満天の星空に願いを。

黒蝶

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本篇・1年目後期

自由時間に願いを。弥生side

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「この雑貨屋さん、なんだか可愛いものを置いていそうな予感...」
「え、分かるの?」
「直感だけどね」
葉月は目をきらきらと輝かせて、私の手をきゅっと握った。
「弥生、本当にすごいね...!」
「別にそんなことないと思うけど...」
「そうだ、何かお揃いのもの買おうよ」
「お揃い...」
そういったものを持ったことがない。
持ったところで、どうなる訳でもないと知っていたからだ。
(だけどきっと、そんなことを言ってしまえば葉月は悲しむ)
「そうしようか。日常で使えそうなものがいいかな...?」
「そうだね!」
『離れていても、ずっと一緒だよ!』
確か、そんな約束をした相手がいたはずだ。
向こうから送った手紙が返ってくることはなく、縋るのをやめた。
そんなに軽い言葉ではないのに、人は何故その言葉を簡単に使ってしまうのだろう。
「弥生?」
(いけない、また暗いことを思い出してた...)
「ごめん、なんでもないから」
「でも...」
葉月は心配そうにこちらを見つめている。
「体調が悪いとかじゃないから心配しないで」
「...そっか」
葉月はそれ以上何も聞かないでいてくれた。
本当は沢山質問したかっただろうに、それをぶつけずにいてくれた。
「葉月」
「どうしたの?」
「...どれにしようか、じっくり見て決めようか」
「うん...!」
本当に嬉しそうな表情で、色々な品物を見ていく。
そんな葉月が可愛いと思うことは、何か間違っているのだろうか。
(『この世界は間違いに満ちている』、か...)
好きな本の一節を思い出し、自分の手を見つめる。
「...あ」
「葉月、どうしたの?」
「ここのくまさん...もふもふだ」
「...え、」
「可愛い...!」
確かにもふもふの手触りで可愛らしいけれど、私に合うだろうか。
「ここでも何か買わない...?」
「そうしようか」
葉月は妙にはしゃいでいて、それがまた更に愛しいなと思った。
...ただ、友人としてそう思った。
テンションが高いのは恐らく、体調不良で修学旅行等を楽しめなかったからではないだろうか...そう予想してみたけれど、正解は本人のみぞ知る。
「この子、なでなでしてもふもふしたい...」
「買っちゃうのはどうかな?...私はこの子にする」
葉月は予想どおり可愛らしいものを選んで、私は予想外だったであろう可愛らしいものを選んだ。
「ありがとうございました」
二人で一礼して、そのまま次の店に向かう。
...まだまだ自由時間は終わらずに済みそうだ。
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