蒼き英雄

雨宮結城

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最終章 The Final

Part8

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アスタ達は、城から脱出し、この世界に存在する、次元を行き来できるテレポート盤に向かおうとしていた。

「…(よし、今は誰もいない)皆、ここからテレポート盤まで向かうから、ついてきてくれ」

「分かった」

「分かりました」

「よし、じゃあ」

アスタが城の扉を開けようとした時、後ろから声が聞こえた。

「ねえアスタ」

「!」

「どこに行くつもり?」

「…そう上手くはいかないか」

声の主はスレイヤーだった。

「ソウルワールドへ行ったんじゃなかったのか」

「ふっ、私がただ何もせず、のこのこと貴方の世界へ行くと思ってたかしら」

「…」

「貴方の行動を見る為に、わざと行動したフリを見せたのよ」

「…そうかよ、そんでどうする、この場で全員皆殺しか?」

「いえ、そんな事はしないわ」

「…」

「ただ」

「?」

「少し、昔話をしましょう。貴方の両親について」

「なんだって」

「あー、ソウルワールドへは、後でちゃんと行ってあげるわ、この世界とソウルワールドの時間の流れは違うのよ。だから、多少遅れても大丈夫なわけ」

「俺の両親を、知っているのか」

「ええ」

「…」

スレイヤーは、アスタの両親について話し始めた。

「まず、貴方は、貴方で言う所の、リアルワールドの人間ではないわ」

「!?…やっぱり、そうなのか」

「アスタ、そうなのか」

ヒナがアスタに聞く。

「そうみたいだな、実を言えば、最近そう考えていた」

「あら、思ったより驚かないわね」

「…そりゃあ、ちょうどそう考えていたんでな」

「ふーん、そう」

「それで、俺の両親は、どこにいるんだ」

「…」

「どうした」

「貴方の両親はねえ」

「…」

「もういないわよ」

「?どういう事だ」

「もう死んでるのよ、貴方の両親は」

「!?」

「更に言うなら、殺したのは」

「…」

「貴方よ、アスタ」

「なっ!?」

「覚えていないのね。まあ、記憶を封じたのだし、無理もないけどね」

「記憶を、封じた?」

「ええ、そうね、経緯を話す必要があるわね。私は、この次元を含め、三つの次元を支配下に置いてるわ。もちろん、この三つの他にも、次元はたくさんあるけどね。その中の一つであるこの世界、この世界を私は、言葉の通り、全てを支配している。新たな生命の誕生や街の発展、犯罪の数など、全てが私の思うままに成りなっている」

「何もかもが、お前の手のひらの上って訳か」

「ええ、その通りよ。そして、この世界を管理する中で、私は一つの組織を創ったわ、組織の名は魁平隊。この魁平隊には、二つの顔がある。一つは街や村の者達が知っている通りの、正義の組織、でも裏の顔は、私が直々に指示する暗殺部隊。その中では戦士となり得るに相応しい人材を、どちらの組織に入れるにせよ、私は能力による眼で探していた。その中で、貴方を見つけたのよ、アスタ」

「…」

「その時の貴方は生まれて二年目、だったかしらね。生まれながらにして覚醒の力を持っていた事に私は驚いたわ。何せ、私には覚醒の力がないのだから。そして、ある出来事が起きた」

「ある出来事…」

「それは、貴方の中の覚醒の力が暴走し、村ごと消してしまった事よ」

「!?」

「そう、貴方の両親は、貴方の覚醒の力の暴走によって死んだのよ」

「!ハァ、ハァ、ハァ」

アスタのホントの両親を殺したのが、アスタ自身だと知り、胸が痛く、苦しくなった。

「そして、ただ一人として生き残った貴方を、私の城へと招き入れ、貴方を戦士に育てる為、私の剣術を、貴方に叩き込んだわ。最終的には、私の中に取り込む為にね。でも、剣術は覚えても、それを生かす場が無ければ意味がない、そう考えた私は、貴方の記憶を封じ、地球という次元に貴方を送りこんだ。多少は怪しまれぬ様、宮村という夫妻がいる家に行き、二人の記憶を操作し、貴方を地球で生んだという事にした」

「!?宮村さんの記憶も操作していたのか」

「ええ。そして何故、私が地球に送ったのか。それは、私の能力である未来予知で、ゲータがソウルワールドという世界を創り、そこで戦う貴方の姿が見えたからよ。だから私は、ゲータに貴方をこちらの世界へ連れてくるよう命じた。まあ、ゲータが貴方を殺し、私に復讐する可能性もあった訳だけど、見事貴方は、私の予想を超え、ゲータを打ち破り、その後もソウルワールドやゲームの世界で生き抜き、貴方は勝って見せた。流石私が鍛えた戦士であり、私の弟子ね」

「!?ゲームの時もお前が関わっていたのか」

「ええ、マキに命じて、従業員の一人に成りすまし、貴方の成長を期待し、あの世界に不具合を生じさせた」

「…」

「(ふっ、だいぶ心にきたようね、でも)絶望するにはまだ早いわよ」

「なに」

「フェイ」

「はい」

「!?」

なんとフェイが、スレイヤーの一声でスレイヤーの元へと行った。

「フェイ?」

「状況が飲み込めていないようね。フェイはね、私の部下なのよ」

「お前、フェイに何をした!」

「ふっ、フェイがソウルワールドで死んだ時、フェイはリアルワールドで目覚めたわ。そして、ゲータやゲータの部下に見つかる前に、私が能力でこちらの世界に呼び寄せたのよ。ついでに言うとね、フェイを殺したあのモンスター、あのケイルと言う男、あの男をゲータの元へ送り、イナイというプログラムを作る様指示したのも、私よ」

「!?お前がイナイさんを…」

「ええ、そして、こちらの世界に呼んだフェイを、貴方やユキ達の記憶を封じ、貴方を敵とするように、意識を操作したわ」

「なんで、そんな事を…」

「だって、その方が面白いじゃない。それに、貴方とフェイは、ソウルワールドで戦っていたみたいだし、この場での戦いは、その延長戦よ」

「…スレイヤー、お前は、一人上で安全にしてるみたいだがな、俺が、そこから引きづり下ろしてやるよ!」

「ふっ、やれるものならやってみなさい。フェイ、アスタを、殺しなさい」

「はい、スレイヤー様」

スレイヤーに命じられ、剣を出現させるフェイ。

「フェイ、お前と、こんな形で戦うなんてな。でも(ここで引くのは、きっと違いますよね。ユウマさん)」

「アスタ」

「ユウマさん」

アスタは、精神世界で、ユウマと話をした。

「アスタ、親友と戦うのはとても辛いと思う。だが、お前は親友を殺す為に戦うんじゃない。お前は、親友を取り戻す為に、戦うんだ」

「はい、ユウマさん」

精神世界から帰ってきたアスタ。

「…フェイ、いくぜ」

アスタも、背中にあった剣を取り、構える。

「アスタ様」

「アスタ、大丈夫か」

「あぁ、ヒナ、ミレイユ姫様。俺は、大丈夫だ」

「(ふっ、アスタとフェイの戦い、実に面白いな。でもねアスタ、貴方がそうしてる間にも、ソウルワールドへと対策はしているのよ、それに、そろそろかしらね)」

「(スレイヤー様!)」

「(きたわね、どうかしら、そろそろソウルワールドを…)」

「(そ、それが)」

「(ん?)」

「(ソウルワールドの剣士達が、こちらの世界に!)」

「(なんだと)!?」

「!」

強い剣士の魔力反応を感知したスレイヤーとマキ。

「どうしたスレイヤー、さっきとは表情が変わったな」

「アスタ、貴様、何をした」

「俺だってバカじゃない、アンタへの対策はしてるって事さ」

そう、アスタは、スレイヤーに逃げる事がバレた時、ユキに渡したキューブに合図を送っていた。

「やってくれたな」

「ふっ」

「だが、ヤツらがここまで来る頃には、貴様は親友の手によって殺されているだろうがな」

「それはどうかな」

フェイを見るアスタ。

「フェイ、こんな戦い、とっとと終わらせてやるからな」

「…」

アスタとフェイ、二人は集中し、見つめあった。

「……!」

そして、二人は互いに向かっていった。アスタとフェイ、二人の戦いが、今始まった。
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