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隠暮篇(かくれぐらしへん)
お誘い
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「木葉、そろそろ起きないと寝過ぎになっちゃうよ」
時計の針が12時を指す頃、そうして優しく起こされる。
「七海、おはよう」
「...おはよう」
お昼前に起こしてくれた彼女はなんだか元気がない。
「どうかしたの?何かあった?」
「ラッシュさんに起きたら連絡するように伝えてくれって言われた。
ご飯、温めなおすからその間に電話してみて」
「ありがとう...?」
答えになっていないような気もするが、一先ずラッシュさんには連絡した方がいいだろう。
もしかすると昨夜のことで何か分かったことがあるのかもしれない。
それに...シェリのことも心配だ。
「ラッシュさん、僕だけど今応対中とかじゃない?」
『おう。おまえさんに話しておきたいんだが...』
それから僕はラッシュさんの言葉を沢山聞いた。
シェリのこと、恐らくそれが悪い人間の仕業であること...。
そして、七海を側に置いて護った方がいいことも。
「それってつまり、同棲ってこと?期間はどれくらい」
電話口から聞こえた答えに思わず叫んでしまった。
「ええ!?あ、いや、僕はいいけど...」
キッチンを盗み見ると、七海はきょとんとした顔でこちらに視線を向けていた。
可愛くて撫でたくなる衝動を抑え、再び通話に意識を向ける。
「...分かった、じゃあ今夜」
「もう終わったの?」
「うん。ご飯ありがとう。いただきます」
いつもどおりを意識しながら食べていると七海に声をかけられる。
「木葉、」
「大丈夫だよ。だからそんなに不安そうな顔をしないで?」
こんなことになって1番不安を抱えているのは七海のはずだ。
それでも彼女は気丈に振る舞い、今もこうして僕の側にいてくれている。
...だったら僕にできることはただひとつ。
「七海、しばらくの間僕と一緒にここで生活してくれる?」
「迷惑じゃない...?」
「全然!寧ろ側にいてくれたら心強いな」
素直な思いをぶつけると、彼女はようやく安堵したような笑顔を見せてくれた。
犯人が何故シェリを狙ったのか、どこでそういうふうになったのか、正体を知っていてやられたのか...まだまだ分からないことは沢山ある。
それでも不安にならないのは、きっと七海が隣にいてくれるからだ。
「今夜仕事を早くあがれるから一緒に必要なものを取りに行こう。...その前に必要なものは買い揃えておこうか」
「いいの?」
「まだ時間があるし、折角ふたりでいられるんだからデートしたい。...駄目?」
「ううん、駄目じゃない。気分転換に少しだけ外の空気を吸いたいと思っていたから」
彼女の気が紛れるならいくらでもつきあおう。
それが今の僕にできる、唯一のことだから...。
もっと器用になんでもこなせればいいのに、なんて思ったのは何度目だろうか。
「木葉?」
「大丈夫だよ。行こうか」
頷いた七海の手をひいて、そのまま町を駆け出す。
──夕陽が目に滲みて、少しだけ泣きたくなった。
時計の針が12時を指す頃、そうして優しく起こされる。
「七海、おはよう」
「...おはよう」
お昼前に起こしてくれた彼女はなんだか元気がない。
「どうかしたの?何かあった?」
「ラッシュさんに起きたら連絡するように伝えてくれって言われた。
ご飯、温めなおすからその間に電話してみて」
「ありがとう...?」
答えになっていないような気もするが、一先ずラッシュさんには連絡した方がいいだろう。
もしかすると昨夜のことで何か分かったことがあるのかもしれない。
それに...シェリのことも心配だ。
「ラッシュさん、僕だけど今応対中とかじゃない?」
『おう。おまえさんに話しておきたいんだが...』
それから僕はラッシュさんの言葉を沢山聞いた。
シェリのこと、恐らくそれが悪い人間の仕業であること...。
そして、七海を側に置いて護った方がいいことも。
「それってつまり、同棲ってこと?期間はどれくらい」
電話口から聞こえた答えに思わず叫んでしまった。
「ええ!?あ、いや、僕はいいけど...」
キッチンを盗み見ると、七海はきょとんとした顔でこちらに視線を向けていた。
可愛くて撫でたくなる衝動を抑え、再び通話に意識を向ける。
「...分かった、じゃあ今夜」
「もう終わったの?」
「うん。ご飯ありがとう。いただきます」
いつもどおりを意識しながら食べていると七海に声をかけられる。
「木葉、」
「大丈夫だよ。だからそんなに不安そうな顔をしないで?」
こんなことになって1番不安を抱えているのは七海のはずだ。
それでも彼女は気丈に振る舞い、今もこうして僕の側にいてくれている。
...だったら僕にできることはただひとつ。
「七海、しばらくの間僕と一緒にここで生活してくれる?」
「迷惑じゃない...?」
「全然!寧ろ側にいてくれたら心強いな」
素直な思いをぶつけると、彼女はようやく安堵したような笑顔を見せてくれた。
犯人が何故シェリを狙ったのか、どこでそういうふうになったのか、正体を知っていてやられたのか...まだまだ分からないことは沢山ある。
それでも不安にならないのは、きっと七海が隣にいてくれるからだ。
「今夜仕事を早くあがれるから一緒に必要なものを取りに行こう。...その前に必要なものは買い揃えておこうか」
「いいの?」
「まだ時間があるし、折角ふたりでいられるんだからデートしたい。...駄目?」
「ううん、駄目じゃない。気分転換に少しだけ外の空気を吸いたいと思っていたから」
彼女の気が紛れるならいくらでもつきあおう。
それが今の僕にできる、唯一のことだから...。
もっと器用になんでもこなせればいいのに、なんて思ったのは何度目だろうか。
「木葉?」
「大丈夫だよ。行こうか」
頷いた七海の手をひいて、そのまま町を駆け出す。
──夕陽が目に滲みて、少しだけ泣きたくなった。
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