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第26章『災厄の再来予報』
第194話
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「早速おでましか」
紅を塗り直し、そのまま札と弓を構える。
このままでは視えない人間にも深刻な被害が及ぶのは明確だった。
《か、カヨさん…》
「おまえが大切に想っていた人はその井戸の中にいる。ここに出てきても会えないよ」
亡くなった盲目の少女の名前をうわ言のように呟きながら、どんどんこちらに迫ってくる。
ただの闇なら矢で祓ってしまった方が早いが、人が関わっているならそういうわけにもいかない。
「私と話をしないか?かよさんの代わりにはなれないけど、ずっと独りでいるのは寂しいだろ?」
《カヨさん、ドコ…?許サナい、彼女ヲ、返セ!》
いきなり攻撃してきたかと思えば、再び動きを止め激しく慟哭する。
噂の広まりが中途半端だからか、本人も自分が何をしているのか全く分かっていないようだった。
「──燃えろ」
とにかく周りに飛び散ろうとしている邪気をとばすことしかできない。
《カヨ、さンは、カヨさんハ…》
「おまえがあの日記を書いたんだろ?どんなものを見たのか教えてくれないか?」
井戸からどす黒い水が漏れ出るなか、目の前の妖は息を荒くしながら話しはじめた。
《かよサんは、優しカッた。夕餉を持ッテきてくレタリ、いツカ旅に出タイと話す人デ…》
その間も浄化しながら話に耳を傾ける。
《目が見エナいのニ、俺のコトは気配で分かルッて…いい人だっタンだ。
ソレヲ、あの男ハ…!困ってイるカヨサンを見て見ぬフリシタ奴ラモ同罪ダ!滅ビロ!》
この妖にとってかよさんという人物が世界の全てで、それを理不尽に奪われた。
それが悲しくて、許せなくて…怒りが全ての感情を上回った結果、災いをもたらす存在になったのだろう。
《壊レロ!》
体が吹き飛ばされそうになりながらなんとか攻撃に耐える。
井戸ばかり気にしていた私は、横から槍が飛んできていることに気づいていなかった。
「先輩!」
体を突き飛ばされ、その場に転ぶ。
直後に血しぶきを浴び、槍が深々と突き刺さった後輩の体を軽くおこす。
「陽向!」
「先ぱ、ずみまぜ……」
口から血反吐が散るのと同時に命も果ててしまったようだった。
槍を抜き、恐らく飛んできたであろう方向に思いきり投げつける。
「……卑怯な奴は嫌いなんだ。こっちは今人と話してる。邪魔するならおまえから潰すぞ」
神宮寺義仁はけたけた嘲笑いながら妖に語りかける。
「目の前ノそいツヲ倒セタら、もット強くなれルぞ」
《ぐ、ああ!》
この妖は決して強さを求めているわけじゃない。
にも関わらず、強引に私を殺すよう押し進めようとしてくる。
「噂に呑まれかけたおまえに用はない」
「俺ニはあるンだよ。…消エろ!」
面倒なことになったと思ったが、それだけ叫んで嗤いながら姿を消した。
先程まで狂気と本心を彷徨っていた瞳は狂気の色が滲んでいる。
「…ごめん。加減できそうにない」
鋭い爪のような攻撃を避け、死角となる場所に陽向を寝かせる。
火炎刃を使わずに終わらせたかったが、そういうわけにもいかないらしい。
《倒ス、たオス、タオス!》
大量のどす黒い水をひたすら斬りまくる。
どこまでやれるかなんて分からない。
ここでこの妖を止めて、あの男を…ゆっくり考える暇もなく攻撃を避け続けた。
「──爆ぜろ」
ある一角を爆破すると、相手はのたうちまわり悲鳴をあげた。
《俺ノ、体ガ…!》
「…自分のことしか見えないならちょっとそこで黙ってろ」
周囲から近づいてきている妖たちに火炎刃を飛ばす。
《井戸の力、欲しい…》
《この井戸から美味そうなにおいがする》
《あっちのも美味そうだ…!》
私は黙って火炎刃をふり続けた。
あの男の目的は井戸の封印を完全に解いて、噂で心優しい妖を洗脳することだろう。
私の方に向かってくる妖をひたすら燃やした。
「…次はどいつだ?」
腕の感覚がなくなっていくのを感じながら、相手が動けなくなる程度に炎を舞わせた。
紅を塗り直し、そのまま札と弓を構える。
このままでは視えない人間にも深刻な被害が及ぶのは明確だった。
《か、カヨさん…》
「おまえが大切に想っていた人はその井戸の中にいる。ここに出てきても会えないよ」
亡くなった盲目の少女の名前をうわ言のように呟きながら、どんどんこちらに迫ってくる。
ただの闇なら矢で祓ってしまった方が早いが、人が関わっているならそういうわけにもいかない。
「私と話をしないか?かよさんの代わりにはなれないけど、ずっと独りでいるのは寂しいだろ?」
《カヨさん、ドコ…?許サナい、彼女ヲ、返セ!》
いきなり攻撃してきたかと思えば、再び動きを止め激しく慟哭する。
噂の広まりが中途半端だからか、本人も自分が何をしているのか全く分かっていないようだった。
「──燃えろ」
とにかく周りに飛び散ろうとしている邪気をとばすことしかできない。
《カヨ、さンは、カヨさんハ…》
「おまえがあの日記を書いたんだろ?どんなものを見たのか教えてくれないか?」
井戸からどす黒い水が漏れ出るなか、目の前の妖は息を荒くしながら話しはじめた。
《かよサんは、優しカッた。夕餉を持ッテきてくレタリ、いツカ旅に出タイと話す人デ…》
その間も浄化しながら話に耳を傾ける。
《目が見エナいのニ、俺のコトは気配で分かルッて…いい人だっタンだ。
ソレヲ、あの男ハ…!困ってイるカヨサンを見て見ぬフリシタ奴ラモ同罪ダ!滅ビロ!》
この妖にとってかよさんという人物が世界の全てで、それを理不尽に奪われた。
それが悲しくて、許せなくて…怒りが全ての感情を上回った結果、災いをもたらす存在になったのだろう。
《壊レロ!》
体が吹き飛ばされそうになりながらなんとか攻撃に耐える。
井戸ばかり気にしていた私は、横から槍が飛んできていることに気づいていなかった。
「先輩!」
体を突き飛ばされ、その場に転ぶ。
直後に血しぶきを浴び、槍が深々と突き刺さった後輩の体を軽くおこす。
「陽向!」
「先ぱ、ずみまぜ……」
口から血反吐が散るのと同時に命も果ててしまったようだった。
槍を抜き、恐らく飛んできたであろう方向に思いきり投げつける。
「……卑怯な奴は嫌いなんだ。こっちは今人と話してる。邪魔するならおまえから潰すぞ」
神宮寺義仁はけたけた嘲笑いながら妖に語りかける。
「目の前ノそいツヲ倒セタら、もット強くなれルぞ」
《ぐ、ああ!》
この妖は決して強さを求めているわけじゃない。
にも関わらず、強引に私を殺すよう押し進めようとしてくる。
「噂に呑まれかけたおまえに用はない」
「俺ニはあるンだよ。…消エろ!」
面倒なことになったと思ったが、それだけ叫んで嗤いながら姿を消した。
先程まで狂気と本心を彷徨っていた瞳は狂気の色が滲んでいる。
「…ごめん。加減できそうにない」
鋭い爪のような攻撃を避け、死角となる場所に陽向を寝かせる。
火炎刃を使わずに終わらせたかったが、そういうわけにもいかないらしい。
《倒ス、たオス、タオス!》
大量のどす黒い水をひたすら斬りまくる。
どこまでやれるかなんて分からない。
ここでこの妖を止めて、あの男を…ゆっくり考える暇もなく攻撃を避け続けた。
「──爆ぜろ」
ある一角を爆破すると、相手はのたうちまわり悲鳴をあげた。
《俺ノ、体ガ…!》
「…自分のことしか見えないならちょっとそこで黙ってろ」
周囲から近づいてきている妖たちに火炎刃を飛ばす。
《井戸の力、欲しい…》
《この井戸から美味そうなにおいがする》
《あっちのも美味そうだ…!》
私は黙って火炎刃をふり続けた。
あの男の目的は井戸の封印を完全に解いて、噂で心優しい妖を洗脳することだろう。
私の方に向かってくる妖をひたすら燃やした。
「…次はどいつだ?」
腕の感覚がなくなっていくのを感じながら、相手が動けなくなる程度に炎を舞わせた。
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