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本篇・1年目後期
雨あがりに願いを。葉月side
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弥生とのお泊まり会が楽しみだと思いながら、まだ外で音がしていることに恐怖を覚える。
(どうして早く出ていってくれないの...?)
「葉月、起きてるんでしょ?葉月!」
無理だ。怖いものは怖い。
《弥生、私...》
「葉月!」
ばん!と大きい音がして、扉が壊れたんじゃないかというほどの揺れに襲われる。
《...葉月、やっぱりこれから行こうか?》
どうやらさっき途中で送信してしまったらしく、このままではまずいと思った。
《大丈夫。さっきスマートフォン落としちゃって、それでまだ打ち終わってなかったのに送信されちゃったみたい》
だいぶよくなったし、早く弥生のところへ行きたい。
《弥生はいつものところにいる?》
《いるけど、もしかしてくる?》
《弥生がいいなら、行ってもいいかな...?》
窓の外はいつの間にか晴れていて、ますます行きたくなった。
《私、今日は結構遅くまでいるから...だから、こられそうなら待ってる》
弥生のそんな言葉に救われて、私は急いで準備をする。
ここから玄関までのルートはいくつかあるけれど、一番バレずに外に出られるのはきっと...。
「...早く出ないと」
そうしてようやく出られて、走って、走って。
ひたすら走っていると、そこにはもう既に弥生がきていた。
「弥生」
「体調はもう大丈夫?」
私が頷くと、弥生はいつものようにいちご大福を分けてくれる。
「ありがとう...」
「甘いものは、疲労回復にいいんだって」
「なんだか分かる気がする。チョコレートとかいいんだよね」
「駄目だよ、片頭痛にはよくないから」
「どうして知って、」
弥生はスマートフォンの画面を見せてくれる。
「調べたからだよ。こんなことしかできないけど...」
「『こんなこと』なんかじゃないよ。ありがとう、弥生...」
心がどんどん晴れていくのを感じる。
「さ、食べよう」
「うん!」
いつもよりゆっくり味わって食べる。
それは、いつもと何も変わらないもの。
けれど今の私にとっては、とても甘く感じられる。
一日中気が張っていたせいか、少しずつ眠くなってくる。
「眠いなら寝ちゃっていいよ」
「弥生、ごめん。私...」
「...大丈夫、ちゃんと分かってるから。ゆっくり休んで」
弥生はまたレジャーシートの上で私を膝枕してくれる。
「本当にごめんね」
「気にしなくていいからもう眠って?...おやすみ」
私はゆっくり目を閉じる。
意識が落ちる前に聞こえた言葉はごめんという切ないもので、なんだか寂しげな声だった...。
(どうして早く出ていってくれないの...?)
「葉月、起きてるんでしょ?葉月!」
無理だ。怖いものは怖い。
《弥生、私...》
「葉月!」
ばん!と大きい音がして、扉が壊れたんじゃないかというほどの揺れに襲われる。
《...葉月、やっぱりこれから行こうか?》
どうやらさっき途中で送信してしまったらしく、このままではまずいと思った。
《大丈夫。さっきスマートフォン落としちゃって、それでまだ打ち終わってなかったのに送信されちゃったみたい》
だいぶよくなったし、早く弥生のところへ行きたい。
《弥生はいつものところにいる?》
《いるけど、もしかしてくる?》
《弥生がいいなら、行ってもいいかな...?》
窓の外はいつの間にか晴れていて、ますます行きたくなった。
《私、今日は結構遅くまでいるから...だから、こられそうなら待ってる》
弥生のそんな言葉に救われて、私は急いで準備をする。
ここから玄関までのルートはいくつかあるけれど、一番バレずに外に出られるのはきっと...。
「...早く出ないと」
そうしてようやく出られて、走って、走って。
ひたすら走っていると、そこにはもう既に弥生がきていた。
「弥生」
「体調はもう大丈夫?」
私が頷くと、弥生はいつものようにいちご大福を分けてくれる。
「ありがとう...」
「甘いものは、疲労回復にいいんだって」
「なんだか分かる気がする。チョコレートとかいいんだよね」
「駄目だよ、片頭痛にはよくないから」
「どうして知って、」
弥生はスマートフォンの画面を見せてくれる。
「調べたからだよ。こんなことしかできないけど...」
「『こんなこと』なんかじゃないよ。ありがとう、弥生...」
心がどんどん晴れていくのを感じる。
「さ、食べよう」
「うん!」
いつもよりゆっくり味わって食べる。
それは、いつもと何も変わらないもの。
けれど今の私にとっては、とても甘く感じられる。
一日中気が張っていたせいか、少しずつ眠くなってくる。
「眠いなら寝ちゃっていいよ」
「弥生、ごめん。私...」
「...大丈夫、ちゃんと分かってるから。ゆっくり休んで」
弥生はまたレジャーシートの上で私を膝枕してくれる。
「本当にごめんね」
「気にしなくていいからもう眠って?...おやすみ」
私はゆっくり目を閉じる。
意識が落ちる前に聞こえた言葉はごめんという切ないもので、なんだか寂しげな声だった...。
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