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本篇・1年目後期
注射に願いを。葉月side
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「葉月ちゃん、」
「葉月、遅くなっちゃってごめん」
「ううん、気にしないで。授業どうだった?」
弥生と楽しく話すにはどうすればいいのか、私は考えた。
なんだか申し訳ない気もするけれど、弥生の声を一番に聞く作戦を実行している。
(もっとコミュニケーション能力があったら、上手くいったのかな...)
「葉月、大丈夫?」
「う、うん。ごめんね。ちょっとぼうっとしちゃって...」
弥生に変な気を遣わせたくなくて、咄嗟に口からそんな言葉が漏れ出る。
「本当に?」
「明日病院だから嫌だなって...」
「そうなの?それはたしかに、ちょっと憂鬱になるかも...」
弥生は病院が苦手なんだ...そう思うと、なんだか微笑ましく感じた。
「だから明日は、ちょっと遅くなるかも...」
「分かった。なら明日は、私がご飯も作って待ってる」
「いいの?」
「たまにはやらせて?」
弥生があまりにも綺麗な笑顔で言うものだから、私は首を縦にふった。
(病院、早く終わらないかな...)
翌日、待合室でそんなことを考えていた。
脳神経外科...正確にいうと頭痛外来もやっている医師は、月に二回しかこの病院にはやってこない。
けれど、早く終わらないかなんて考えたことはなかった。
「血圧測りますね」
調子は、そんなによくない。
よくないけれど、弥生のところに行きたい。
「葉月さん、どうぞ。...体の具合はどう?」
「頭痛が酷くて、寝こむこともあって...今日も少し痛むんです」
「そっか...ちょっと注射しとこうか」
「はい、お願いします」
私は迷わずそう答える。
いつもだと断ることが多いのだけれど、今はどうしても弥生のところに行きたいから。
(頭痛が治まるなら、これくらい我慢する)
ここの医師はすごく上手で、看護師さんも注射が下手な人はほとんどいない。
「はい、終わり。薬はいつもの出しておくね。お大事に」
約束の時間になんとか間に合いそうでほっとした。
いつもだともっと時間がかかって順番がまわってこなかったりするのだけれど、今日はすんなりと終わった。
(次はまた二ヶ月後か...)
駅に着くのは七時前。
本当なら何か食べておくところなのだけれど、そうはしたくなかった。
折角弥生が作ってきてくれると言っていたのに、それを壊すようなことはしたくなかった。
...列車が遅く感じたのは、これが初めてだったかもしれない。
「葉月、遅くなっちゃってごめん」
「ううん、気にしないで。授業どうだった?」
弥生と楽しく話すにはどうすればいいのか、私は考えた。
なんだか申し訳ない気もするけれど、弥生の声を一番に聞く作戦を実行している。
(もっとコミュニケーション能力があったら、上手くいったのかな...)
「葉月、大丈夫?」
「う、うん。ごめんね。ちょっとぼうっとしちゃって...」
弥生に変な気を遣わせたくなくて、咄嗟に口からそんな言葉が漏れ出る。
「本当に?」
「明日病院だから嫌だなって...」
「そうなの?それはたしかに、ちょっと憂鬱になるかも...」
弥生は病院が苦手なんだ...そう思うと、なんだか微笑ましく感じた。
「だから明日は、ちょっと遅くなるかも...」
「分かった。なら明日は、私がご飯も作って待ってる」
「いいの?」
「たまにはやらせて?」
弥生があまりにも綺麗な笑顔で言うものだから、私は首を縦にふった。
(病院、早く終わらないかな...)
翌日、待合室でそんなことを考えていた。
脳神経外科...正確にいうと頭痛外来もやっている医師は、月に二回しかこの病院にはやってこない。
けれど、早く終わらないかなんて考えたことはなかった。
「血圧測りますね」
調子は、そんなによくない。
よくないけれど、弥生のところに行きたい。
「葉月さん、どうぞ。...体の具合はどう?」
「頭痛が酷くて、寝こむこともあって...今日も少し痛むんです」
「そっか...ちょっと注射しとこうか」
「はい、お願いします」
私は迷わずそう答える。
いつもだと断ることが多いのだけれど、今はどうしても弥生のところに行きたいから。
(頭痛が治まるなら、これくらい我慢する)
ここの医師はすごく上手で、看護師さんも注射が下手な人はほとんどいない。
「はい、終わり。薬はいつもの出しておくね。お大事に」
約束の時間になんとか間に合いそうでほっとした。
いつもだともっと時間がかかって順番がまわってこなかったりするのだけれど、今日はすんなりと終わった。
(次はまた二ヶ月後か...)
駅に着くのは七時前。
本当なら何か食べておくところなのだけれど、そうはしたくなかった。
折角弥生が作ってきてくれると言っていたのに、それを壊すようなことはしたくなかった。
...列車が遅く感じたのは、これが初めてだったかもしれない。
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