゅう暴走しそうになってたから分かる」
瞬君は負の感情が爆発すると暴走しやすくなるらしい。
色々なタイプがいるんだな…なんて思いつつ、自分がどういうタイプだって思われているのか気になった。
「私と瞬君は別のタイプですよね?」
「ああ。力の規模は似たようなものだが攻撃と防御では真逆だ。
それに、自覚せず能力が溢れているならそれもこいつとは違う」
先生でも分からないなら、やっぱりお姉ちゃんに教えてもらうしかない。
基本的なことしか分からないって言ってたけど、お姉ちゃんならきっと丁寧に教えてくれる。
《今夜はもう休んだ方がいい》
「あ…うん。そうだね。ふたりともありがとうございました。おやすみなさい」
「おやすみ」
「ゆっくり休んでくれ」
誰もいない教室に布団が敷かれていて、そのまま横になる。
まだ夏なのにすごく冷たく感じた。
《怪我はないか?》
「ありがとう。大丈夫だよ」
《そうか》
私たちの会話を聞いていた先生が、困った顔で声をかけてきた。
「あれだけの技なら霊力を相当持っていかれるはずだが、やっぱり平気なのか」
「…?」
「霊力の調整について、おそらく俺より折原の方がよく知っているはずだ。
今回はよかったが、強い霊気にあてられるとそのまま消滅してしまう場合もある」
「そうなんですか?」
だからお姉ちゃんは調整できるようにって言ってたんだ。
「無意識に力を放出しすぎているうえ、範囲を絞りこめていない。
攻撃範囲はイメージして撃つなり札を使うなりすればどうにかなるが、俺の場合妖力の制御しかしていないからな…」
先生は思案しているみたいだったけど、白露がぼそっと呟いた。
《夜紅から学べばいいのではないか?》
「折原とも若干力のベクトルが違う気がするが」
《妖力よりは似たものなはずだ》
ふたりの会話についていけないままぼんやり立っていると、また別の気配が近づいてくるのを感じて水鉄砲を撃つ。
「うわ!?」
その声はとても聞き覚えがあるもので、おもいきり頭を下げた。
「ごめんなさい瞬君。さっきのやり損じかと思って…」
「大丈夫だよ。満月なら危なかったかもしれないけどね」
霊力も妖力も月の満ち欠けに左右されやすくて、満月はフルパワーに、新月は1番力がなくなってしまうらしい。
だけど、お姉ちゃんは例外だ。
半月…特に下弦の月にフルパワーになって、満月の日に力が弱まるらしい。
どうしてなのか自分でも分からないって説明してくれたお姉ちゃんの力は不思議で、上手く言葉にできないけどみんなとちょっと違う気がする。
「お姉ちゃんに訊く…」
「何の話?」
「霊力の制御」
「ああ…。力をコントロールするのって難しいよね。僕もしょっちゅう暴走しそうになってたから分かる」
瞬君は負の感情が爆発すると暴走しやすくなるらしい。
色々なタイプがいるんだな…なんて思いつつ、自分がどういうタイプだって思われているのか気になった。
「私と瞬君は別のタイプですよね?」
「ああ。力の規模は似たようなものだが攻撃と防御では真逆だ。
それに、自覚せず能力が溢れているならそれもこいつとは違う」
先生でも分からないなら、やっぱりお姉ちゃんに教えてもらうしかない。
基本的なことしか分からないって言ってたけど、お姉ちゃんならきっと丁寧に教えてくれる。
《今夜はもう休んだ方がいい》
「あ…うん。そうだね。ふたりともありがとうございました。おやすみなさい」
「おやすみ」
「ゆっくり休んでくれ」
誰もいない教室に布団が敷かれていて、そのまま横になる。
まだ夏なのにすごく冷たく感じた。
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