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断暮篇(たちぐらしへん)
つきまとうもの
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特に変わらない日常生活を送ることができる、それが普通ではないことはよく分かっていた...はずだった。
「買いたいものは全部揃った?」
「うん。今日はありがとう」
「僕がやりたかっただけだから」
夜食を楽しんだ翌日の夕方、そんな話をしながら食材の買い出しをしているところに1羽の烏が翼をはためかせているのが目に入った。
中に入ってはいけないと伝えておいたからか、外でおろおろしながら待っているようだ。
「お会計、これで終わらせておいて。荷物は僕が持つから、もし袋詰めが終わってもここにいてね」
七海をひとりにしてしまうのは不安で仕方がないが、あんなに慌てた様子のノワールを見るのは初めてだ。
財布を渡して見つからないように外に出る。
まだ翼の怪我が治りきっていないので、腕に止まらせて話を聞くことにした。
「ノワール、どうかしたの?」
外に1歩出ただけですぐに状況を理解した。
周りに数人の男たちが張り込んでいて、その目は明らかに七海の方を向いている。
...僕に
「大丈夫だよ、僕がなんとかするから」
七海にこの状況を知られたくなくて、勢いをつけて走りこむ。
相手の懐に忍びこみ、そのまま手刀をおろした。
「...次はどのお兄さんが相手してくれるの?」
そうしてなんとか1分かけずに相手の処理を終える。
「知らせてくれてありがとう。...七海に見つからないように移動させておかないとね」
なんとか取り逃がさなかったが、七海に手を出そうとしているにしては弱すぎる。
今は考えても仕方がないと、急ぎ足で中に戻った。
「おまたせ。待たせちゃってごめんね」
「ううん、全然...」
なんだか背中を見られているような気がする。
不自然に砂ぼこりでもついていただろうか...そう思っていると、七海の手が僕の肩に触れた。
「どうかしたの?」
「...ちょっとよくないものがついてたから」
どういう意味なのかは分からなかったが、取り敢えずありがとうとだけ口にする。
それ以上何か話すと余計なことまで言ってしまいそうで、なかなか言葉にすることができなかった。
「杖の先、そろそろ換えた方がよさそうだね」
「そう、だね...」
家まで誰かがつけてきている様子はなかった。
別のものの気配も感じなかったし、恐らく家までは来られなかったのだろう。
「七海、大丈夫?」
「う、うん...。木葉こそ平気?」
何故そんなことを訊かれたのか分からなかったが、曖昧な返答しかできない。
荷物を整理してひとり部屋に戻り、恐る恐る服の下を見てみる。
「やっぱり...」
そこには、何かに掴まれたような痣ができていた。
「買いたいものは全部揃った?」
「うん。今日はありがとう」
「僕がやりたかっただけだから」
夜食を楽しんだ翌日の夕方、そんな話をしながら食材の買い出しをしているところに1羽の烏が翼をはためかせているのが目に入った。
中に入ってはいけないと伝えておいたからか、外でおろおろしながら待っているようだ。
「お会計、これで終わらせておいて。荷物は僕が持つから、もし袋詰めが終わってもここにいてね」
七海をひとりにしてしまうのは不安で仕方がないが、あんなに慌てた様子のノワールを見るのは初めてだ。
財布を渡して見つからないように外に出る。
まだ翼の怪我が治りきっていないので、腕に止まらせて話を聞くことにした。
「ノワール、どうかしたの?」
外に1歩出ただけですぐに状況を理解した。
周りに数人の男たちが張り込んでいて、その目は明らかに七海の方を向いている。
...僕に
「大丈夫だよ、僕がなんとかするから」
七海にこの状況を知られたくなくて、勢いをつけて走りこむ。
相手の懐に忍びこみ、そのまま手刀をおろした。
「...次はどのお兄さんが相手してくれるの?」
そうしてなんとか1分かけずに相手の処理を終える。
「知らせてくれてありがとう。...七海に見つからないように移動させておかないとね」
なんとか取り逃がさなかったが、七海に手を出そうとしているにしては弱すぎる。
今は考えても仕方がないと、急ぎ足で中に戻った。
「おまたせ。待たせちゃってごめんね」
「ううん、全然...」
なんだか背中を見られているような気がする。
不自然に砂ぼこりでもついていただろうか...そう思っていると、七海の手が僕の肩に触れた。
「どうかしたの?」
「...ちょっとよくないものがついてたから」
どういう意味なのかは分からなかったが、取り敢えずありがとうとだけ口にする。
それ以上何か話すと余計なことまで言ってしまいそうで、なかなか言葉にすることができなかった。
「杖の先、そろそろ換えた方がよさそうだね」
「そう、だね...」
家まで誰かがつけてきている様子はなかった。
別のものの気配も感じなかったし、恐らく家までは来られなかったのだろう。
「七海、大丈夫?」
「う、うん...。木葉こそ平気?」
何故そんなことを訊かれたのか分からなかったが、曖昧な返答しかできない。
荷物を整理してひとり部屋に戻り、恐る恐る服の下を見てみる。
「やっぱり...」
そこには、何かに掴まれたような痣ができていた。
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