満天の星空に願いを。

黒蝶

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本篇・1年目後期

予備日に願いを。葉月side

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「はい。それでは授業をはじめたいと思います」
この日はついに予備日。
先生たちは日曜日と同じで、その部分だけは安心した。
(弥生がいないとこんなにも寂しいんだ...)
真面目に聞いていたつもりだけれど、分からなかった数学。
弥生に聞くのも悪いかなと思いつつ、私は弥生にメールを送った。
《また数学を教えてほしいんだけど、いいかな?》
それから授業を受け続けて、ようやくお昼休みになった。
《勿論。...分野によるけどね》
そんな返信を見て、少し安心している自分がいる。
(弥生、やっぱり優しいな...)
「あれ?一人で食べてるのか」
「いつもはこの曜日じゃないので...」
「そうか」
教頭先生は、何も聞かずに隣の席に座って一緒に食べてくれた。
実は、元から予備日に通学するという選択をしている人もいたりする。
日曜日もお仕事が入っていたり、かなり少人数じゃないと通学できなかったり...子どもがいるから保育園が開いてないとこられなかったり。
本当に色々な事情の人たちが通っているのだと、改めて実感する。
「今週予備日にきた理由は?いっつも日曜日に真面目にきてるやろ?」
「それは、えっと...体調を崩して休んでて」
「そっかそっか。それは大変だったな...」
「...なれてますから、大丈夫です」
なんだか先生と話していると、楽しいなって思えてくる。
それと同時に、ちゃんと私の話を聞いてくれていることに感激する。
どこでも除け者だったのに、ここでは全然そういったことがない。
(『先輩』たちも親切な人が多いし...どうしてだろう)
私には、それが不思議だった。
首からさげた名札がゆらゆらと揺れる。
「授業、午後からもしっかりね。...まあ、大丈夫だと思うけど」
「はい。ありがとうございます」
この場所なら、頑張って通い続けられるかもしれない。
そう思うと、途端に足が軽くなった。
ーーその夜、弥生といつもの場所で遅い夕飯を食べた。
「元気になったみたいで本当によかった」
「心配かけてごめんね」
「ううん。...学校、楽しかった?」
「うん!人数が少なかったから、なんだかいつも一人で授業を受けてるときより過ごしやすかったかも」
「...そっか」
「あ、でも弥生がいなかったから休み時間はつまらなかったな...」
弥生は目を丸くした後、私を見てふっと笑った。
「何か変なこと言ったかな...?」
「休み時間がつまらないって、珍しいタイプだなって思っただけ」
「お、お昼は教頭先生と食べたもん...」
「え、その話詳しく聞かせて?」
こうして語り合える友人がいる。
私はもう独りじゃないんだと沁々と感じた。
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