バッドエンド

黒蝶

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「神子様、失礼いたします」
「何かありましたか?」
「……密儀をお願いします」
「密儀って、」
外から鍵をかけられる音がした。
(まさか本当に存在するなんて……)
半日部屋に籠もって、外と一切干渉しない。
それによって強い加護を持つと云われている。
……その間は飲食さえも許されず、何か物を口にすれば災いが降りかかると書いてあった。
「説明が足りません。それだけでは何も、」
「声を出すんじゃない!おまえの力が強まれば、もっと金が手に入るんだ!黙っていろ。飲み食いしなくても死にはしないだろう?」
「あなた、そんな言い方は……。暁美、心配しなくてもすぐ終わるからね」
私の父親とは化け物だ。
お金さえ手に入れば、娘が死のうとどうでもいい。
母親は父親に従順だ。
巫女も誰もいないなら、外に出るのも無理だろう。
(夕方まで誰も来ないの?)
──やっぱり私を神子としてしか見てないじゃないか。


××××××××××××××××××××××××××


「そろそろつくはずなんですけど……」
ルナを連れて山の最深部に到達した。
そろそろ決着をつけないと大変なことになる。
(泡沫の呪い……どんな人なんでしょうか?)
【誰?】
いつも相手をしてきた人たちとは呪いの淀みが違う。
「あなたが泡沫さんですか?」
【そう呼ばれているようね】
「あなたのそれ、喰べてもいいですか?僕の陰が欲しがっているんです」
【あ、あは、あははは!】
怒られるのかと思ったら、いきなり狂ったような嗤い声をあげた。
【あなたが今代の御子なのね?】
「そうですけど……」
【藤は元気?】
「どうしておばあさんのことを知っているんですか?」
泡沫さんは一瞬真顔になって、暴走寸前の呪いを抑えこみながら言った。
【私は元・御子。今のあなたと同じように、封じられた呪いを祓うよう命じられてここに来たの。
私が頑張れば終わると思ったのに、やっぱり終わらなかったのね。……藤だけ生き残って私は、】
「おばあさんは……藤さんは亡くなりました」
泡沫さんは驚いたようにこっちを見る。
【嘘よ】
「嘘ではありません。僕はあなたを救いたくてここまで来たんです。
……おばあさんが遺してくれたノートを沢山読んで、勉強してきました」
体が重い。だけど、ここで倒れたらこの人は解放されないままだ。
(これが、僕が決めた命の使い方)
【あなたはあれをやるつもりなの?私と藤ができなかったあれを……】
「はい。もう今代の神子には会ったので、あとは僕がその呪いを喰らい尽くすだけです」
【……本当にいいの?失敗したら、あなたは……】
不安そうにしている泡沫さんに伝えた。
「大丈夫です。だって僕は──」
僕はある事実を伝える。
泡沫さんはそれを聞いてまた嗤った。
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