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第25章『迷える夜』
第182話
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「羊が犠牲に、教会、願いを叶える…」
「先輩?」
「ごめん。なんでもない」
場所までは分からないが、ここまで揃ってしまえば悲惨な末路が待ち受けていることくらい分かる。
「教会の場所を探さないとな」
「それなら僕たちが手伝うよ」
後ろを振り向くと、手をひらひらふる瞬と何かを読んでいる先生が入ってきたところだった。
どこから話を聞かれていたか分からないが、人数は多いに越したことはない。
「もしかして、見当がついてるのか?」
「大体の場所はね。だけど、先生が念入りに調べたいって言うから…」
「何かあったら困るだろ。…ここまでくれば問題はひとつか」
先生から聞いた言葉は予想外のものだった。
「廃墟と化した教会なんて、この町にはいくらでもある。願いを叶える教会は本当にひとつだけなのか?」
「そっか、もし他の場所からも行けるようなら…」
よく知らなかったものがいきなり噂として流行りだしたのは、それぞれ別の場所から迷いを晴らす教会に辿り着けたからである可能性が高い。
「今夜は外も見回った方がよさそうだな。ふたりには校内をお願いして、陽向は私と来てほしい」
「ですね。手分けしないといけないだろうし…。先生、桜良のこと頼めます?」
陽向の言葉に先生ははっきり答えた。
「木嶋にはあいつがついてるから心配ない」
「あいつ?」
「猫さんだよ。変なのが来たら追い返すって言ってた」
最近結月の姿をあまり見かけないと思っていたが、話を聞く限り元気そうで安心した。
「まあ、ちびもいるしあんまり心配する必要もないんだろうけど…念のため、色々お願いします」
本来であれば自分が側にいて護りたいと思っているはずだ。
それを外に引っ張り出すのは申し訳ないが、圧倒的人手不足でどうしようもない。
「あまり遅くならないように」
「分かりました、兄貴!」
「いつから俺はおまえの兄貴になったんだ…」
「だって、先生って親というより寄り添ってくれるお兄ちゃんっぽいんですもん。
…まともな家族がいなかったからかな、自然と出ちゃってました」
また家に呼び出されたのか、陽向の表情は若干暗い。
先生も察知したのだろう。ふっと笑って陽向の肩に手を置いた。
「仲間で家族だっていうなら、約束はしっかり守れよ?」
「…!了解です!いってきます」
陽向が走っていくのを追う前に、先生と少し話をした。
「先生は優しいな」
「そんなことはないと思うが。というより優しいのは折原の方だろ」
「そうでもないと思う。…インカム、スイッチ入れておくから何かあったら連絡してくれ」
「気をつけろ。噂のことも、岡副のことも」
「そうだな。いってくる」
瞬にも手をふり、小走りで陽向を追いかける。
やっと追いついたところで表情を確認すると、少し和らいでいるように見えた。
「また連絡がきたのか?」
「俺のことなんて放っておけばいいのに、ねちねち言われました。生活費諸々全部自分で稼いでるんだし、準特待で全額やら半額やら免除になってるから払えてるし、迷惑かけてないんですけどね。
穂乃ちゃんはいいお姉ちゃんがいて羨ましいな…。俺の兄貴は俺を汚点だって言ってたので」
私たちに共通しているのは、まともな家族の形をほとんど知らないことだ。
私以外はまともに会話をしたことも少ないんじゃないだろうか。
「私がいいお姉さんに見えるか?」
「俺はそう思ってます」
「それは嬉しいな。…あの人に顔向けできる自分でいようってずっと思ってたから」
「死んじゃったお母さんにですか?」
「うん。私じゃ護れない気がしてたから…未だに自信ないよ。けど、穂乃は私が駄目なところをひっくるめて受け入れてくれるからなんとか前を向けてるんだ。
…おまえにとっての桜良がそういう存在なんじゃないか?」
恋愛感情が分からない私にとってないものを陽向は持っている。
それは恐らく桜良も同じで、先生と瞬はまた違った形で…それがとても眩しい。
「色々な形の愛があるから面白いな」
「ですね。俺、桜良がいなかったら折れてましたもん。勿論、先輩もいてくれないと困りますけど」
「じゃあ、なるべく早く片づけてまた打ち上げでもやるか」
「頑張りましょう!」
目の前に現れた、ただの廃墟。
もしかするとここも関係しているのかもしれない。
視線を合わせ、すぐに足を踏み入れる。
1歩入っただけで雰囲気が変わった。
「先輩?」
「ごめん。なんでもない」
場所までは分からないが、ここまで揃ってしまえば悲惨な末路が待ち受けていることくらい分かる。
「教会の場所を探さないとな」
「それなら僕たちが手伝うよ」
後ろを振り向くと、手をひらひらふる瞬と何かを読んでいる先生が入ってきたところだった。
どこから話を聞かれていたか分からないが、人数は多いに越したことはない。
「もしかして、見当がついてるのか?」
「大体の場所はね。だけど、先生が念入りに調べたいって言うから…」
「何かあったら困るだろ。…ここまでくれば問題はひとつか」
先生から聞いた言葉は予想外のものだった。
「廃墟と化した教会なんて、この町にはいくらでもある。願いを叶える教会は本当にひとつだけなのか?」
「そっか、もし他の場所からも行けるようなら…」
よく知らなかったものがいきなり噂として流行りだしたのは、それぞれ別の場所から迷いを晴らす教会に辿り着けたからである可能性が高い。
「今夜は外も見回った方がよさそうだな。ふたりには校内をお願いして、陽向は私と来てほしい」
「ですね。手分けしないといけないだろうし…。先生、桜良のこと頼めます?」
陽向の言葉に先生ははっきり答えた。
「木嶋にはあいつがついてるから心配ない」
「あいつ?」
「猫さんだよ。変なのが来たら追い返すって言ってた」
最近結月の姿をあまり見かけないと思っていたが、話を聞く限り元気そうで安心した。
「まあ、ちびもいるしあんまり心配する必要もないんだろうけど…念のため、色々お願いします」
本来であれば自分が側にいて護りたいと思っているはずだ。
それを外に引っ張り出すのは申し訳ないが、圧倒的人手不足でどうしようもない。
「あまり遅くならないように」
「分かりました、兄貴!」
「いつから俺はおまえの兄貴になったんだ…」
「だって、先生って親というより寄り添ってくれるお兄ちゃんっぽいんですもん。
…まともな家族がいなかったからかな、自然と出ちゃってました」
また家に呼び出されたのか、陽向の表情は若干暗い。
先生も察知したのだろう。ふっと笑って陽向の肩に手を置いた。
「仲間で家族だっていうなら、約束はしっかり守れよ?」
「…!了解です!いってきます」
陽向が走っていくのを追う前に、先生と少し話をした。
「先生は優しいな」
「そんなことはないと思うが。というより優しいのは折原の方だろ」
「そうでもないと思う。…インカム、スイッチ入れておくから何かあったら連絡してくれ」
「気をつけろ。噂のことも、岡副のことも」
「そうだな。いってくる」
瞬にも手をふり、小走りで陽向を追いかける。
やっと追いついたところで表情を確認すると、少し和らいでいるように見えた。
「また連絡がきたのか?」
「俺のことなんて放っておけばいいのに、ねちねち言われました。生活費諸々全部自分で稼いでるんだし、準特待で全額やら半額やら免除になってるから払えてるし、迷惑かけてないんですけどね。
穂乃ちゃんはいいお姉ちゃんがいて羨ましいな…。俺の兄貴は俺を汚点だって言ってたので」
私たちに共通しているのは、まともな家族の形をほとんど知らないことだ。
私以外はまともに会話をしたことも少ないんじゃないだろうか。
「私がいいお姉さんに見えるか?」
「俺はそう思ってます」
「それは嬉しいな。…あの人に顔向けできる自分でいようってずっと思ってたから」
「死んじゃったお母さんにですか?」
「うん。私じゃ護れない気がしてたから…未だに自信ないよ。けど、穂乃は私が駄目なところをひっくるめて受け入れてくれるからなんとか前を向けてるんだ。
…おまえにとっての桜良がそういう存在なんじゃないか?」
恋愛感情が分からない私にとってないものを陽向は持っている。
それは恐らく桜良も同じで、先生と瞬はまた違った形で…それがとても眩しい。
「色々な形の愛があるから面白いな」
「ですね。俺、桜良がいなかったら折れてましたもん。勿論、先輩もいてくれないと困りますけど」
「じゃあ、なるべく早く片づけてまた打ち上げでもやるか」
「頑張りましょう!」
目の前に現れた、ただの廃墟。
もしかするとここも関係しているのかもしれない。
視線を合わせ、すぐに足を踏み入れる。
1歩入っただけで雰囲気が変わった。
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