384 / 732
青海 錬 続篇
プロローグ
しおりを挟む
「~♪」
黒羽は一人で歌っていた。
いつものように、バルコニーで。
すると後ろから突然腕が伸びてきて、そのなかにすっぽりと包みこまれた。
♪「...見つけた」
「錬!」
(よかった、知らない人かと思った...)
季節はあれから二つすぎ、初めての冬がやってきた。
「ねえ、錬」
♪「どうしたの?」
「これ...飲む?」
黒羽は持っていたホットココアを差し出した。
まだ作りたてのため、湯気がでている。
♪「ありがとう。でも、黒羽の分は?」
「え?ここにあるけど...」
マグカップを見せると、錬は眉をひそめた。
♪「ダメ。僕がこっちをもらうね」
「え?え?」
ひょい、と黒羽の手から飲みかけのココアを奪い、そのまま飲んでしまった。
「だってそっちは、」
♪「冷めてたから。だからもらったんだ」
「そ、そういうことじゃなくて...」
♪「ん?」
(無自覚、なのかな?)
「その、か、間接に...」
♪「...!」
それを聞いた途端、黒羽を抱きしめる腕に力がこめられた。
♪「あー...ごめん。恥ずかしいから、しばらくこのままで!」
「わ、分かった...」
しばらくそうしていると、北風がふいてきてかなり冷えてきた。
「...くしゅっ」
♪「ごめん、中に入ろうか」
錬は黒羽の腕をひく...。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
♪「ねえ、黒羽」
「なあに?」
♪「さっきの歌、『ステラ』だよね?」
「よく分かったね」
黒羽の母、魔王、そして、魔女の思い出の歌。
魔女はあれから、黒羽を殺そうとしたりしてこない。
時々薬を届けに『王間』がやってくるだけだ。
どうやら会うのは気まずいらしく、あの一件以降魔女には会えていなかった。
♪「黒羽、行きたい場所とかある?」
「うーん...私は錬がいるならどこでもいいよ」
♪「僕も黒羽がいればそれでいいな...」
二人で顔を見あわせて笑う。
♪「あ!このガイドに載ってる旅館は?」
「景色が綺麗みたいだね」
♪「よし、じゃあ次の休みに行こうか」
「いいの?錬、疲れてるんじゃ...」
♪「僕は黒羽の笑顔で元気になれるから」
その言葉に黒羽の鼓動は高鳴っていく。
♪「...ごめん、仕事みたい」
錬は申し訳なさそうに携帯を取り出す。
♪「何の事件?...うん、分かった。現場は?」
錬は黒羽の頭を撫で、仕事へと向かった。
「こういう時、寂しいって言うのは我儘だよね...」
黒羽は一人きりになった部屋でぽつりと呟いた。
黒羽は一人で歌っていた。
いつものように、バルコニーで。
すると後ろから突然腕が伸びてきて、そのなかにすっぽりと包みこまれた。
♪「...見つけた」
「錬!」
(よかった、知らない人かと思った...)
季節はあれから二つすぎ、初めての冬がやってきた。
「ねえ、錬」
♪「どうしたの?」
「これ...飲む?」
黒羽は持っていたホットココアを差し出した。
まだ作りたてのため、湯気がでている。
♪「ありがとう。でも、黒羽の分は?」
「え?ここにあるけど...」
マグカップを見せると、錬は眉をひそめた。
♪「ダメ。僕がこっちをもらうね」
「え?え?」
ひょい、と黒羽の手から飲みかけのココアを奪い、そのまま飲んでしまった。
「だってそっちは、」
♪「冷めてたから。だからもらったんだ」
「そ、そういうことじゃなくて...」
♪「ん?」
(無自覚、なのかな?)
「その、か、間接に...」
♪「...!」
それを聞いた途端、黒羽を抱きしめる腕に力がこめられた。
♪「あー...ごめん。恥ずかしいから、しばらくこのままで!」
「わ、分かった...」
しばらくそうしていると、北風がふいてきてかなり冷えてきた。
「...くしゅっ」
♪「ごめん、中に入ろうか」
錬は黒羽の腕をひく...。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
♪「ねえ、黒羽」
「なあに?」
♪「さっきの歌、『ステラ』だよね?」
「よく分かったね」
黒羽の母、魔王、そして、魔女の思い出の歌。
魔女はあれから、黒羽を殺そうとしたりしてこない。
時々薬を届けに『王間』がやってくるだけだ。
どうやら会うのは気まずいらしく、あの一件以降魔女には会えていなかった。
♪「黒羽、行きたい場所とかある?」
「うーん...私は錬がいるならどこでもいいよ」
♪「僕も黒羽がいればそれでいいな...」
二人で顔を見あわせて笑う。
♪「あ!このガイドに載ってる旅館は?」
「景色が綺麗みたいだね」
♪「よし、じゃあ次の休みに行こうか」
「いいの?錬、疲れてるんじゃ...」
♪「僕は黒羽の笑顔で元気になれるから」
その言葉に黒羽の鼓動は高鳴っていく。
♪「...ごめん、仕事みたい」
錬は申し訳なさそうに携帯を取り出す。
♪「何の事件?...うん、分かった。現場は?」
錬は黒羽の頭を撫で、仕事へと向かった。
「こういう時、寂しいって言うのは我儘だよね...」
黒羽は一人きりになった部屋でぽつりと呟いた。
0
お気に入りに追加
91
あなたにおすすめの小説
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。
【完結】もう無理して私に笑いかけなくてもいいですよ?
冬馬亮
恋愛
公爵令嬢のエリーゼは、遅れて出席した夜会で、婚約者のオズワルドがエリーゼへの不満を口にするのを偶然耳にする。
オズワルドを愛していたエリーゼはひどくショックを受けるが、悩んだ末に婚約解消を決意する。だが、喜んで受け入れると思っていたオズワルドが、なぜか婚約解消を拒否。関係の再構築を提案する。その後、プレゼント攻撃や突撃訪問の日々が始まるが、オズワルドは別の令嬢をそばに置くようになり・・・
「彼女は友人の妹で、なんとも思ってない。オレが好きなのはエリーゼだ」
「私みたいな女に無理して笑いかけるのも限界だって夜会で愚痴をこぼしてたじゃないですか。よかったですね、これでもう、無理して私に笑いかけなくてよくなりましたよ」
ちょっと大人な体験談はこちらです
神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な体験談です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
極悪家庭教師の溺愛レッスン~悪魔な彼はお隣さん~
恵喜 どうこ
恋愛
「高校合格のお礼をくれない?」
そう言っておねだりしてきたのはお隣の家庭教師のお兄ちゃん。
私よりも10歳上のお兄ちゃんはずっと憧れの人だったんだけど、好きだという告白もないままに男女の関係に発展してしまった私は苦しくて、どうしようもなくて、彼の一挙手一投足にただ振り回されてしまっていた。
葵は私のことを本当はどう思ってるの?
私は葵のことをどう思ってるの?
意地悪なカテキョに翻弄されっぱなし。
こうなったら確かめなくちゃ!
葵の気持ちも、自分の気持ちも!
だけど甘い誘惑が多すぎて――
ちょっぴりスパイスをきかせた大人の男と女子高生のラブストーリーです。
本日、私の大好きな幼馴染が大切な姉と結婚式を挙げます
結城芙由奈@12/27電子書籍配信中
恋愛
本日、私は大切な人達を2人同時に失います
<子供の頃から大好きだった幼馴染が恋する女性は私の5歳年上の姉でした。>
両親を亡くし、私を養ってくれた大切な姉に幸せになって貰いたい・・・そう願っていたのに姉は結婚を約束していた彼を事故で失ってしまった。悲しみに打ちひしがれる姉に寄り添う私の大好きな幼馴染。彼は決して私に振り向いてくれる事は無い。だから私は彼と姉が結ばれる事を願い、ついに2人は恋人同士になり、本日姉と幼馴染は結婚する。そしてそれは私が大切な2人を同時に失う日でもあった―。
※ 本編完結済。他視点での話、継続中。
※ 「カクヨム」「小説家になろう」にも掲載しています
※ 河口直人偏から少し大人向けの内容になります
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる