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追暮篇(おいぐらしへん)
心の芯が強い人
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そっと目を開けると、ふたりの話し声が聞こえた。
その話はとても苦々しいもので、つい聞き入ってしまう。
「人間が憎いとは思わなかったの?」
「勿論あいつを殺したやつは憎いし、あいつに対しては申し訳ない気持ちでいっぱいだ。
けど、いい人間もいるだろ?お嬢さんみたいな...少なくとも、俺はそう信じてる」
「確かに最悪な人間は多いけど、そのなかにいい人も交ざってると思う」
「おまえらしい見解だな」
ふたりの言葉に涙が溢れてしまいそうになる。
生きている人間の方が時に何よりも残酷で...どんな言葉をかけていいか分からない。
「...七海」
木葉はずっと起きていたのか、寂しそうな表情をしている。
いつの間にか閉められたカーテンを開けるべきか...そんなことを考えていると、先に彼が動いた。
「今の話、もうちょっと詳しく知りたいな」
「悪い、ふたりがいるのをすっかり忘れてた。...で、お嬢さんはなんで泣いてるんだ?」
「ラッシュさんたちの話を途中から聞いちゃったからだよ。...ラッシュさんはアイリーンって人のことが本当に好きなんだね」
一旦車が停まって、ラッシュさんに見つめられる。
いつもどおり笑ってくれるけれど、なんだか無理をしているというのはすぐに理解した。
「ラッシュさん、そのアイリーンっていう人のことをずっと待ってるんでしょ?」
「...生まれ変わっても見つけてやるって約束したからな。だから、お嬢さん...そんなに悲しまなくても俺は平気だよ」
その声はとても優しかったけれど、どうしても訊いてみたいことがあった。
「大切に想っていた人がいなくなってしまうのは、怖くなかったんですか...?哀しいはずなのに、どうして強く振る舞えるの...?」
「俺は至って普通のことしかしてないぞ?約束は護る。...あのときできなかった分までな。
他人から見てどんなに馬鹿馬鹿しくても、俺はそう決めたんだ」
この人は強い。
何十年、もしかすると何百年とかかるかもしれない...最悪一生こない機会をずっと待っている。
私ならそんな日々を耐えられるだろうか。
...きっと寂しさで後を追いたくなるに違いない。
「俺だって泣くし、やっぱり寂しいって感じることもあるけど...それでも、いつかあいつに会ったらミシン返してやらないといけないからよ。
前向いていくしかないって思うんだ」
「ラッシュさんがかっこいいこと言ってる...」
「別にかっこつけたりしてるつもりはねえよ」
「あのときより男前になった?」
「そんなことないと思うけどな...」
俯いてしまった私に寄り添うように、木葉はずっと頭を撫でてくれた。
その手のぬくもりに甘えさせてもらいながら、ラッシュさんの話の続きを聞くことにする。
「それに、俺は独りじゃなかったからやってこられたんだ。...まあ、先にどうやって出会ったのかから話すべきか」
その話はとても苦々しいもので、つい聞き入ってしまう。
「人間が憎いとは思わなかったの?」
「勿論あいつを殺したやつは憎いし、あいつに対しては申し訳ない気持ちでいっぱいだ。
けど、いい人間もいるだろ?お嬢さんみたいな...少なくとも、俺はそう信じてる」
「確かに最悪な人間は多いけど、そのなかにいい人も交ざってると思う」
「おまえらしい見解だな」
ふたりの言葉に涙が溢れてしまいそうになる。
生きている人間の方が時に何よりも残酷で...どんな言葉をかけていいか分からない。
「...七海」
木葉はずっと起きていたのか、寂しそうな表情をしている。
いつの間にか閉められたカーテンを開けるべきか...そんなことを考えていると、先に彼が動いた。
「今の話、もうちょっと詳しく知りたいな」
「悪い、ふたりがいるのをすっかり忘れてた。...で、お嬢さんはなんで泣いてるんだ?」
「ラッシュさんたちの話を途中から聞いちゃったからだよ。...ラッシュさんはアイリーンって人のことが本当に好きなんだね」
一旦車が停まって、ラッシュさんに見つめられる。
いつもどおり笑ってくれるけれど、なんだか無理をしているというのはすぐに理解した。
「ラッシュさん、そのアイリーンっていう人のことをずっと待ってるんでしょ?」
「...生まれ変わっても見つけてやるって約束したからな。だから、お嬢さん...そんなに悲しまなくても俺は平気だよ」
その声はとても優しかったけれど、どうしても訊いてみたいことがあった。
「大切に想っていた人がいなくなってしまうのは、怖くなかったんですか...?哀しいはずなのに、どうして強く振る舞えるの...?」
「俺は至って普通のことしかしてないぞ?約束は護る。...あのときできなかった分までな。
他人から見てどんなに馬鹿馬鹿しくても、俺はそう決めたんだ」
この人は強い。
何十年、もしかすると何百年とかかるかもしれない...最悪一生こない機会をずっと待っている。
私ならそんな日々を耐えられるだろうか。
...きっと寂しさで後を追いたくなるに違いない。
「俺だって泣くし、やっぱり寂しいって感じることもあるけど...それでも、いつかあいつに会ったらミシン返してやらないといけないからよ。
前向いていくしかないって思うんだ」
「ラッシュさんがかっこいいこと言ってる...」
「別にかっこつけたりしてるつもりはねえよ」
「あのときより男前になった?」
「そんなことないと思うけどな...」
俯いてしまった私に寄り添うように、木葉はずっと頭を撫でてくれた。
その手のぬくもりに甘えさせてもらいながら、ラッシュさんの話の続きを聞くことにする。
「それに、俺は独りじゃなかったからやってこられたんだ。...まあ、先にどうやって出会ったのかから話すべきか」
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