ハーフ&ハーフ

黒蝶

文字の大きさ
上 下
253 / 258
断暮篇(たちぐらしへん)

宵暁け

しおりを挟む
それからすぐ朝陽が昇り、安心感と眠気が一気に襲ってくる。
まだ話をしていたいのに瞼をあげられない。
「大丈夫。もう、勝手に...いなくなったり、しないから」
まだ話しづらそうにしている七海に頭を撫でられ、そっと目を閉じる。
次に起きたらどんな話をしようと考えながら、意識は一気に暗いところまで落ちていった。
「ん...あれ、もうお昼?」
「おはよう。今は2時だよ」
「え、そんなに寝ちゃってた!?」
がばっと体を起こすと、そこには先程見たときよりもずっと顔色がいい七海が微笑んでいた。
「さっきお医者さんが来て、点滴を換えてくれた。もう少し大人しくしてたら、帰っていいって言ってくれたよ」
「そうなんだ...」
体を起こそうとするのを補助していると、背後に覚えのある気配を感じる。
そこには、仕事終わりであろうラッシュさんと山奥でひとり願っていた神様が立っていた。
「お嬢さん、起きてたのか」
「無事に終わったみたいでよかった。...怪我は痛そうだけど、命があるならそれでいい」
「ふたりとも...ごめんなさい。ありがとう、ございます」
頭を下げる七海の隣で僕も軽く一礼する。
彼女が助かったのはきっと美桜さんのおかげで、僕が途方にくれているところを助けてくれたのはラッシュさんたちだ。
「...ケイトならもう少ししたら来るはずだぞ。もしかしたら朝になるかもしれないって言ってたけどな」
「忙しいんですね...」
「ノワールをシェリに預かってもらってるんだけど、あのふたりは大丈夫?」
「元気そうだったぞ」
いつもどおりの他愛ない会話...この瞬間だけで僕の心は一気に明るくなる。
七海のことは家に連れて帰ってからもきちんとサポートするし、もっと強くなってずっお側で護っていく。
わいわい話すみんなを少し離れた場所から見つめながらそんなことを決めた。
そして深夜、七海はなかなか寝つけないのかまだ起きている。
「...傷、痛む?」
「ちょっとだけ。でも、だいぶ痛みがなくなってきたよ」
「それならいいけど...」
「本当に終わったんだなって思ったら、寝ちゃうのが勿体無い気がしちゃった。
...アイス、早く買いに行きたいな」
その瞳にはもう寂しさがない。
起きたての頃よりは安心してくれているのだと思うとほっとするものの、やはり不安に思っている部分もあるのだろう。
「新しいやつ、出てるかもしれないね」
「その前にまずは退院しないと...」
「すぐ帰れるよ。コンビニなら近いから、許してもらえるんじゃないかな?」
「ふたりで星も見たい」
「望遠鏡、ちゃんと手入れしてるからきっと綺麗に見えるよ」
「楽しみ...」
いつまでも、この奇跡のような日常を護っていこう。

──七海が側にいてくれれば、きっとどんなことがあっても最強でいられるから。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

寝室から喘ぎ声が聞こえてきて震える私・・・ベッドの上で激しく絡む浮気女に復讐したい

白崎アイド
大衆娯楽
カチャッ。 私は静かに玄関のドアを開けて、足音を立てずに夫が寝ている寝室に向かって入っていく。 「あの人、私が

校長室のソファの染みを知っていますか?

フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。 しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。 座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る

隣の席の女の子がエッチだったのでおっぱい揉んでみたら発情されました

ねんごろ
恋愛
隣の女の子がエッチすぎて、思わず授業中に胸を揉んでしまったら…… という、とんでもないお話を書きました。 ぜひ読んでください。

娼館で元夫と再会しました

無味無臭(不定期更新)
恋愛
公爵家に嫁いですぐ、寡黙な夫と厳格な義父母との関係に悩みホームシックにもなった私は、ついに耐えきれず離縁状を机に置いて嫁ぎ先から逃げ出した。 しかし実家に帰っても、そこに私の居場所はない。 連れ戻されてしまうと危惧した私は、自らの体を売って生計を立てることにした。 「シーク様…」 どうして貴方がここに? 元夫と娼館で再会してしまうなんて、なんという不運なの!

私は何人とヤれば解放されるんですか?

ヘロディア
恋愛
初恋の人を探して貴族に仕えることを選んだ主人公。しかし、彼女に与えられた仕事とは、貴族たちの夜中の相手だった…

[R18] 激しめエロつめあわせ♡

ねねこ
恋愛
短編のエロを色々と。 激しくて濃厚なの多め♡ 苦手な人はお気をつけくださいませ♡

【R18】もう一度セックスに溺れて

ちゅー
恋愛
-------------------------------------- 「んっ…くっ…♡前よりずっと…ふか、い…」 過分な潤滑液にヌラヌラと光る間口に亀頭が抵抗なく吸い込まれていく。久しぶりに男を受け入れる肉道は最初こそ僅かな狭さを示したものの、愛液にコーティングされ膨張した陰茎を容易く受け入れ、すぐに柔らかな圧力で応えた。 -------------------------------------- 結婚して五年目。互いにまだ若い夫婦は、愛情も、情熱も、熱欲も多分に持ち合わせているはずだった。仕事と家事に忙殺され、いつの間にかお互いが生活要員に成り果ててしまった二人の元へ”夫婦性活を豹変させる”と銘打たれた宝石が届く。

車の中で会社の後輩を喘がせている

ヘロディア
恋愛
会社の後輩と”そういう”関係にある主人公。 彼らはどこでも交わっていく…

処理中です...