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日常篇
次の約束
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1人で苦しい思いをさせてしまうくらいなら、こうして痛みさえも分かち合えた方がいい。
「ここなら人が来ないでしょう?...木葉が傷つくのを放ってはおけないよ」
「駄目、近づかないで...」
木葉は牙を剥き出しにして、涙を流しながら突き放そうとする。
今日1日どれだけ我慢していたのだろう。
そう思うと、早く解放したいと思った。
「木葉は私の為に無理をしてまで願いを叶えてくれた。
だから、今度は私の番。お願い木葉...噛んで」
「加減...できない、かも」
「大丈夫だから」
木葉の口元に少しずつ血が流れ出る腕を差し出す。
やっぱりもう限界だったようで、容赦なく牙が突き刺さった。
「ん...」
「痛い、よね...」
「大丈夫。沢山頑張らせちゃってごめんね」
話しているときも、木葉はずっと吸っている。
まるで花に魅いられた蝶のように、貪るように吸いつくしていく。
それを感じていたとき、頭がぼんやりとしてきた。
(またこの感覚...)
体が熱い。頬が火照る。
「...っ、七海?」
ぐらっと体が傾くのを止められず、木葉が支えてくれた。
「ごめん、大丈夫...?」
「平気。だから...お願い、私から離れないで」
「七海...」
──意識を手放す前に聞こえたのは、ごめんという哀しげな言葉だった。
「気づいた?」
「木葉...」
まだ頭がぼんやりとしていて、上手く話すことができない。
「まだ寝てた方がいいよ」
「...ねえ、木葉」
「どうかした?何かほしいものとかある?」
「もっと近くに来て、キス...して」
恥ずかしかったけれど、ここでちゃんと伝えておきたいことがある。
けれど、残念なことに私の体は重くて動かない。
...だからこうして、木葉に近づいてもらうしかなかった。
「急にそんな可愛いことを言うのは狡いよ...」
「お願い、聞いてくれてありがとう」
「ごめんね。辛くない...?」
「全然大丈夫だよ」
そう答えると、木葉の目から涙が零れ落ちる。
本当は拭いたかったけれど、気づいたときには抱きしめていた。
(腕が重い...だけど、ここで離しちゃ駄目だ)
「私は木葉がいてくれればそれでいい。...今度は夜に出掛けよう。
ハロウィンで賑わうし、ふたりならきっと楽しいよ」
「僕のこと、怖くないの...?」
「怖くない。ヴァンパイアだろうと人間だろうとハーフだろうと...私が好きなのは木葉という存在自体だから」
「ありがとう...」
木葉は泣き続けているみたいだったけれど、私はただ抱きしめた。
彼がどこかへ行ってしまわないようにというのもあったけれど、それより...。
──寂しいから、側にいてほしかったのかもしれない。
「ここなら人が来ないでしょう?...木葉が傷つくのを放ってはおけないよ」
「駄目、近づかないで...」
木葉は牙を剥き出しにして、涙を流しながら突き放そうとする。
今日1日どれだけ我慢していたのだろう。
そう思うと、早く解放したいと思った。
「木葉は私の為に無理をしてまで願いを叶えてくれた。
だから、今度は私の番。お願い木葉...噛んで」
「加減...できない、かも」
「大丈夫だから」
木葉の口元に少しずつ血が流れ出る腕を差し出す。
やっぱりもう限界だったようで、容赦なく牙が突き刺さった。
「ん...」
「痛い、よね...」
「大丈夫。沢山頑張らせちゃってごめんね」
話しているときも、木葉はずっと吸っている。
まるで花に魅いられた蝶のように、貪るように吸いつくしていく。
それを感じていたとき、頭がぼんやりとしてきた。
(またこの感覚...)
体が熱い。頬が火照る。
「...っ、七海?」
ぐらっと体が傾くのを止められず、木葉が支えてくれた。
「ごめん、大丈夫...?」
「平気。だから...お願い、私から離れないで」
「七海...」
──意識を手放す前に聞こえたのは、ごめんという哀しげな言葉だった。
「気づいた?」
「木葉...」
まだ頭がぼんやりとしていて、上手く話すことができない。
「まだ寝てた方がいいよ」
「...ねえ、木葉」
「どうかした?何かほしいものとかある?」
「もっと近くに来て、キス...して」
恥ずかしかったけれど、ここでちゃんと伝えておきたいことがある。
けれど、残念なことに私の体は重くて動かない。
...だからこうして、木葉に近づいてもらうしかなかった。
「急にそんな可愛いことを言うのは狡いよ...」
「お願い、聞いてくれてありがとう」
「ごめんね。辛くない...?」
「全然大丈夫だよ」
そう答えると、木葉の目から涙が零れ落ちる。
本当は拭いたかったけれど、気づいたときには抱きしめていた。
(腕が重い...だけど、ここで離しちゃ駄目だ)
「私は木葉がいてくれればそれでいい。...今度は夜に出掛けよう。
ハロウィンで賑わうし、ふたりならきっと楽しいよ」
「僕のこと、怖くないの...?」
「怖くない。ヴァンパイアだろうと人間だろうとハーフだろうと...私が好きなのは木葉という存在自体だから」
「ありがとう...」
木葉は泣き続けているみたいだったけれど、私はただ抱きしめた。
彼がどこかへ行ってしまわないようにというのもあったけれど、それより...。
──寂しいから、側にいてほしかったのかもしれない。
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