ハーフ&ハーフ

黒蝶

文字の大きさ
上 下
154 / 258
追暮篇(おいぐらしへん)

木葉を追って

しおりを挟む
「ん...」
次に目を開けたときには、空が真っ黒に染まっていた。
(どんより曇り...)
ずきずきと痛む頭を押さえながら体を起こすと、すぐ近くにシェリがいた。
「シェリ、どうして...」
「お話、しにきた」
状況に追いつけずに、取り敢えず頭を整理するところからはじめることにする。
私は木葉に血をあげて、その疲労から今まで眠ってしまっていた。
(そうだ、木葉がいない)
「シェリ、木葉はどこにいるの?」
「そ、れは...」
「おう、起きたか」
ラッシュさんはシェリに何か話して、それから私に向き直る。
「悪いが、お嬢さんには朝までここで過ごしてもらう」
「木葉はどこにいるんですか?」
「今は教えられない」
「そんな...」
まだずきずきと痛む頭で思考を巡らせる。
こんな時間から私をラッシュさんたちに預けて出掛ける理由、ひとりで行く必要があった理由、行くならどんな場所なのか...。
(...まさか)
「すみません。私には行くところがあるのでこれで失礼します」
「あいつから頼まれていてな。ここから出すわけにはいかないんだ。
だが、もし諦めてくれないようなら...」
ラッシュさんはいつかのように構える。
能力を使ってでも止められてしまうのだとすぐに理解した。
「...分かりました」
「それじゃあ、」
「でも、私は護ってもらう為に木葉の側にいる訳じゃない」
今の私の体力ではとても勝てない。...今じゃなくても勝てる可能性なんてはじめからないのだろう。
けれど、それで諦められるほど私はいい子じゃない。
(...道具ならあるし、行かないと)
「すみません、ラッシュさん。...シェリもありがとう」
「お嬢さん、ちょっと待、」
窓枠に手をかけて、そのまま重力に身を任せる。
ふたり分の手が伸びてきたけれど、それを掴むことはなかった。
「痛っ...」
下の植えこみに雑な着地をして、そのまま夜を駆けていく。
木葉が護ろうとしてくれたことも、シェリたちが止めてくれた理由も何となく分かる。
それでも、私は諦める訳にはいかない。
ふたりで一緒にいようと約束した。
これから先もふたりで笑いあうには、ピンチに陥っているのが分かっているのにただ護られている訳にはいかない。
「ノワール...お願い、私を木葉のところまで連れていって!」
ノワールはかあ、とひとこえ鳴いて、そのまま道案内をするように夜空に翼をはためかせる。
頭痛薬を1粒口に含みながら、痛む足で後を追う。
『七海。何があっても僕は...』
私が完全に眠りに落ちる前に聞いた言葉、あれはきっと木葉が私を置いていく前に何か言っていたのだ。
体に感覚なんてない。
ただ、戦うことはできなくても護ることはできるはずだ。
洋服にだけ仕込めるだけ仕込んでおいたものを取り出して、舞い方をイメージしながらノワールを追い掛ける。
(木葉、無事でいて──)
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

寝室から喘ぎ声が聞こえてきて震える私・・・ベッドの上で激しく絡む浮気女に復讐したい

白崎アイド
大衆娯楽
カチャッ。 私は静かに玄関のドアを開けて、足音を立てずに夫が寝ている寝室に向かって入っていく。 「あの人、私が

校長室のソファの染みを知っていますか?

フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。 しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。 座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る

隣の席の女の子がエッチだったのでおっぱい揉んでみたら発情されました

ねんごろ
恋愛
隣の女の子がエッチすぎて、思わず授業中に胸を揉んでしまったら…… という、とんでもないお話を書きました。 ぜひ読んでください。

娼館で元夫と再会しました

無味無臭(不定期更新)
恋愛
公爵家に嫁いですぐ、寡黙な夫と厳格な義父母との関係に悩みホームシックにもなった私は、ついに耐えきれず離縁状を机に置いて嫁ぎ先から逃げ出した。 しかし実家に帰っても、そこに私の居場所はない。 連れ戻されてしまうと危惧した私は、自らの体を売って生計を立てることにした。 「シーク様…」 どうして貴方がここに? 元夫と娼館で再会してしまうなんて、なんという不運なの!

私は何人とヤれば解放されるんですか?

ヘロディア
恋愛
初恋の人を探して貴族に仕えることを選んだ主人公。しかし、彼女に与えられた仕事とは、貴族たちの夜中の相手だった…

[R18] 激しめエロつめあわせ♡

ねねこ
恋愛
短編のエロを色々と。 激しくて濃厚なの多め♡ 苦手な人はお気をつけくださいませ♡

【R18】もう一度セックスに溺れて

ちゅー
恋愛
-------------------------------------- 「んっ…くっ…♡前よりずっと…ふか、い…」 過分な潤滑液にヌラヌラと光る間口に亀頭が抵抗なく吸い込まれていく。久しぶりに男を受け入れる肉道は最初こそ僅かな狭さを示したものの、愛液にコーティングされ膨張した陰茎を容易く受け入れ、すぐに柔らかな圧力で応えた。 -------------------------------------- 結婚して五年目。互いにまだ若い夫婦は、愛情も、情熱も、熱欲も多分に持ち合わせているはずだった。仕事と家事に忙殺され、いつの間にかお互いが生活要員に成り果ててしまった二人の元へ”夫婦性活を豹変させる”と銘打たれた宝石が届く。

車の中で会社の後輩を喘がせている

ヘロディア
恋愛
会社の後輩と”そういう”関係にある主人公。 彼らはどこでも交わっていく…

処理中です...