ハーフ&ハーフ

黒蝶

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遡暮篇(のぼりぐらしへん)

顔面蒼白

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それは、木葉が帰ってくる少し前のこと。
(食器はこれで片づけ終わり。...ずいぶん時間がかかっちゃった)
読みかけの本の頁を進めようかと手をかけたとき、インターホンが鳴り響く。
こんな夜中にお客さんが来るなんてことがあり得るだろうか。
それに、木葉は事前に来客があるとき必ず教えてくれる。
...開けてもいいのだろうか。
「すみません...」
小さな声が聞こえて、正体を理解した私はそのまま扉の方へ向かう。
そこにいたのは、つぶらな瞳の少女だった。
「シェリ、どうしたの?」
「あ、あ、の...」
その顔は真っ青で、腕には見覚えのある烏が抱きかかえられている。
取り敢えず中で話を聞いた方がよさそうだ。
「私の家、というわけではないけど...木葉は今仕事でいないから一緒に紅茶でも飲まない?」
「え、あ、お、ねが...」
だいぶ動揺しているのか、いつもよりも口調がたどたどしい。
手を引いて招きいれ、そのまま座って待っているように話をする。
シェリは俯いたままノワールを抱きしめていて、どうすればいいのか分からなくなった。
(落ち着いてもらうならハーブティーがいいかな...)
色々考えながら淹れると、シェリはポケットからクッキーを取り出す。
「あの、よかっ、たら...食べて」
「ありがとう。ハーブティー、苦手じゃなかった?」
ゆっくり頷くシェリと向かい合わせに座って、そのまま一口お茶を飲む。
「何があったのか聞いてもいい?」
「わた、私が、火傷...」
「怪我したの?」
首を横にふるシェリの腕からノワールが飛びたとうとする。
けれど、ばさっと広げられた翼には見覚えのない傷が広がっていた。
「わ、私を、庇って...」
「料理をしてたの?」
「夜食に、お菓子、作りた、て...」
どうして真っ青な顔をしていたのか、そこまでの話を聞いて納得した。
ノワールが怪我をしたのはシェリが鍋か何かをひっくり返してしまいそうになったのだろう。
「木葉には一緒に話すから、そんなに心配しなくても大丈夫だよ。
...ノワールの手当てをするから、もしよかったら手伝ってくれる?」
「う、うん」
ずっと申し訳なさそうにしているシェリの頭をそっと撫でる。
「あの...?」
「ノワールはきっと、シェリに怪我をしてほしくなかったんだと思う。だから、こういうときはごめんよりありがとうの方がいいんじゃないかな...?」
「ありがと、ノワール...さん」
軟膏を塗ってから、薬草と一緒に包帯を巻く。
しばらく安静にしていればすぐに治るだろう...多分。
そうこうしているうちに、そのときは訪れた。
「ただいま」
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