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日常篇
ひとりきりの部屋
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「木葉...」
夜まで待ってみたけれど、お昼に出ていったきりになってしまった。
お礼の言葉も伝えたいし、独りは寂しい。
(...連絡してみようかな)
メールを送ってみようとスマートフォンに手を伸ばすと、どこもボタンを押していないのに突然揺れはじめる。
それに少し驚いてしまったけれど、木葉が連絡してきたのだと直感で分かった。
《七海
今日は行けそうにない。それから、お昼はごめん。
何も言えずに出てきちゃったけど、感謝してる。...ごめん》
何故かごめんばかりの文章に、どう返信していいか迷ってしまう。
ごめんなんて言わせたくない。
けれど、今どんなことを言ってもごめんと言わせてしまいそうだ。
散々迷った挙げ句、あるひとつの選択に辿り着く。
「...木葉」
『え、七海!?』
テレビ電話なら表情を確認しながら話ができる。
...これなら、木葉を傷つけずに済むかもしれない。
「独りでいるの、落ち着かなくて...迷惑だった?」
『ううん、全然!ただ、今夜はこれを直しながら話してもいい?』
彼の目の前には壊れたミシンが置かれていて、これから修理するということはすぐに理解した。
「木葉の邪魔にならないようにするから...話していたい」
『僕は平気だし...七海が眠くないなら話していよう。
これはラッシュさんに頼まれたんだけど、結構年期が入ってるから手を加えるにも慎重にやらないといけなくて...』
「確かに、そういうペダルがついてて木でできてるミシンって珍しいのかもしれない」
『そうだよね...というか、よくミシンだって分かったね』
「昔見たことがあるから分かるんだ」
独りきりでの過ごし方が、だんだん分からなくなってきているような気がする。
...それだけふたりで過ごす時間が濃いということなのだろうか。
『七海、お昼は本当に、』
「謝らないで。私は木葉と一緒にいる為なら何だって差し出す。
離ればなれになるよりも、恋人に頼ってもらえる方がずっと嬉しい」
『七海...』
今にも泣き出しそうな声に、私はそっと画面に手を伸ばす。
「限界がきそうなときは絶対に来ること。それから...そうじゃなくても来ること」
『うん、ありがとう』
「...留め具、外れそうになってる」
『壊したらラッシュさんに怒られる...!』
何気ない1日がとても大切で、何気ない時間が1番幸せだと思う。
相手とこうして繋がれるだけで、私の心は充分幸福感で満たされているから。
しばらく話していたけれど、だんだん眠気に襲われる。
『...おやすみ』
月が空の真上から照らしつける頃、優しい声を聞きながらいつの間にか眠りに落ちていた。
夜まで待ってみたけれど、お昼に出ていったきりになってしまった。
お礼の言葉も伝えたいし、独りは寂しい。
(...連絡してみようかな)
メールを送ってみようとスマートフォンに手を伸ばすと、どこもボタンを押していないのに突然揺れはじめる。
それに少し驚いてしまったけれど、木葉が連絡してきたのだと直感で分かった。
《七海
今日は行けそうにない。それから、お昼はごめん。
何も言えずに出てきちゃったけど、感謝してる。...ごめん》
何故かごめんばかりの文章に、どう返信していいか迷ってしまう。
ごめんなんて言わせたくない。
けれど、今どんなことを言ってもごめんと言わせてしまいそうだ。
散々迷った挙げ句、あるひとつの選択に辿り着く。
「...木葉」
『え、七海!?』
テレビ電話なら表情を確認しながら話ができる。
...これなら、木葉を傷つけずに済むかもしれない。
「独りでいるの、落ち着かなくて...迷惑だった?」
『ううん、全然!ただ、今夜はこれを直しながら話してもいい?』
彼の目の前には壊れたミシンが置かれていて、これから修理するということはすぐに理解した。
「木葉の邪魔にならないようにするから...話していたい」
『僕は平気だし...七海が眠くないなら話していよう。
これはラッシュさんに頼まれたんだけど、結構年期が入ってるから手を加えるにも慎重にやらないといけなくて...』
「確かに、そういうペダルがついてて木でできてるミシンって珍しいのかもしれない」
『そうだよね...というか、よくミシンだって分かったね』
「昔見たことがあるから分かるんだ」
独りきりでの過ごし方が、だんだん分からなくなってきているような気がする。
...それだけふたりで過ごす時間が濃いということなのだろうか。
『七海、お昼は本当に、』
「謝らないで。私は木葉と一緒にいる為なら何だって差し出す。
離ればなれになるよりも、恋人に頼ってもらえる方がずっと嬉しい」
『七海...』
今にも泣き出しそうな声に、私はそっと画面に手を伸ばす。
「限界がきそうなときは絶対に来ること。それから...そうじゃなくても来ること」
『うん、ありがとう』
「...留め具、外れそうになってる」
『壊したらラッシュさんに怒られる...!』
何気ない1日がとても大切で、何気ない時間が1番幸せだと思う。
相手とこうして繋がれるだけで、私の心は充分幸福感で満たされているから。
しばらく話していたけれど、だんだん眠気に襲われる。
『...おやすみ』
月が空の真上から照らしつける頃、優しい声を聞きながらいつの間にか眠りに落ちていた。
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