144 / 258
追暮篇(おいぐらしへん)
作業開始
しおりを挟む
「木葉、着いたよ」
小声で話しかけてみるけれど、全く反応がない。
余程疲れていたのか、ラッシュさんたちの話が濃厚だったからか...どちらにしても、これだけ陽がのぼってしまえば動けないのは明白だった。
「布団に寝かせてあげたい。ラッシュ、運んであげて」
「そうだな。...よっと」
軽々と持ち上げたラッシュさんに、美桜さんとふたり呆然と立ち尽くす。
「それで、本当にこれだけでいいのか?」
「忘れ物はないと思う。それより、この立派な建物は一体...」
「おまえの社だよ。そこまで立派でもないはずだけどな」
前にいた場所が質素な造りだったのか、ラッシュさんが新しく創ったものが豪華なのか...私には分からない。
(ものすごく豪華だけど、かなり広いような気もする)
きっと私や木葉が頻繁に来るだろうからと少し広めにしてくれたのだろうけれど、こんなに大きなお社では掃除をするのが大変な気もする。
「この柱、ちょっと借りるぞ」
「...うん、どうぞ」
数部屋あるなかから、1番使い勝手がよさそうな場所の柱に持ってきたそれを少しずつ貼りつけていく。
「...よし、できたぞ。これで体がだいぶ軽いんじゃないか?」
「あ、本当だ。...私はこれがないと死んじゃうの?」
「いや、そういう訳じゃないだろうが...大体の神が1ヶ所に留まる癖があるだろ?それでそこにある持ち物に力が飛び散ってることがあるらしい。
それがおまえの中に戻ってきたから、今は元気になったように感じたんだろう」
「長生きしていると知識も多い」
「余計なこと言うなら今すぐ柱の細工解いて元に戻すぞ」
そんなふうに和やかに言い合っている声を聞きながら、私は木葉の側で色々な荷物を段ボールから取り出していく。
「...ふう」
台所に色々なものを運んでひと段落ついたとき、何か飲み物でも淹れて持っていこうと思いつく。
「あの、ふたりとも...お茶はいかがですか?」
「ありがたくもらうよ。ほぼ徹夜状態だし、ついでにこれでも一緒に食べるか?」
「ありがとう。七海はお茶を淹れるのが上手になったね。...それ、何?」
ラッシュさんがよく分からない箱を開けて出てきたのは、ほくほくのホットサンドだった。
「これってもしかして、道の駅か何かで売ってるものじゃ...」
「丁度立ち寄る時間があったから買っておいたんだ。...まあ、お嬢さんの料理には敵わないけどな」
こんなこともあろうかと、実はお弁当を作ってきておいたのだ。
それも一緒に食べてもらおうと思っていたのがばれてしまったらしい。
「私、プロの味には勝てませんよ...?」
おずおずとバスケットを差し出すと、美桜さんは不思議そうに首を傾げてそれを受け取る。
ラッシュさんはただ笑って中のものを食べてくれた。
「プロとかプロじゃないとかより、こういうものは気持ちだと思うけどな...。うん、やっぱり美味い」
小声で話しかけてみるけれど、全く反応がない。
余程疲れていたのか、ラッシュさんたちの話が濃厚だったからか...どちらにしても、これだけ陽がのぼってしまえば動けないのは明白だった。
「布団に寝かせてあげたい。ラッシュ、運んであげて」
「そうだな。...よっと」
軽々と持ち上げたラッシュさんに、美桜さんとふたり呆然と立ち尽くす。
「それで、本当にこれだけでいいのか?」
「忘れ物はないと思う。それより、この立派な建物は一体...」
「おまえの社だよ。そこまで立派でもないはずだけどな」
前にいた場所が質素な造りだったのか、ラッシュさんが新しく創ったものが豪華なのか...私には分からない。
(ものすごく豪華だけど、かなり広いような気もする)
きっと私や木葉が頻繁に来るだろうからと少し広めにしてくれたのだろうけれど、こんなに大きなお社では掃除をするのが大変な気もする。
「この柱、ちょっと借りるぞ」
「...うん、どうぞ」
数部屋あるなかから、1番使い勝手がよさそうな場所の柱に持ってきたそれを少しずつ貼りつけていく。
「...よし、できたぞ。これで体がだいぶ軽いんじゃないか?」
「あ、本当だ。...私はこれがないと死んじゃうの?」
「いや、そういう訳じゃないだろうが...大体の神が1ヶ所に留まる癖があるだろ?それでそこにある持ち物に力が飛び散ってることがあるらしい。
それがおまえの中に戻ってきたから、今は元気になったように感じたんだろう」
「長生きしていると知識も多い」
「余計なこと言うなら今すぐ柱の細工解いて元に戻すぞ」
そんなふうに和やかに言い合っている声を聞きながら、私は木葉の側で色々な荷物を段ボールから取り出していく。
「...ふう」
台所に色々なものを運んでひと段落ついたとき、何か飲み物でも淹れて持っていこうと思いつく。
「あの、ふたりとも...お茶はいかがですか?」
「ありがたくもらうよ。ほぼ徹夜状態だし、ついでにこれでも一緒に食べるか?」
「ありがとう。七海はお茶を淹れるのが上手になったね。...それ、何?」
ラッシュさんがよく分からない箱を開けて出てきたのは、ほくほくのホットサンドだった。
「これってもしかして、道の駅か何かで売ってるものじゃ...」
「丁度立ち寄る時間があったから買っておいたんだ。...まあ、お嬢さんの料理には敵わないけどな」
こんなこともあろうかと、実はお弁当を作ってきておいたのだ。
それも一緒に食べてもらおうと思っていたのがばれてしまったらしい。
「私、プロの味には勝てませんよ...?」
おずおずとバスケットを差し出すと、美桜さんは不思議そうに首を傾げてそれを受け取る。
ラッシュさんはただ笑って中のものを食べてくれた。
「プロとかプロじゃないとかより、こういうものは気持ちだと思うけどな...。うん、やっぱり美味い」
0
お気に入りに追加
8
あなたにおすすめの小説
寝室から喘ぎ声が聞こえてきて震える私・・・ベッドの上で激しく絡む浮気女に復讐したい
白崎アイド
大衆娯楽
カチャッ。
私は静かに玄関のドアを開けて、足音を立てずに夫が寝ている寝室に向かって入っていく。
「あの人、私が
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
隣の席の女の子がエッチだったのでおっぱい揉んでみたら発情されました
ねんごろ
恋愛
隣の女の子がエッチすぎて、思わず授業中に胸を揉んでしまったら……
という、とんでもないお話を書きました。
ぜひ読んでください。
娼館で元夫と再会しました
無味無臭(不定期更新)
恋愛
公爵家に嫁いですぐ、寡黙な夫と厳格な義父母との関係に悩みホームシックにもなった私は、ついに耐えきれず離縁状を机に置いて嫁ぎ先から逃げ出した。
しかし実家に帰っても、そこに私の居場所はない。
連れ戻されてしまうと危惧した私は、自らの体を売って生計を立てることにした。
「シーク様…」
どうして貴方がここに?
元夫と娼館で再会してしまうなんて、なんという不運なの!
【R18】もう一度セックスに溺れて
ちゅー
恋愛
--------------------------------------
「んっ…くっ…♡前よりずっと…ふか、い…」
過分な潤滑液にヌラヌラと光る間口に亀頭が抵抗なく吸い込まれていく。久しぶりに男を受け入れる肉道は最初こそ僅かな狭さを示したものの、愛液にコーティングされ膨張した陰茎を容易く受け入れ、すぐに柔らかな圧力で応えた。
--------------------------------------
結婚して五年目。互いにまだ若い夫婦は、愛情も、情熱も、熱欲も多分に持ち合わせているはずだった。仕事と家事に忙殺され、いつの間にかお互いが生活要員に成り果ててしまった二人の元へ”夫婦性活を豹変させる”と銘打たれた宝石が届く。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる