満天の星空に願いを。

黒蝶

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本篇・1年目後期

単語カードに願いを。葉月side/テスト前に願いを。弥生side

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「何これ...」
私は雑記帳を開いて唖然とした。
(ここの問題、全滅だ...)
全く分からなくて、弥生にメールしようとする。
けれど、スマートフォンに触れた瞬間、激しい頭痛が襲いかかってきた。
「...っ!」
歯を食い縛り、その場に倒れこむ。
(こんなふうになってる場合じゃないのに...)
結局ベッドから動けなくなってしまった私は、ポケットから弥生が作ってくれたカードを取り出す。
(見るだけでもだいぶ違うって言ってたもんね...)
ぱらぱらと捲っていると、玄関の方で音がする。
今日に限って、あの人たちは帰ってきてしまったのだ。
(どうしてあの人たちが...)
それでもやっぱり起きあがれず、部屋の鍵を閉めておいてよかったと安心した。
できるだけ顔をあわせたくない。
今は会っただけで吐きそうだ。
《行けそうになくて、ごめんね》
文字を打つのも辛くて、中途半端な文章を送ってしまう。
部屋の外が騒がしい。
働いていない頭で原因を考えようとしたけれど、痛みで限界を迎えた。
(もう無理だ...)
私は何かに誘われるように、そのまま眠ってしまった。
瞼を持ちあげるのも辛くて、そのまま意識が堕ちていく。
手首では、ブレスレットがきらきらと輝いていた。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
夜、私はまたいつもの場所にきていた。
(あとはこの一帯を覚えたら終わるんだけど...)
何気なくスマートフォンを手に取る。
《行けそうになくて、ごめんね》
今夜はここにこられそうにない、という意味だろうか。
《無理せずゆっくり休んで》
今の非力な私には、そんな言葉をかけることしかできない。
「...早く終わらせて続きが読みたい」
ただがむしゃらに、淡々と覚えていく。
『こんな問題もできないの?』
もうそんなことを言われないんだと思うと、ただただ喜びがこみあげてきた。
誰にも邪魔されない、悪く言われない独りの世界。
以前の私なら、迷わずこっちの世界を選択していただろう。
けれど、今選択するなら...葉月と二人の世界を選ぶ。
(...独りがいいって思うときもあるけど、やっぱり二人でいられるときも楽しいから)
早く物語を紡ぎたい。
本の続きを知りたい。
今の私の頭のなかはそのことばかりだ。
「...葉月、大丈夫かな」
本を読み進めていた手を止めて、そっと月を見あげる。
本当は今すぐ家を訪ねて、どんな様子なのか知りたい。
ただ、もしご両親がいた場合...葉月を困らせてしまう。
それに時間が時間だ、もう寝ているだろう。
(テスト、頑張らなきゃ)
首元ではマフラーが風に靡いていた。
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