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断暮篇(たちぐらしへん)
私が話すべきこと
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「木葉、体はもう大丈夫なの?」
「...ごめん、実はまだちょっと重くて上手く動けないんだ」
朝から動くのはかなり負担がかかるはずなのに、それでも彼は私が話しているから来てくれた。
...私ももう、隠しておくわけにはいかない。
どんなことから話せばいいのだろう。
もう隠し事はしないと決めたのだから、美桜さんと話したことを言うべきだとは思っている。
(木葉が起きるまでに考えておかないと)
そしてお昼前、彼はまだ少し怠そうにしながら伸びをする。
「おはよう...」
「おはよう。えっと、その、」
「...ご飯、食べながら話をしよう」
木葉は怒っているわけでもなく、いつもの笑顔でそう言ってくれる。
何を話そうか全部まとまった訳じゃないけれど、とにかく話をしないことには何も変わらないのだ。
(...覚悟を決めよう)
「私、美桜さんに色々教えてもらったんだ。あの家についてはよく分からないままだけど、新しいお守りの作り方もお神楽や剣舞の道具も送ってもらって...」
「新しいお守り?」
「...今までのじゃ弱すぎるような気がして、木葉を護れる力が欲しかった」
そんなありふれた言葉を並べることしかできない私を、木葉は目を逸らさずにずっと見ていてくれた。
話も真剣に聞いてくれているのもちゃんと感じている。
──私が手紙に書いたのは、急ぎで教えてほしいということと日常を護りたいという願いだけだった。
それなのに、美桜さんは全部を汲み取って丁寧な返信と必要なものをノワールに預けてくれたのだ。
便箋には、《あなたならきっとできる》と書かれていた。
「剣舞の方が得意だけど、足に負担がかかるからお神楽にしようと思ったんだ」
「...その結果が、さっきやってたあれ?」
私はただ頷いて話を続ける。
「できれば木葉に知られたくなかった。無理をしてるって思われたくなくて、ごめんって言わせたくなくて...。
だから、木葉が起きていなさそうな時間にできる朝露の舞をやってみようと思ったんだ」
「...話してくれてありがとう。まだちょっと理解が追いついていない部分もあるけど、僕が気にしないようにって頑張ってくれていたことはちゃんと分かったよ」
彼はまたただ笑っている。
笑顔が嘘というわけではなさそうだが、不安を隠すようなものだった。
「...でも、結局不安にさせちゃったね」
「思いやってくれたことは嬉しかったよ」
ふたり揃って箸を持ち直す。
「もう少し食べ進めたら、僕がしたこともちゃんと話すね。まだまとまりきってないけど、できるだけ分かりやすくできるように頑張る」
「うん。...待ってる」
日常を護りたいことは伝えられたならそれでいい。
(...私にもっとコミュニケーション能力があればよかったのに)
「...ごめん、実はまだちょっと重くて上手く動けないんだ」
朝から動くのはかなり負担がかかるはずなのに、それでも彼は私が話しているから来てくれた。
...私ももう、隠しておくわけにはいかない。
どんなことから話せばいいのだろう。
もう隠し事はしないと決めたのだから、美桜さんと話したことを言うべきだとは思っている。
(木葉が起きるまでに考えておかないと)
そしてお昼前、彼はまだ少し怠そうにしながら伸びをする。
「おはよう...」
「おはよう。えっと、その、」
「...ご飯、食べながら話をしよう」
木葉は怒っているわけでもなく、いつもの笑顔でそう言ってくれる。
何を話そうか全部まとまった訳じゃないけれど、とにかく話をしないことには何も変わらないのだ。
(...覚悟を決めよう)
「私、美桜さんに色々教えてもらったんだ。あの家についてはよく分からないままだけど、新しいお守りの作り方もお神楽や剣舞の道具も送ってもらって...」
「新しいお守り?」
「...今までのじゃ弱すぎるような気がして、木葉を護れる力が欲しかった」
そんなありふれた言葉を並べることしかできない私を、木葉は目を逸らさずにずっと見ていてくれた。
話も真剣に聞いてくれているのもちゃんと感じている。
──私が手紙に書いたのは、急ぎで教えてほしいということと日常を護りたいという願いだけだった。
それなのに、美桜さんは全部を汲み取って丁寧な返信と必要なものをノワールに預けてくれたのだ。
便箋には、《あなたならきっとできる》と書かれていた。
「剣舞の方が得意だけど、足に負担がかかるからお神楽にしようと思ったんだ」
「...その結果が、さっきやってたあれ?」
私はただ頷いて話を続ける。
「できれば木葉に知られたくなかった。無理をしてるって思われたくなくて、ごめんって言わせたくなくて...。
だから、木葉が起きていなさそうな時間にできる朝露の舞をやってみようと思ったんだ」
「...話してくれてありがとう。まだちょっと理解が追いついていない部分もあるけど、僕が気にしないようにって頑張ってくれていたことはちゃんと分かったよ」
彼はまたただ笑っている。
笑顔が嘘というわけではなさそうだが、不安を隠すようなものだった。
「...でも、結局不安にさせちゃったね」
「思いやってくれたことは嬉しかったよ」
ふたり揃って箸を持ち直す。
「もう少し食べ進めたら、僕がしたこともちゃんと話すね。まだまとまりきってないけど、できるだけ分かりやすくできるように頑張る」
「うん。...待ってる」
日常を護りたいことは伝えられたならそれでいい。
(...私にもっとコミュニケーション能力があればよかったのに)
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