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追暮篇(おいぐらしへん)
木葉を追って
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「ん...」
次に目を開けたときには、空が真っ黒に染まっていた。
(どんより曇り...)
ずきずきと痛む頭を押さえながら体を起こすと、すぐ近くにシェリがいた。
「シェリ、どうして...」
「お話、しにきた」
状況に追いつけずに、取り敢えず頭を整理するところからはじめることにする。
私は木葉に血をあげて、その疲労から今まで眠ってしまっていた。
(そうだ、木葉がいない)
「シェリ、木葉はどこにいるの?」
「そ、れは...」
「おう、起きたか」
ラッシュさんはシェリに何か話して、それから私に向き直る。
「悪いが、お嬢さんには朝までここで過ごしてもらう」
「木葉はどこにいるんですか?」
「今は教えられない」
「そんな...」
まだずきずきと痛む頭で思考を巡らせる。
こんな時間から私をラッシュさんたちに預けて出掛ける理由、ひとりで行く必要があった理由、行くならどんな場所なのか...。
(...まさか)
「すみません。私には行くところがあるのでこれで失礼します」
「あいつから頼まれていてな。ここから出すわけにはいかないんだ。
だが、もし諦めてくれないようなら...」
ラッシュさんはいつかのように構える。
能力を使ってでも止められてしまうのだとすぐに理解した。
「...分かりました」
「それじゃあ、」
「でも、私は護ってもらう為に木葉の側にいる訳じゃない」
今の私の体力ではとても勝てない。...今じゃなくても勝てる可能性なんてはじめからないのだろう。
けれど、それで諦められるほど私はいい子じゃない。
(...道具ならあるし、行かないと)
「すみません、ラッシュさん。...シェリもありがとう」
「お嬢さん、ちょっと待、」
窓枠に手をかけて、そのまま重力に身を任せる。
ふたり分の手が伸びてきたけれど、それを掴むことはなかった。
「痛っ...」
下の植えこみに雑な着地をして、そのまま夜を駆けていく。
木葉が護ろうとしてくれたことも、シェリたちが止めてくれた理由も何となく分かる。
それでも、私は諦める訳にはいかない。
ふたりで一緒にいようと約束した。
これから先もふたりで笑いあうには、ピンチに陥っているのが分かっているのにただ護られている訳にはいかない。
「ノワール...お願い、私を木葉のところまで連れていって!」
ノワールはかあ、とひとこえ鳴いて、そのまま道案内をするように夜空に翼をはためかせる。
頭痛薬を1粒口に含みながら、痛む足で後を追う。
『七海。何があっても僕は...』
私が完全に眠りに落ちる前に聞いた言葉、あれはきっと木葉が私を置いていく前に何か言っていたのだ。
体に感覚なんてない。
ただ、戦うことはできなくても護ることはできるはずだ。
洋服にだけ仕込めるだけ仕込んでおいたものを取り出して、舞い方をイメージしながらノワールを追い掛ける。
(木葉、無事でいて──)
次に目を開けたときには、空が真っ黒に染まっていた。
(どんより曇り...)
ずきずきと痛む頭を押さえながら体を起こすと、すぐ近くにシェリがいた。
「シェリ、どうして...」
「お話、しにきた」
状況に追いつけずに、取り敢えず頭を整理するところからはじめることにする。
私は木葉に血をあげて、その疲労から今まで眠ってしまっていた。
(そうだ、木葉がいない)
「シェリ、木葉はどこにいるの?」
「そ、れは...」
「おう、起きたか」
ラッシュさんはシェリに何か話して、それから私に向き直る。
「悪いが、お嬢さんには朝までここで過ごしてもらう」
「木葉はどこにいるんですか?」
「今は教えられない」
「そんな...」
まだずきずきと痛む頭で思考を巡らせる。
こんな時間から私をラッシュさんたちに預けて出掛ける理由、ひとりで行く必要があった理由、行くならどんな場所なのか...。
(...まさか)
「すみません。私には行くところがあるのでこれで失礼します」
「あいつから頼まれていてな。ここから出すわけにはいかないんだ。
だが、もし諦めてくれないようなら...」
ラッシュさんはいつかのように構える。
能力を使ってでも止められてしまうのだとすぐに理解した。
「...分かりました」
「それじゃあ、」
「でも、私は護ってもらう為に木葉の側にいる訳じゃない」
今の私の体力ではとても勝てない。...今じゃなくても勝てる可能性なんてはじめからないのだろう。
けれど、それで諦められるほど私はいい子じゃない。
(...道具ならあるし、行かないと)
「すみません、ラッシュさん。...シェリもありがとう」
「お嬢さん、ちょっと待、」
窓枠に手をかけて、そのまま重力に身を任せる。
ふたり分の手が伸びてきたけれど、それを掴むことはなかった。
「痛っ...」
下の植えこみに雑な着地をして、そのまま夜を駆けていく。
木葉が護ろうとしてくれたことも、シェリたちが止めてくれた理由も何となく分かる。
それでも、私は諦める訳にはいかない。
ふたりで一緒にいようと約束した。
これから先もふたりで笑いあうには、ピンチに陥っているのが分かっているのにただ護られている訳にはいかない。
「ノワール...お願い、私を木葉のところまで連れていって!」
ノワールはかあ、とひとこえ鳴いて、そのまま道案内をするように夜空に翼をはためかせる。
頭痛薬を1粒口に含みながら、痛む足で後を追う。
『七海。何があっても僕は...』
私が完全に眠りに落ちる前に聞いた言葉、あれはきっと木葉が私を置いていく前に何か言っていたのだ。
体に感覚なんてない。
ただ、戦うことはできなくても護ることはできるはずだ。
洋服にだけ仕込めるだけ仕込んでおいたものを取り出して、舞い方をイメージしながらノワールを追い掛ける。
(木葉、無事でいて──)
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