満天の星空に願いを。

黒蝶

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本篇・1年目後期

終了式に願いを。弥生side

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「葉月」
「弥生...!おはよう!」
葉月はなんだか元気そうで、少しだけ安心した。
「大丈夫?」
「今はものすごく元気だよ」
あれから葉月は二度体調を崩し、なかなか会えなかった。
(今日は本当に大丈夫そう)
初めて入る、体育館の一階部分。
ここで終了式をやるらしいけれど、なんだか人がいっぱいで苦手だった。
「はい、それじゃあその辺に座っておいてね」
先生に促され、私たちは後ろの方に座る。
「それでは、終了式を行います」
そのとき、全く知らない初老の男性を見つけた。
その人は一体誰なのか、次の一言で知ることになる。
「それでは、校長先生からのお話です」
...このとき、通信制にも校長というものが存在することを初めて知った。
「普段は昼間や夜間の生徒と接しているので知らなかった方もいらっしゃるでしょう」
話は十五分ほどで、なかなか長く感じた。
「続きまして、表彰を行いたいと思います」
表彰?と頭のなかで思ったとき、以前担任が話していたことを思い出す。
『部活動や色んなコンクールもそうなのですが、前期末と後期末に表彰されます。休まずに全ての行事を含め出席した皆勤賞、レポートを期限内に全て提出し平均八十五以上の場合はレポート優秀、そしてもうひとつが評点平均が高い場合の成績優秀です』
...そうか、それなら私はきっと呼ばれる。
呼ばれてしまう。
「まずは一冠賞から...」
思っていたよりは少なかったものの、皆勤賞の人が多くて驚愕した。
(スポーツ大会とか、そういうのにも全部出たってことだよね...)
「続いて、二冠賞」
やはりここで名前を呼ばれた。
三教科とも九十点以上、レポートは全て授業中に説明を聞いて満点にした。
(どうしよう、なんだか嬉しくなってきた)
賞状を受けとると、周りから拍手の音が聞こえてくる。
「それでは、これで終わりです。あとは各ホームでホームルームを行います」
廊下を歩いていると、葉月に声をかけられた。
「すごいね、弥生!」
「私は三教科しかないから...」
それでも、と葉月は食い下がらない。
「全部をちゃんとこなしてるんだから、それってすごいことだと思う」
「...ありがとう」
自信がない。
いつもそうだった。
けれど、こんな私でも地道にやってきたことは無駄ではなかったと信じてもいいのだろうか。
「葉月も、すごかったよ。テストだってもう少しで成績優秀だったし、休んだ日以外のはレポートだって優秀だったでしょ?」
「次は私も何か取りたいな...」
ここでなら、最後まで頑張っていけそうな気がする。
決意を新たにしながら、教室への一歩を踏み出した。
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