19 / 258
日常篇
夜空の色
しおりを挟む
これだけ晴れていれば、きっといいものを見せられるはずだ。
「さあ、どうぞ」
「...すごい」
「七海?」
「天窓がついてるお部屋なんて初めて見た...!」
七海は空を見上げ、目をきらきらとさせていた。
そんな姿を見られただけで、僕の計画は成功だったと言える。
「ここに寝転がってみて」
「それは、その、」
「照れてる?...実は僕もちょっと恥ずかしいけど、ふたりで同じ景色を見たいんだ。...駄目?」
こう話して断れないのを知っていながら言った僕は、もしかすると狡いのかもしれない。
七海は少しだけ迷った素振りをしながら、顔を真っ赤にしてベッドに横になってくれた。
「沢山の星が広がって見えるんだね...!」
「この景色を一緒に見たかったんだ」
「ありがとう。...今まで見た中で1番綺麗な景色だよ」
七海の瞳を覗きこんでみると、夜空に散りばめられた星々が輝いていて...吸いこまれそうなほど美しかった。
彼女の瞳には僕がうつりこみ、頬に熱を感じる。
「木葉...照れてる?」
「こういうのって初めてだから照れちゃうんだ」
「初めて?」
七海は体を起こし、僕を真っ直ぐ見つめる。
咄嗟に出た言葉を引っこめたかったが、やはり嘘を吐きたくはない。
「友だちを作ったことがなくて...いや、いたこともあったんだけど、家に呼んだことがなかったんだ」
「木葉...」
「だからね、こうやって人と一緒に過ごせるのはすごく幸せだなって思うんだ」
誰にも気づかれてはいけない...そう思うと、人と親密になるのが怖かった。
ただ仲良くすることはできても、そこから先の関係にはなれないのだ。
恋人は勿論、親友も作れない。
ずっとそう思っていたのに、僕にとっての月はある日突然現れた。
「...『月が綺麗ですね』」
「木葉、今のってどっち?」
「どっちも」
七海を抱きしめて、ふと空を見上げる。
それは独りで何気無く目にはいるものの何倍も美しく、いつも以上に輝きを増していた。
夜空がこんなにも綺麗なものだったなんて、僕はこのときまで知らなかったのかもしれない。
...独りで見るより誰かと一緒の方が輝くものもあるのだと、改めて実感した。
「七海?」
腕が少しだけ重くなったので視線を下にやると、すやすやと寝息が聞こえてきた。
何だか微笑ましくて...少し噛みたくて。
なんとか衝動を抑えながら、彼女をベッドに寝かせ再び上を向く。
やはりいつも以上に彩づいて見えて、長い夜を温かい気持ちで過ごせたのだった。
「さあ、どうぞ」
「...すごい」
「七海?」
「天窓がついてるお部屋なんて初めて見た...!」
七海は空を見上げ、目をきらきらとさせていた。
そんな姿を見られただけで、僕の計画は成功だったと言える。
「ここに寝転がってみて」
「それは、その、」
「照れてる?...実は僕もちょっと恥ずかしいけど、ふたりで同じ景色を見たいんだ。...駄目?」
こう話して断れないのを知っていながら言った僕は、もしかすると狡いのかもしれない。
七海は少しだけ迷った素振りをしながら、顔を真っ赤にしてベッドに横になってくれた。
「沢山の星が広がって見えるんだね...!」
「この景色を一緒に見たかったんだ」
「ありがとう。...今まで見た中で1番綺麗な景色だよ」
七海の瞳を覗きこんでみると、夜空に散りばめられた星々が輝いていて...吸いこまれそうなほど美しかった。
彼女の瞳には僕がうつりこみ、頬に熱を感じる。
「木葉...照れてる?」
「こういうのって初めてだから照れちゃうんだ」
「初めて?」
七海は体を起こし、僕を真っ直ぐ見つめる。
咄嗟に出た言葉を引っこめたかったが、やはり嘘を吐きたくはない。
「友だちを作ったことがなくて...いや、いたこともあったんだけど、家に呼んだことがなかったんだ」
「木葉...」
「だからね、こうやって人と一緒に過ごせるのはすごく幸せだなって思うんだ」
誰にも気づかれてはいけない...そう思うと、人と親密になるのが怖かった。
ただ仲良くすることはできても、そこから先の関係にはなれないのだ。
恋人は勿論、親友も作れない。
ずっとそう思っていたのに、僕にとっての月はある日突然現れた。
「...『月が綺麗ですね』」
「木葉、今のってどっち?」
「どっちも」
七海を抱きしめて、ふと空を見上げる。
それは独りで何気無く目にはいるものの何倍も美しく、いつも以上に輝きを増していた。
夜空がこんなにも綺麗なものだったなんて、僕はこのときまで知らなかったのかもしれない。
...独りで見るより誰かと一緒の方が輝くものもあるのだと、改めて実感した。
「七海?」
腕が少しだけ重くなったので視線を下にやると、すやすやと寝息が聞こえてきた。
何だか微笑ましくて...少し噛みたくて。
なんとか衝動を抑えながら、彼女をベッドに寝かせ再び上を向く。
やはりいつも以上に彩づいて見えて、長い夜を温かい気持ちで過ごせたのだった。
0
お気に入りに追加
8
あなたにおすすめの小説
寝室から喘ぎ声が聞こえてきて震える私・・・ベッドの上で激しく絡む浮気女に復讐したい
白崎アイド
大衆娯楽
カチャッ。
私は静かに玄関のドアを開けて、足音を立てずに夫が寝ている寝室に向かって入っていく。
「あの人、私が
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
隣の席の女の子がエッチだったのでおっぱい揉んでみたら発情されました
ねんごろ
恋愛
隣の女の子がエッチすぎて、思わず授業中に胸を揉んでしまったら……
という、とんでもないお話を書きました。
ぜひ読んでください。
娼館で元夫と再会しました
無味無臭(不定期更新)
恋愛
公爵家に嫁いですぐ、寡黙な夫と厳格な義父母との関係に悩みホームシックにもなった私は、ついに耐えきれず離縁状を机に置いて嫁ぎ先から逃げ出した。
しかし実家に帰っても、そこに私の居場所はない。
連れ戻されてしまうと危惧した私は、自らの体を売って生計を立てることにした。
「シーク様…」
どうして貴方がここに?
元夫と娼館で再会してしまうなんて、なんという不運なの!
【R18】もう一度セックスに溺れて
ちゅー
恋愛
--------------------------------------
「んっ…くっ…♡前よりずっと…ふか、い…」
過分な潤滑液にヌラヌラと光る間口に亀頭が抵抗なく吸い込まれていく。久しぶりに男を受け入れる肉道は最初こそ僅かな狭さを示したものの、愛液にコーティングされ膨張した陰茎を容易く受け入れ、すぐに柔らかな圧力で応えた。
--------------------------------------
結婚して五年目。互いにまだ若い夫婦は、愛情も、情熱も、熱欲も多分に持ち合わせているはずだった。仕事と家事に忙殺され、いつの間にかお互いが生活要員に成り果ててしまった二人の元へ”夫婦性活を豹変させる”と銘打たれた宝石が届く。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる