蒼き英雄

雨宮結城

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最終章 The Future

Part3

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〈回想〉

「殺されたくなかったら、さっさと引き渡せ」

「…」

カリム団長が、ダリムに為す術なく、王座を引き渡すのかと思われていた、その時。

「お父様!」

「カリム団長!」

「!ミサキ!ノネ!」

カリム団長の娘のミサキと、ミサキの親友のノネが、扉を開き、中へと入ってきた。

「あぁ?誰だお前ら」

「貴様らこそ、何者だ!」

「ミサキ、いける?」

「あぁ!」

「なんだ、出てきて早々、俺らに挑もうってか」

ダリムの配下である魔物たちが、ミサキとノネの方を向き、構える。

「…」

ミサキにノネ、そして配下の魔物たちが睨み合う。

そうしていると、一人の魔物が喋りだした。

「…弱いな」

「…なんだと」

反応するノネ。

「その程度の魔力で、我々に挑めば、無駄死にするだけだ。引っ込んでいろ」

「言わせておけば、貴様の名は」

「俺は、レイと言う者だ」

発言したレイと言う魔物は、魔物達の中で、ダリムの次に強い魔物だった。

「レイ、まずは貴様からだ。覚悟!」

「ノネ!」

ノネは一人飛び出し、レイに向かっていった。

「きたか」

「お前らは手を出すな」

レイが指示を出す。

「っ!」

「…」

「ハァーア!」

ノネは剣を、レイに強く当てる為、大振りをレイにかました。

「…遅いな」

レイはその大振りを軽々避けてみせた。

「っ!まだだ!」

ノネも負けじと、もう一度レイに向けて剣を振った。

「…」

だが、その瞬間。

「っ!ぶはっ!」

「!ノネ!」

レイは短剣を出現させ、その短剣でノネの腹を貫いた。

「っ!」

そして、ノネをミサキがいた所まで蹴り飛ばした。

「かはっ!」

「ノネ!」

「…やはり弱いな、この程度か」

「…貴様、よくもノネを!」

ノネが敗れ、ミサキもレイに挑もうとした。だが、その瞬間、ものすごい速さで、レイがミサキへと迫った。

「!」

その速さに、ミサキも対応できず、斬られると思ったが、ノネが立ち上がり、ミサキを庇った。

「!」

「ぐっ!」

「…おい、ノネ!」

「…ミサキ、お前は、お前だけは、どうか、生きて…」

ノネは、話せる最期の瞬間まで、ミサキに語りかけた。そして、ミサキの顔まで上げていた手は、ダランと落ちて、ノネは息絶えた。

「あ…」

「…邪魔が入ったか、だが」

「やめろ!」

レイがもう一度、ミサキへと攻撃を仕掛けようとした所を、カリム団長が声を出し、止めた。

その声に、レイの手は止まった。

「レイ、お前も戻れ」

「いいのか?」

「あぁ、もう充分だ」

「…分かった」

ダリムもレイに指示を出し、止めさせた。

「…それで、とめたと言う事は、そういう事で良いんだな?」

「…あぁ、玉座はくれてやる。だから、もう誰も殺すな」

「…その言葉を待ってたぜ」

「……」

ダリムがカリム団長のいる玉座へと移動しようとした時、ノネの剣を持ったミサキが、無言でレイの元へ、全力の速さで向かい、殺そうとした。

「ん?」

「…っ!」

「ふっ!」

だがその攻撃も、レイに簡単に止められる。身体をレイに蹴られたミサキは、地面に倒れる。

「ウッ…」

「…」

レイもミサキの元へ向かうが。

「やめろ!ミサキに手を出すな!」

「手を出してきたのは、コイツだぞ」

「レイ、やめとけ、何もするな」

「だがダリム、コイツの眼は殺意の塊だぞ」

「なあに、眠らせとけ」

「分かった」

「っ、あ…」

レイは、ミサキに睡眠魔法をかけ、ミサキを眠らせた。

「…これで、玉座は俺様のものか」

〈現在。それらをアスタとユキに話したミサキ〉

「…」

「ミサキちゃん」

「これが、父上が玉座を奪われた日の全てだ」

「…ミサキちゃん、だいじょう、ぶじゃないよね」

「私は大丈夫だ」

「…こういう時は、無理することはないんだよ、ミサキちゃん」

「ぐっ、すまん、ユキさん、私は、涙脆くてな」

ミサキはあの出来事を話している内に、思い出して、涙を流していた。

そんなミサキを、ユキは抱きしめる

「…(親友…)」

アスタも、ミサキからノネという親友の事を聞き、フェイの事を思い出す。

アスタの場合、ユキという救いの人がいたが、ミサキの場合は、その人がいない。

そんなミサキに、何か出来ることがないかと、アスタは考える。

「…ミサキさん」

「…」

アスタの方を見るミサキ。

「ノネさんの事、とても残念に思う。親友を失った気持ちは、とても重く辛い。でも、だからこそ、辛い時は、俺やユキに言ってくれ。いつでも力になる。俺とユキは、ミサキさん、貴方の支えになる」

「うん、ボクも、貴方を支える」

「!…ありがとう、アスタさん、ユキさん」

「…俺は先に戻ってるよ。あと、ミサキさん、俺も、同じだから…だから、何かあったら頼ってくれ」

そう言い残し、アスタは一人森を降りた。

「…(同じ…)ユキさん」

「ん?」

「もしかして、アスタさんも」

「…うん、アスタも、ミサキさんと同じように、親友を、殺されてる」

「…アスタさんも、なのに。どうやって、アスタさんは乗り越えたのですか?」

「…きっと、アスタはまだ、完全には乗り越えていないと思う」

「え?」

「顔には出さないけど、きっといつも、親友のフェイ君の事だったり、アスタが救えなかった人の事を考えてる。でも、それでもアスタは、前に進む為に、一歩ずつ、確実に前には進めている。だからミサキさん、貴方も、きっと進めると思う。キツくなったら、いつでも言ってね。その時は、ボクやアスタが、背中を押すから」

「…はい。ありがとう、ユキさん」

「…じゃあ、ボク達も戻ろっか」

「はい」

話し終えたユキとミサキも、森を下り、村へと戻った。

だが、戻っている最中、ユキとミサキの二人は、道の真ん中にいたアスタを発見する。

「ん?(アスタ?)」

「アスタさん」

「?二人共」

「アスタ、どうしたの?」

「二人共、感じないか」

「え?」

「なにか、得体のしれない魔力の感じを」

「…!なに、この魔力」

「!?この魔力は」

「ミサキちゃん、分かるの?」

「はい、でもどうして」

「この魔力、村に向かってる」

「!?サムさん。っ!」

「あ、ミサキさん」

ミサキは一人、サムや他の仲間が気になり、急いで森を下り、村へと急いだ。

〈その頃、村では〉

「なっ!」

「なんでアイツらが」

「へえ、ここにいたのか。騎士の連中は」

「何の用だ」

「なあに、久々にお前らの面を拝ませてもらおうと思っただけだ」

村に、ダリムはいなかったが、レイを含めた配下の魔物たちが来ていた。

「お前らか?」

「ん」

「最近俺らの事を嗅ぎ回っていた奴を送り込んだのは」

「!?(あれは、鑑定眼のカンタ)」

「す、すみません」

「貴様ら、カンタを離せ!」

「ほらよ」

一人の魔物は、すんなりとカンタを離した。

「っ!カンタ、大丈夫か?」

「はい、なんとか」

傷だらけになりながらも、なんとか意識はあったカンタ。

「それより、この村にはえらい女がいるな」

「何する気だ」

「ダリム様へとみやげものとして、女を何人か頂いていくか」

「やめろ!村の人達には、手を出すな」

「あぁ、たかが騎士の分際で、俺らに逆らうのか?」

「くっ」

「なら、こうしてやるよ」

「?うおっ!」

「!サム!」

一人の魔物が、サムの頭を踏みつけた。

「二度と逆らえないよう、見せしめに死ねや」

「い、いやー」

村の人達がパニックになった。

「やめろ!」

「あぁ?」

その時、ミサキが村にたどり着いた。

「お前は、あーあの時の雑魚か」

「っ、!?」

ミサキはレイを見つける。

「貴様も来ていたのか」

「貴様には用はない。この村の偵察に来たまでだ」

「サムさんを離せ。離さないなら」

「離さないなら、どうするんだ?」

「お前らを、斬る!」

「ぷっ、ハーハッハッハ。俺らを斬る、手も足も出なかったお前が、俺らにかなうとでも?」

「っ!ハァーー!」

「やめろ!ミサキ!」

「ふんっ!」

ミサキは一人の魔物の腕を、剣で斬った。

「!?アーー!俺の腕があ!」

「(よし、これなら)」

「ふん、なーんちって」

「!?ウッ!」

やられたかに見えたその魔物は、一瞬で腕を再生させ、その腕で、ミサキの頸を掴み、地面に強く当てた。

「っ!かはっ」

「ふん、お前みたいな雑魚は、大人しく見てりゃあいんだよ」

「(っ!私は、ここまで、弱いのか)」

悔しさのあまり、涙を流すミサキ。

「(ノネ!)」

「ふん」

だがそんな時、一人の少年が現れた。

「やめろ」

「ん、あぁ?」

「!?アスタさん、ユキさん」

「なんだお前ら」

「その手を離せ」

ミサキの頸を締めている魔物に近づくアスタ。

「離さなかったら?」

「お前をぶっ飛ばす」

「ふん、やれるもんなら、やってみ…」

その魔物が、最後まで喋ろうとしていたその時、アスタは一瞬でその魔物の横に行き、その魔物を蹴り飛ばした。

「うっ、ぶはー!」

「!?な、なんだ…」

「フッ!」

その二人の魔物が簡単に吹き飛ばされ、レイを除いては、他の魔物は驚いていた。

「大丈夫か、サムさん、ミサキさん」

「ありがとう、アスタさん」

「ありがとう、アスタ、さん」

「…」

「貴様、調子にのるなー!」

四人の魔物がいた中、アスタは二人をぶっ飛ばし、レイではないもう一人が、アスタに攻撃を仕掛けようと、剣をアスタに振り下ろした瞬間。

「んーんっ!な、なに」

その攻撃を、ユキが片手で止めて見せた。

「ほお、中々やるやつが、この村にいたとはな」

「今日は大人しく、ダリムの所へ帰れ。戦うなら、また次の機会に戦ってやる」

「ふん、口は達者だな。っ!」

レイは短剣を召喚し、それをアスタに向けて放った。

「…」

その放った短剣を、アスタは片手で簡単に受け止めた。

「ほお、今のが見えたか」

「ここでの戦いは皆を巻き込む、近い内に城に行って、ダリムも、その下につくものも、全員ぶっ飛ばしてやる。だから今は、大人しく帰れ」

「…」

「おい、レイ、この娘だけは殺させろ、負けっぱなしじゃ」

「引き上げるぞ」

「おいレイ!」

「コイツらは強い、今挑んでもコチラが負けるだろう。だから、今日の所は引き上げるぞ」

「んーん、ふんっ」

レイの指示により、魔物たちは瞬間移動で、城へと帰って行った。

「…はぁ、ありがとうございます。アスタさん、ユキさん。お陰で助かりました」

「間に合って良かった。そっちは大丈夫か?」

「はい、私達はなんとか」

「そうか、ん?」

「ありがとう、アスタさん、ユキさん。やっぱりお二人は強いですね。私は、手も足も出ませんでした。悔しいです」

「ミサキ」

「ミサキさん」

サムとアスタが心配し、声をかける。

「…ミサキちゃん」

「ユキさん」

「ミサキちゃんは強い。弱くなんてないよ。だって、あの魔物達に、勇敢に挑んだんだもん。勇敢に挑むのは、誰でもできるような事じゃない。だから、その気持ちは大事にして。それに強さって、特訓していけば、いずれは皆強くなれる。だからミサキちゃんは、まだまだ伸び代がある。ダリムたちの事は、ボクとアスタに任せて」

「はい、どうかお願いします」

「うん」

「…サムさん、もしかしてその人は」

「あぁ、ダリムらの鑑定を依頼してた人だよ」

「こんにちはアスタさん、僕はカンタと言います」

「カンタさん、傷は大丈夫か?」

「はい、少しは回復しました」

「そうか」

「はい、それでダリムたちの事なんですが」

「何か分かったのか?」

「はい、ダリムたちの能力は、これと言って強力な能力はありません。あるのは魔力量と強大なパワーです」

「そうか、ありがとう」

「アスタ」

「あぁ、今日は休んで、明日から、俺たちの反撃開始だ」

アスタ達は、明日ダリム達に挑む為、その日は普通に過ごし、寝た。

そして決戦の日、アスタとユキは、準備を終え、ダリムがいる城へと向かおうとした。

「アスタさん、ユキさん、どうか、お願いします」

「うん、任せてミサキちゃん」

「必ず勝って、帰ってくるよ」

「はい!」

「…じゃあユキ」

「うん」

「行くか」

アスタとユキは、ダリムの城へと向かった。
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