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第5話
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《申し訳ないが失礼する》
「…気をつけて」
別に式が怪我したところで何もないだろうに、何故そんな言葉をかけられるのか分からない。
首を傾げたものの、もう答えはないと諦めた。
「駄目だよ、こっちに来たら」
《……ア?》
水鉄砲を向けても全く怯まない相手に困惑している主の目に手をあて、刀をふる。
怯ませる程度でやったつもりが完全に粉砕してしまった。
《怪我はないか?》
「あ、うん。助けてくれてありがとう」
《…食べた分運動しなければならないからな》
「白露、真面目だね」
主はにっこり微笑み別の妖に鉄砲を向けた。
「こないで。それ以上近づいたら撃つから」
《に、人間に危害をくわえるつもりはない。嘘だと思ったら撃ってくれていい》
「分かった。あなたを信じるね」
《い、命拾いした…》
妖は小さく呟くと、そのまま小走りで去っていった。
《よかったのか?》
「何が?」
《祓うのが仕事ではないのか?これでは手柄も手に入らない》
「…手柄?そんなのいらないよ?」
またこの娘は不思議なことを言う。
式を使役する祓い人たちは、大抵依頼を受けて妖なりを祓うことで金銭を得ている。
だが、この娘も周囲の人々もそんな素振りは一切見られない。
《何の特もないのに、何故そこまでする?》
「何故って言われても…。私は、傷つく人を減らせればそれでいいの。
損得じゃなくて、誰にも知られないことでもこっそり役に立ちたいんだ。…お姉ちゃんみたいに強かったら、もっと色々できたんだけどね」
また寂しそうな目をする少女にどんな言葉をかければいいのか分からない。
すると、きゅるると音が鳴った。
《どうした?》
「お、お腹へっちゃったみたい…。もう1ヶ所行きたいところがあるから、ついてきてくれる?」
《了解した》
そのままついていくと、中庭で月明かりに照らされ神々しい光を放つ女が腰掛けている。
《まあ、あなたは…》
「こんばんは。えっと…深碧さん」
《お久しぶりです。それにしても、随分強くなられたようですね》
「そういうわけじゃないんです。私はただ、白露に力を貸してもらっているだけで…」
この相手、人間ではない。
警戒しているのを見破られたのか、主は頬をふくらませ俺を凝視する。
視線を外したところで持っていた鞄を開けた。
「今夜は、星を散りばめたみたいだって人気の金平糖を持ってきました」
《いつも申し訳ありません。自分で動ければよかったのですが…》
「いいんです。深碧さんは私の友だちですから」
妖や死霊の中には、生まれつき一定距離しか移動できない者がいる。
この深碧という者もそれなのだろう。
「白露も食べてみて」
小さな星のような菓子を口に入れると、一瞬で甘さが広がった。
《…悪くない》
「…気をつけて」
別に式が怪我したところで何もないだろうに、何故そんな言葉をかけられるのか分からない。
首を傾げたものの、もう答えはないと諦めた。
「駄目だよ、こっちに来たら」
《……ア?》
水鉄砲を向けても全く怯まない相手に困惑している主の目に手をあて、刀をふる。
怯ませる程度でやったつもりが完全に粉砕してしまった。
《怪我はないか?》
「あ、うん。助けてくれてありがとう」
《…食べた分運動しなければならないからな》
「白露、真面目だね」
主はにっこり微笑み別の妖に鉄砲を向けた。
「こないで。それ以上近づいたら撃つから」
《に、人間に危害をくわえるつもりはない。嘘だと思ったら撃ってくれていい》
「分かった。あなたを信じるね」
《い、命拾いした…》
妖は小さく呟くと、そのまま小走りで去っていった。
《よかったのか?》
「何が?」
《祓うのが仕事ではないのか?これでは手柄も手に入らない》
「…手柄?そんなのいらないよ?」
またこの娘は不思議なことを言う。
式を使役する祓い人たちは、大抵依頼を受けて妖なりを祓うことで金銭を得ている。
だが、この娘も周囲の人々もそんな素振りは一切見られない。
《何の特もないのに、何故そこまでする?》
「何故って言われても…。私は、傷つく人を減らせればそれでいいの。
損得じゃなくて、誰にも知られないことでもこっそり役に立ちたいんだ。…お姉ちゃんみたいに強かったら、もっと色々できたんだけどね」
また寂しそうな目をする少女にどんな言葉をかければいいのか分からない。
すると、きゅるると音が鳴った。
《どうした?》
「お、お腹へっちゃったみたい…。もう1ヶ所行きたいところがあるから、ついてきてくれる?」
《了解した》
そのままついていくと、中庭で月明かりに照らされ神々しい光を放つ女が腰掛けている。
《まあ、あなたは…》
「こんばんは。えっと…深碧さん」
《お久しぶりです。それにしても、随分強くなられたようですね》
「そういうわけじゃないんです。私はただ、白露に力を貸してもらっているだけで…」
この相手、人間ではない。
警戒しているのを見破られたのか、主は頬をふくらませ俺を凝視する。
視線を外したところで持っていた鞄を開けた。
「今夜は、星を散りばめたみたいだって人気の金平糖を持ってきました」
《いつも申し訳ありません。自分で動ければよかったのですが…》
「いいんです。深碧さんは私の友だちですから」
妖や死霊の中には、生まれつき一定距離しか移動できない者がいる。
この深碧という者もそれなのだろう。
「白露も食べてみて」
小さな星のような菓子を口に入れると、一瞬で甘さが広がった。
《…悪くない》
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