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日常篇
何でもない時間
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いい香りがしてきて、台所へ向かう。
腕の中からあるはずのぬくもりがなくなっていたのは、いつからだったのだろうか。
「おはよう」
「七海?」
そこにはエプロン姿の七海が立っていて、天使のような笑みで駆け寄ってくる。
もう12時前だというのに、僕が起きるのを待っていてくれたらしい。
「ご飯できたから、一緒に食べよう」
「僕の分も作ってくれたの?」
「うん。お肉とか色々使わせてもらっちゃったけど、本当に大丈夫だった?」
「それは、全然いいんだけど...」
嬉しすぎて言葉が出てこない。
何から話せばいいのか、どう声をかけたらいいのか分からなかった。
...泣いていた理由を訊いてみてもいいのだろうか。
(今はやめておこう。こんなにも楽しいひとときが始まろうとしてるんだから)
「木葉?もしかして、まだちょっと寝惚けてる?」
「ごめん、そういう訳じゃないんだ。ただ...こうやって穏やかな1日を七海と一緒に過ごせるのが嬉しくて。七海は?」
「それは、私も嬉しいけど...ほら、冷めちゃうから食べよう!」
なんとか上手く誤魔化せたらしいが、気を抜くとうっかり言ってはいけないことをぽろっと話してしまいそうだ。
折角作ってくれたのだから冷めないうちにいただこう、そう思った僕は席について両手を合わせた。
「美味しい?」
「君が作ってくれるものってどうしていつもこんなに美味しいんだろう...」
何だか悔しい。
美味しいものを食べてほしいと作ってはみるけれど、彼女の料理には敵わないのだ。
何が違うのか知りたいとは思うものの、いくら訊いても『木葉の料理も美味しい』とはぐらかされてしまう。
「ちょっとだけ焼くのを失敗しちゃったから、不味かったらどうしようと思っていたけど...」
「不味いなんてことは絶対にないよ!一生懸命作ってくれたものが、美味しくないわけないでしょ?」
「ありがとう...」
ほっとした様子で食べ進めていくのを見ていると、なんだか微笑ましく思う。
同じものを食べ、同じものを見て...そういったものひとつひとつにぬくもりを覚える。
「七海」
「どうしたの?」
「これ、一緒に食べよう」
冷蔵庫から取り出したのは、マカロンが敷き詰められた宝箱。
七海は甘いものが好きだからと用意しておきながら、昨夜渡すのをすっかり忘れていたのだ。
「これ、本当に食べてもいいの?」
「勿論だよ。食器は洗うから、台所まで運ぶのを手伝ってくれる?
それからすぐ紅茶を淹れて、お茶会しよう」
「洗うの、私も手伝う。...ふたりでやった方が早いでしょ?」
「ありがとう。それじゃあ、こっちの分をお願いします」
「任されました」
そんなことを言い合い、ふたりで笑いあう。
このありふれた時間がただ幸せだった。
腕の中からあるはずのぬくもりがなくなっていたのは、いつからだったのだろうか。
「おはよう」
「七海?」
そこにはエプロン姿の七海が立っていて、天使のような笑みで駆け寄ってくる。
もう12時前だというのに、僕が起きるのを待っていてくれたらしい。
「ご飯できたから、一緒に食べよう」
「僕の分も作ってくれたの?」
「うん。お肉とか色々使わせてもらっちゃったけど、本当に大丈夫だった?」
「それは、全然いいんだけど...」
嬉しすぎて言葉が出てこない。
何から話せばいいのか、どう声をかけたらいいのか分からなかった。
...泣いていた理由を訊いてみてもいいのだろうか。
(今はやめておこう。こんなにも楽しいひとときが始まろうとしてるんだから)
「木葉?もしかして、まだちょっと寝惚けてる?」
「ごめん、そういう訳じゃないんだ。ただ...こうやって穏やかな1日を七海と一緒に過ごせるのが嬉しくて。七海は?」
「それは、私も嬉しいけど...ほら、冷めちゃうから食べよう!」
なんとか上手く誤魔化せたらしいが、気を抜くとうっかり言ってはいけないことをぽろっと話してしまいそうだ。
折角作ってくれたのだから冷めないうちにいただこう、そう思った僕は席について両手を合わせた。
「美味しい?」
「君が作ってくれるものってどうしていつもこんなに美味しいんだろう...」
何だか悔しい。
美味しいものを食べてほしいと作ってはみるけれど、彼女の料理には敵わないのだ。
何が違うのか知りたいとは思うものの、いくら訊いても『木葉の料理も美味しい』とはぐらかされてしまう。
「ちょっとだけ焼くのを失敗しちゃったから、不味かったらどうしようと思っていたけど...」
「不味いなんてことは絶対にないよ!一生懸命作ってくれたものが、美味しくないわけないでしょ?」
「ありがとう...」
ほっとした様子で食べ進めていくのを見ていると、なんだか微笑ましく思う。
同じものを食べ、同じものを見て...そういったものひとつひとつにぬくもりを覚える。
「七海」
「どうしたの?」
「これ、一緒に食べよう」
冷蔵庫から取り出したのは、マカロンが敷き詰められた宝箱。
七海は甘いものが好きだからと用意しておきながら、昨夜渡すのをすっかり忘れていたのだ。
「これ、本当に食べてもいいの?」
「勿論だよ。食器は洗うから、台所まで運ぶのを手伝ってくれる?
それからすぐ紅茶を淹れて、お茶会しよう」
「洗うの、私も手伝う。...ふたりでやった方が早いでしょ?」
「ありがとう。それじゃあ、こっちの分をお願いします」
「任されました」
そんなことを言い合い、ふたりで笑いあう。
このありふれた時間がただ幸せだった。
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