紅の剣士

雨宮結城

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Part6

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サオリとサキが、闇式の剣士組と戦おうとしていた時、ミヤの方では、マキがようやく森に着き、森をぬけ指定された場所まで向かおうとしていた。

「……!」

だが、森を歩いていると、マキは森のあちこちに、罠が仕掛けられているのを発見する。

「あれは(地雷キューブ、あと少し近づけば、爆発する。そうなれば、私の位置がバレる。…どうすれば)」

地雷キューブは、その名の通り、地雷型のキューブで、半径一メートルの中に入った生物を感知すると、爆発するキューブだ。

この世界にとっての地雷は、踏むのではなく、周囲の感知で爆発するものを指す。

マキは、その地雷キューブをどうくぐり抜け、ミヤと捕らわれているスレイヤーがいる場所まで向かうか考えていた。

「…(いや、位置がバレるって。私は、コソコソ近づいて、彼女に立ち向かうのか。違う、私は正々堂々彼女と向き合うと決めた。なら、私がとるべき行動は)」

〈ミヤの方は〉

「……!(キタ)ん?」

ミヤは、マキの魔力を感知した。だが次の瞬間、爆発と爆発音が聞こえ、違和感を感じた。

「地雷キューブか(だがなぜ、ヤツも、地雷キューブには気づいているはず)」

そう、マキは、地雷キューブがあるにも関わらず、ただミヤのいる方まで真っ直ぐ進んでいた。

地雷キューブを受けることで、罪を償えるとまでは思っていないが、マキはマキなりに、ミヤが受けてきた痛みを少しでも自身も受けようと考え、罠であるにも関わらず、真っ直ぐ進んでいた。

「(ヤツは真っ直ぐこちらへ進んでいる。何かの作戦、あるいは、頭がおかしくなったのか?)」

そして、ミヤのいる場所から、少し離れた位置にあった、最後の地雷キューブが爆発し、ミヤはマキのボロボロの姿を目で捉えた。

「ハァ、ハァ、ハァ」

「ちっ、お前、なんのつもりだ」

「なにって、真っ直ぐ歩いてきただけですよ」

「そんな事を聞いているんじゃない。荒手のバカか?罠を確認しておいて、わざとかかるなど」

「私には、コソコソと貴方に近づいて、貴方と向き合うのは、違うと思ったので」

「だから、わざと地雷キューブを受けたのか」

「ええ」

「…なめられたものだ、そんな傷だらけのボロボロの状態で、私と戦うとはな」

ミヤは、忍びが武器として使う、クナイを出した。

「そんな状態で、私に勝つつもりか」

「クナイ、それが貴方の武器ですか」

「あぁ、貴様らが使う剣とは違うぞ」

「…」

マキも、鞘から刀を抜いた。

「貴様は刀か」

「ええ」

マキは、数ヶ月前までは、剣を使い戦っていたが、スレイヤーに洗脳された十年前から数ヶ月前までのその間、マキの握った剣でたくさんの命を奪ってきた。

マキは、ユキという少女と戦い敗れ、そしてスレイヤー(負の感情が支配した)もが、アスタという少年に倒され、洗脳が解けた時、マキは血の記憶でいっぱいだった剣を壊し、新しい武器として刀を選んだ。

刀を選んだ理由は、剣と同じく、普通に扱えば、相手を斬ってしまうが、峰打ちと言う相手を斬れない箇所があることから、もう罪なき人は斬らないと誓い、刀にしたのだ。

「…」

マキは、刀の向きを変えた。

「…峰打ちだと」

「…」

「貴様、殺さずに私を止めるつもりか」

「ええ、そのつもりです」

「今までたくさんの命を奪っておいて、今更なんだ、償いのつもりか」

「こんな事で償えるとは思っていません。でも、貴方を殺す事は、私にはできない」

「殺さずにこの戦いが終わると思うか?それに、今のお前に、私を止められるだけの力があるとは思えんが」

「だとしても、私は貴方を、止めてみせます」

「…なら、やってみろ!」

ミヤは、マキに全速力で向かっていき、クナイを振るった。

「っ!」

マキも、なんとかその一撃を防ぐ事に成功した。

「…んあっ!」

ミヤは、当然両手にクナイを持っていた為、右手での攻撃を防がれたので、次は左手に持っていたクナイを、マキに当てようと攻撃した。

「んっ!」

マキはその攻撃をくらわないために、刀を上手く利用し、かわしてみせた。

「…」

「それで避けたつもりか!」

クナイをかわしただけで、ミヤとマキの距離は離れていなかった。その為ミヤは、かわして隙だらけのマキの横腹に、蹴りを入れた。

「んっ!」

その攻撃は予想していなかった為、マキは蹴り飛ばされた。

「っ!んっ…」

「どうした、私を止めるんじゃなかったのか」

「んっ」

「その程度の力で、よく私と戦おうと思ったな」

「…」

「なにか言ったらどうだ。情けない」

「私、は。戦いに来た訳では、ありません。貴方と向き合いに、貴方を、止めに来ました」

「私と、向き合うだと」

「はい」

「っ、戯言は聞いていない。そんな資格が、貴様にあると、思っているのか!」

「資格は、ないかもしれません。でも私は、貴方と向き合い、貴方を、止めたいんです」

「そんな事して、お前が満足したいだけだろ」

「考え方によっては、それも考えられると思います。でも、貴方には、私が犯した罪、私が歩んでしまった、殺人者の道には、行かせたくない。犯してしまった罪は、消える事はない。そして、私が何をしても、貴方から許される事はないでしょう。でも、だとしても、私は貴方と向き合い、貴方の行ないを、止めたいんです」

「…黙って聞いていれば、私と向き合い、私を止めるだと?なら、止めたいなら、まずは、私を止めて、戦闘不能にまでしてみせろ!」

ミヤは両手にクナイを握り、マキの方へ走り、攻撃した。

「…っ!」

マキに当たったかに思えたクナイだが、マキは刀で、左右からきたクナイを止めた。

「…」

「…こんな防御で!」

ミヤは刀からクナイを離れさせ、もう一度攻撃しようと試みた。

「んーんっ!」

「!っ!」

だが、その攻撃が当たる前に、マキは峰打ちで、ミヤの両手に強く刀を振るった。

〈一方、サオリ達の方は〉

「おらっ!」

「んっ!」

サオリとサキは、闇式の剣士組に追い込まれ、背中合わせの状態になる。

「終わりだな」

「二人まとめて」

「終いだ」

「ハァ、ハァ……」

サオリとサキは、追い込まれたかの様に見えた。だが、サオリとサキは待っていた。

「いくぞー!」

敵が一箇所に集中して、集まる瞬間を。

「…」

刀を鞘に収め、構えるサオリとサキ。

「(神道流)」

「(奥義)」

「(神道!!)」

その瞬間、二人は剣士組を通り抜けた。

だが、通り抜けていたその間、二人は刀を振るい、闇式の剣士組を、峰打ちで気絶させた。

「な、なんだと…」

「ふぅ」

「やりましたね、サオリさん」

「ええ、これで全員…」

「あれ」

「?あれ、一人、足りない」

〈マキとミヤの方は〉

「っ!んっ、アーー!」

両手の骨を刀によって折られ、クナイは飛んでいき、ミヤは倒れ込んだ。

「んーんっ!んー」

「…」

「お前、あの一瞬で、私を…」

「…」

「まさか、ホントに戦闘不能にさせられるとはな」

「…」

「…なにか言ったらどうだ」

「…あの」

マキがミヤに語りかけようとした瞬間、マキは何者かの鎖で、動きを封じられてしまう。

「!うっ!」

「!鎖、これは」

「ミヤ」

「…ベータ、殿。…何故ここに」

「ソイツがマキ、紅の剣士か」

「…はい、コイツが…」

「っ!」

ミヤが説明しようとした瞬間、ベータはマキに、落ちていたクナイを、マキの心臓に向けて放った。

「!」

「何を驚いている。お前もこうしたかったのだろう?」

「んっ…」

「…ですが、なぜ隊長がここへ、計画と違います」

「計画は、二人の剣士によって失敗した」

「二人の、剣士?」

「あぁ、だが、最後にやる事は、変わっていない」

「?」

そう言うと、ベータはもう一つのクナイを、倒れ込んでいるミヤの背中に向けて放った。

「あっ…」

「!」

マキも、その光景には驚いた。

「な、なぜ」

「なぜ、決まっているだろう。俺より強い副隊長など、いてはいけなんだ!」

ベータはミヤを踏み潰した。

「ぐはっ!」

「ふふふ」

「お前、なぜ仲間である彼女を」

マキも黙っていられず、ベータに言い放った。

「んあ?貴様には関係ないだろう」

「…」

「いや、少しあるか」

「なに」

「おいミヤ、お前を殺す理由、俺の脅威となるからだが、死ぬ前に教えてやろう」

「な、なにを…」

「お前の父であるタムラを殺したのは、確かに目の前にいるコイツ、マキだが。そこを潰すよう、スレイヤーに言ったのは、俺なんだよ」

「!?」

その発言に、マキもミヤも驚いた。

「十年前、俺はお前の村に、戦士候補となる人物を探しに行った」

十年前から、数ヶ月前までのスレイヤーは、村や街を滅ぼす前、魁平隊の戦士候補となりうる人物を探す役目を、基本的にはマキだったが、最初の頃は、闇式のリーダーであるベータに任せていた。

「だがあの村は、戦士候補は一人もいなかった。それに、なんだか目障りにも感じたよ。だから俺は、スレイヤーに報告した。そして、俺の発言を聞き、マキに村を滅ぼさせたんだよ」

「…」

マキは当然、洗脳されていた時の事はほとんど記憶にない為、ベータが調査をしていた事も忘れていた。

「お、お前が」

「あぁ、殺しこそ違うが、潰すよう報告したのは、俺だ」

「っ!き、貴様ー!」

「っ!」

「ウッ!」

ミヤはなんとか立ち上がり、ベータに攻撃しようとしたが、立ち上がりきれず、ベータに殴られてしまう。

「…じゃあな」

「!」

「や、やめろー!」

そして、ベータは剣を出現させ、ミヤの腹を貫いた。

「…」

腹を剣で貫かれ、ミヤは涙を流し、命を落とした。

「あ…」

「ふん、お前が俺より弱かったら、助かっていたのにな。いや、マキ、お前が村を滅ぼしたのが、一番の原因だったな」

「…」

「ふふふ、ハーハッハッ」

「!」

マキは、鎖を斬り、自由になった所から、刀でベータの頸を斬る。

という考えが、一瞬頭をよぎった。だがマキは、サオリとサキの心の声が、脳裏に響き、冷静になった。

「(マキさん)」

「…!」

「な、なに!」

鎖を斬ったマキ。

「!」

「ぐおっ!」

そしてマキは、峰打ちでベータを気絶させた。殺す事は確かにできたが、それでは過去の自分となにも変わっていない。

マキは、サオリとサキの心の声のお陰で冷静になり、ベータを魁平隊で裁くと決めた。

そして、ベータを気絶させたマキは、ボロボロの家の中にいた、スレイヤーを見つけ、そこへ魁平隊をテレパシーで呼び、ベータを城まで連行させた。

「…スレイヤー様、無事で、なによりです」

「マキさん」

「…」

そこへ、サオリとサキも駆けつけた。

「サオリさん、サキさん、闇式から街を、城を守ってくださり、ホントに、ありがとうございます」

「いえ、それより、彼女は」

サオリがマキに、ミヤの事を聞く。

「…はい、私の力不足で、ベータから、助けられませんでした」

「…」

「彼女の命はもう戻らない。彼女は、ミヤさんは、私がいなければ、きっと人を救う人間に、いや、もしかするなら、戦いの場にはいない人間になっていたでしょう。助けられなかったのは、とても悔いています。ですが、私は立ち止まりません。私は、これからも生きて、ミヤさんの事もそうですが、私が奪ってしまった数多の人の命の分まで、生きて、償い続けます」

マキは、これから生きて、闇に染まった人間から民を守りつつも、闇に落ちてしまった人間を、闇から抜け出す方法を探し続け、いずれは、誰もが笑える明日を迎える為、戦い続けた。

そしていつも、マキの心の中では、ミヤの事を考え、彼女の事を思い、生き続けた。

蒼き英雄 外伝 紅の剣士 完
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