ハーフ&ハーフ

黒蝶

文字の大きさ
上 下
17 / 258
日常篇

初めての彼の家

しおりを挟む
沢山の本に、綺麗に片づけてある食器。
それから、沢山のノートが私を出迎えてくれる。
「そんなにすごいかな?」
「なんだか木葉らしい部屋だね...あれ、そこの箱に入ってるのって、」
「わあわあわあ!見ないで、ちょっと恥ずかしいから...」
私が指さした箱の中には、間違いなくふたりの思い出の品が入っていた。
時計や写真、ぬいぐるみ...等々。
全てのものを大切にしてくれているのだと思うと、なんだかとてもじんわりとしたものが胸に浮かんでくる。
嬉しいなんて言葉では言い表せないほど、すごく嬉しい。
「嫌がられてるんじゃないかとか、迷惑だって思ってるんじゃないか不安だったから...見られて良かった」
「七海からもらったものは全部大事だから、ちゃんと目が届くところに置いておきたかったんだ」
綺麗好きな木葉らしく、几帳面に箱の隙間がなくなるくらいぴったりと納められていた。
「座って。パンプキンスープくらいしかないけど...」
「駄目だよ、ちゃんとご飯も食べないと」
血液だけがご飯だと言われたら、私はきっと言い返せない。
ただ毎日黙って血を差し出しているだろう。
けれど木葉は半分はちゃんと人として生きている。
ヴァンパイアの部分に目がいきがちになってしまうけれど、決してそれだけではないのだ。
(それに...ただの人間の方がずっと怖い)
「七海?もしかして、体調悪い?」
「あ...ううん、なんでもない。体調もばっちりだから心配しないで」
木葉は腑に落ちないような表情を浮かべた後、スープを温めてくれた。
「取り敢えずこれ飲んで温まろう?」
「うん。いただきます」
さっきまでの寒さを忘れるくらいの温かさに浸っていると、とても小さな声で囁かれた。
「...トリック・オア・トリート」
「お菓子なら...あ」
「どうしたの?」
「忘れてきちゃったみたい」
「そっか...」
楽しみにしてくれていたんだろうなと思うと、申し訳なさしかない。
「ごめん、なんでもするから...」
木葉は悪戯な笑みを浮かべて、少しずつ私の方に近づいてくる。
そして、衝撃の一言が放たれた。
「それじゃあ、今夜は帰らないで」
「分かった、今夜は...え?」
「もっと沢山話がしたいから、今夜は一緒にいて。...駄目?」
そう訊かれて、駄目と言えるはずがない。
それに、目の前の瞳には寂しさが滲んでいて...ますます嫌とは言えなかった。
「でも、お風呂に入りたいし、着替えも持ってない...」
「これから買いに行こう。...近くのお店に知り合いがいるんだ。
それに、今夜ならきっと綺麗なはずだから」
「うん...?」
今夜なら綺麗って、どういうことだろう。
その意味は分からなかったけれど、木葉の言葉に従うことにした。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

寝室から喘ぎ声が聞こえてきて震える私・・・ベッドの上で激しく絡む浮気女に復讐したい

白崎アイド
大衆娯楽
カチャッ。 私は静かに玄関のドアを開けて、足音を立てずに夫が寝ている寝室に向かって入っていく。 「あの人、私が

校長室のソファの染みを知っていますか?

フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。 しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。 座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る

隣の席の女の子がエッチだったのでおっぱい揉んでみたら発情されました

ねんごろ
恋愛
隣の女の子がエッチすぎて、思わず授業中に胸を揉んでしまったら…… という、とんでもないお話を書きました。 ぜひ読んでください。

娼館で元夫と再会しました

無味無臭(不定期更新)
恋愛
公爵家に嫁いですぐ、寡黙な夫と厳格な義父母との関係に悩みホームシックにもなった私は、ついに耐えきれず離縁状を机に置いて嫁ぎ先から逃げ出した。 しかし実家に帰っても、そこに私の居場所はない。 連れ戻されてしまうと危惧した私は、自らの体を売って生計を立てることにした。 「シーク様…」 どうして貴方がここに? 元夫と娼館で再会してしまうなんて、なんという不運なの!

私は何人とヤれば解放されるんですか?

ヘロディア
恋愛
初恋の人を探して貴族に仕えることを選んだ主人公。しかし、彼女に与えられた仕事とは、貴族たちの夜中の相手だった…

[R18] 激しめエロつめあわせ♡

ねねこ
恋愛
短編のエロを色々と。 激しくて濃厚なの多め♡ 苦手な人はお気をつけくださいませ♡

【R18】もう一度セックスに溺れて

ちゅー
恋愛
-------------------------------------- 「んっ…くっ…♡前よりずっと…ふか、い…」 過分な潤滑液にヌラヌラと光る間口に亀頭が抵抗なく吸い込まれていく。久しぶりに男を受け入れる肉道は最初こそ僅かな狭さを示したものの、愛液にコーティングされ膨張した陰茎を容易く受け入れ、すぐに柔らかな圧力で応えた。 -------------------------------------- 結婚して五年目。互いにまだ若い夫婦は、愛情も、情熱も、熱欲も多分に持ち合わせているはずだった。仕事と家事に忙殺され、いつの間にかお互いが生活要員に成り果ててしまった二人の元へ”夫婦性活を豹変させる”と銘打たれた宝石が届く。

車の中で会社の後輩を喘がせている

ヘロディア
恋愛
会社の後輩と”そういう”関係にある主人公。 彼らはどこでも交わっていく…

処理中です...